8-4 魔王との対面
「喜んでご招待に応じますの」
アリサがやっと自分の出番とばかりにそう答える。
「ありがとうございます」
リィがそう言って短く詠唱を唱えると、リィの周りに魔法陣が描かれた。
「こちらへどうぞ。
皆さんの安全は保証いたします」
俺を先頭に4人がその魔法陣に入るのを確認し、リィは腕を一振りすると魔法陣が輝いた。
一瞬のうちに俺たちは豪華な部屋に到着した。
その部屋は豪華そうなつくりの壁や扉、そして灯りが備えられているが、こげ茶色の高級そうな机と、手前に4つの椅子、対面に3つの椅子だけが用意されていて、他には家具などの調度品が一切ない。
会議を行うというただそれだけの目的のために用意されたような部屋である。
「他の参加者は間もなく参ります。どうぞ椅子にかけてお待ち下さい」
リィはそう言うと対面の向かって右の椅子に腰掛けた。
俺たちも左からヒルダ・俺・アリサ・ライナの順に腰掛けることにした。
ところで、リィはあたりまえのように腰掛けてるけど、この場に同席するほどの魔族での地位にいたりするのか?
俺たちが腰掛けるとすぐに正面のドアが開き、1人の小柄な人影が入ってきた。
その人影は頭から真っ黒なローブを羽織り、そのローブから除いているはずの顔の部分には闇が広がっていた。
不死の王だろうかと俺は推測する。
その黒いローブの人影は黙って向かって右側の椅子に腰掛けた。
そのまましばらく待っていると再び正面のドアが開き、長身の男が現れた。
人間と言われても信じられるまったく違和感のない外見。金色の髪と青い目、白い肌で整った顔立ち。
しかし、その男の放つ魔力に俺たちは圧倒される。
魔王!
この男が魔王で間違いないであろう。
もし、この男以外に魔王がいるとなると俺たちは絶望するしかない。
そう思えるほどの圧倒的な存在が俺たちの前にあった。
その圧倒的な魔力は俺たち4人が現状どう抗っても勝つ望みがないであろうということが本能的に理解できた。
だが、かつて想像したような絶望的な差はそこには存在しない。
俺たちが成長を続ければいつか必ず勝てる日が来るであろう。
そのことを俺は確信できた。
魔王は正面の椅子の前に立ち、おもむろに低い声で話し始めた。
「お初にお目にかかる。
私が現在、魔王と呼ばれているガラムスだ。
勇者殿とその仲間の皆には、本日の我が招待に応じてもらって感謝する。
本日の話し合いがどのような結果に終わろうと、皆の安全は我が名にかけて保証させてもらう。
詳しくは、君たちには不死の王と呼ばれている彼女ののほうから、聞いてもらおう」
それだけ言うと、魔王は椅子に深く腰掛け、後はまかせたとばかりに目を閉じた。
彼女?
不死の王って女性なの?
黒いローブに包まれた不死の王が立ち上がり、俺たちに向かって一礼した。
「ご紹介に預かりましたクレオ・ナイダック・デザイストンでございます」
予想外に優しげな落ち着いた声で不死の王は話し始めたのであった。




