1-1 プロローグ
はじめまして。
初投稿になります。
生暖かく見守ってください。
「やったぜ」
戦士アーガスの一撃が決まり、ダンジョンボスの姿が崩れていった。
「まだムリじゃないかと思ったけど、結構余裕だったな」
リーダーである魔術師ヘンリーの一言。
「回復とか少ししかいらなかったから、楽だったよ」
パーティーの回復役アリエルの明るい声が。
「おい、お宝もどっさりだぜ。早く回収しようぜ」
いつもクールな盗賊レムスの声もはずんでいる。
「ぜーぜーぜー」
そんな中で全力を使い果たし、命からがらの戦闘だった俺1人は立っているのもやっとの状態。
アリエルのヒールで怪我とかは治っているもののこの疲労感だけはどうしようもない。
1ヶ月前にパーティーを初めて組んだ時は俺と同じ程度の駆け出し冒険者だった皆は、めきめきと成長し、この初心者用ダンジョンのボスとかはもう余裕ありすぎだったようだ。
初心者パーティーのこのダンジョンの平均踏破日数は180日と聞いているから、こいつらの成長が異常すぎるのであって、俺が劣っているのではない……と思うんだけどなぁ。
でも、他のパーティーも俺のパーティーほどではないにせよ、順調に攻略を進めてるような話を冒険者ギルドでも聞いたし、ダンジョンの難易度が下がってるのかもしれないなぁ。
そんなこんなを考えつつもお宝の回収を終え、皆とともに街へ引き上げていく。
皆は意気揚々って感じだけど、俺の心が重いのは、疲労のせいだけではない。
俺が皆の足を引っ張ってるのは一目瞭然。
気がいい奴らだから、皆何も言わずにフォローしてくれてるんだけど、こんな感じでこれからもパーティー続けるのはムリがあるだろうなぁ。
お前が足手まといだからとか言い出せるような奴らじゃないから、機会を見つけて俺から言い出さないといけないなぁ。
荷物を預けておいた宿屋に戻り、リーダーのヘンリーの部屋でお宝の分配ということになった。
ヘンリーの方針ということで、常に分配は全員均等に。
足引っ張りまくってた俺が皆と同じだけの分配をもらうのはムチャ気がひけるのだが、それを言い出すと今以上に余分な気を使わせるだけだから、黙って受け取っておく。
「ダンジョン攻略を終えてお疲れのところ悪いが、これからの方針を話し合っておきたい」
ヘンリーが落ち着いた口調で話し始める。
「私の考えでは、この街近辺のダンジョンのレベルは大差ないから、いっそ南のガリオス山を超えて隣国へ向かってみるのはどうだろうか」
「ガリオス山といえば結構危険なモンスターが出ると聞いたが道中は大丈夫なのかな?」
アリエルの心配そうな発言の割には、表情はにこやかなままである。
「危険っていっても一般人が通行するのは推奨しないって程度だろう。護衛つきとはいえ商人たちも普通にあの道を通ってきてるはずだ」
レムスの情報には皆も信頼感を置いている。
「まぁ少々危険でも俺達なら問題にならないだろう。俺は賛成だな」
猪突猛進のアーガスが弱気な意見など吐くはずもない。
「じゃ、この方向で準備を進めてもいいかな?」
ヘンリーが皆を見回して尋ねる。
「ちょっと待ってくれ」
これがいい機会だろう。俺は手を上げて皆に考えを言うことにした。
「皆のレベルならそれも問題ないだろうけど、ちょっと俺にはそれはしんどいと思う。俺としてはもうしばらくこの街で修行したいと思うんだが、皆にそれをつきあわせるのは悪い。俺がパーティーを抜けてそれぞれ自分にあったところで励むのがお互いのためになるんじゃないかな」
「えー、そんな寂しいこと言わないでよ。少々のことならうちらがサポートできるから問題ないよ」
アリエルが嬉しいことを言ってくれるが、正直ずっとそうなのは俺も気詰まりなんだよな。
「いやそうやってムリを続けるのも、今はともかく将来的にはよくないかもしれない」
レムスは常に冷静だな。
「私もそれがいいかもしれないと考える。アーガスはどう思う?」
ヘンリーが皆の意見をまとめにはいってくれた。
「俺がいれば何も問題ない!と言いたいけど、どうせ俺はまたムチャをやるから、それに付き合わせてケガをさせるのも悪い気がするな」
意外とアーガスは自分の気性を理解しているのが感心というかなんというか。
「そっか、皆がそういうのなら、うちだけがムリ言っても悪いわね」
アリエルがちょっとさびしそうにうつむく。
「よし、お別れってことなら、ここはパーっと飲むことにしようぜ。ダンジョン攻略の祝いも兼ねて、俺のおごりで派手にいくぞ。とことん付き合ってもらうからな」
アーガスが気炎を上げている。
おごりはうれしいが、アーガスにとことん付き合うとか普通にムリだから。




