8-1 最果ての村
いよいよ最終章突入です。
ユイナさんの手を取り、俺たちは世界樹の門をくぐった。
そこに現れた光景は鬱蒼とした森であった。
その中にそびえ立つ、まだ若々しい世界樹。
「最果ての村は北東にこの森を抜けた先じゃ」
ユイナさんはそう言って、目的地を指差した。
「ありがとうございました」
「あとはお前たちで運命を切り開くがよい」
そう言い残すと、ユイナさんは再び世界樹の門を通ってエルフ村へ戻っていった。
俺たちは言われた方向へ森の中を進んだ。
モンスターどころか、ケモノ1匹出てこない森。
微かに鳥の声が聞こえるが、どことなく気味の悪い森である。
未知の土地で警戒していたが、特になんの問題もなく森を抜けることができた。
視界が開け、それなりに大きな街が見えた。
「ユイナさんの600年前の話から、辺鄙な村を想像していましたの」
「俺もだ。思ったより大きな街でびっくりだな」
街の入り口まで歩いていくと、ドワーフの衛兵が立っていた。
「こんにちは、ここは最果ての村であってますでしょうか?」
ドワーフの衛兵はぶっきらぼうな態度で、
「世間的にはそう呼ばれているようだな。
一応、カイエラの街っていう名前があるから覚えておけ」
「ありがとうございます。
カイエラの街ですね」
特に身分証の提示も求められず、俺たちは街に入ることができた。
中に入ると、そこは聞いていたとおりの人種のるつぼだった。
獣人っぽい人、魔族の血を引いていそうな人、それどころか世間ではモンスターに分類されているオークやゴブリンの特徴を受け継いでる人などが入り乱れている。
でも、そのことをなしにして考えると、ごく普通の街である。
来る前はずいぶん身構えていたものだが、人間中心のパーティーであることで逆差別されることもなく、普通に受け入れられている。
来るものを拒まずという昔からの伝統がそのまま引き継がれているようだ。
通貨が何を使われているかが少し不安であったが、ビレニアの通貨をそのまま使えるということで一安心した。
いろいろ聞いてみると、この街にも冒険者ギルドがあると聞いてさっそく立ち寄らせてもらった。
冒険者カードの更新をお願いすると、なんかギルドマスターの部屋まで来てくれと言われてしまった。
なんかまずいことあるのか?
しかたなく、奥の部屋に案内されていくと、背の高い見ただけでは何の種族か判断できない男性がいた。
「適当に座ってくれ。俺はここのギルドマスターでザビエルという」
「何か問題がありましたか?」
俺が心配そうに尋ねると、
「いや、ちょっと不審な点があるからまず一つだけ確認させてくれ。
数日前にイズバーン王国の西部にいたっていうわけのわからない記録になってるんだが、そこんところどうなんだ?」
あちゃー、冒険者ギルドが魔法の力で常に世界中に情報を共有しているってのは本当なのか。
「本当です」
隠してもしかたないしな。
「数日でイズバーン王国西部からここまで来たってわけか。
何か特殊な移動手段があるんだろうな」
「確かに特殊な移動手段を持ってますが、それについては秘密です」
世界樹のことはちょっと俺の口から広めるわけにはいかないだろう。
「まぁそちらのパーティーのメンバを見ると、想像できないこともないがそれはよしとしよう。
それでだ。
まずはおまえたちの功績に対する報奨金が出てるが、ちょっと現在のこのギルドで払えるだけの金額じゃない。
ここでもいいし、他のギルドでもいいから、希望するところで申請してもらえば1週間以内に用意する」
「わかりました。それについてはしばらく保留しておいても問題ありませんか?」
「問題ない。ほっておいても利息とかつかないがな。
続いてもうひとつ。
お前たちのパーティーの功績によりSランクが認められた。
先程預かった冒険者カードを更新中だから、1時間ほど待ってくれ。
俺からはそれだけだ。
お前たちから何かあるか?」
いきなり呼び出されてびびったが、問題のない内容でよかった。
「もしザビエルさんにお時間がありましたら、いろいろ聞かせてもらいたいことがあるんですが」
せっかくなので、ザビエルさんにいろいろ質問させてもらおう。
冒険者ギルドのマスターだからいろいろな情報をもっているかもしれない。




