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この物語は、フィクションです。
今回の気分転換の旅行は青春18切符を利用する。JRの全線と、一部3セク路線が利用できる国内では最強の乗車券だ。
実は、7月の旅行では、JR東日本とJR北海道だけの乗り放題の切符だったため、旅の途中で残念ながら諦めたポイントが存在したのだ。
それは、身延線。
中央線で東京から長野の松本を目指す予定ではあったが、国宝の松本城よりもずっと行きたかったところ。
それが、身延だ。
ただ、身延線はJR東海の路線なので、前回の旅行の切符では利用できなかった。松本の次の日には熱海だったので、本当は身延線を利用して行きたかったのだ。
身延には、何があるというのか。
そんなものは、決まっている。聖地だ。
前回、7月の旅行も、最終日は水戸に宿泊予定で、別に切符代を払い、鹿島臨海鉄道を利用して大洗へと足を踏み入れている。ここも、聖地なのだ。
また、熱海に泊まった日も、熱海ではなく、別に切符代を払い、下田まで足を踏み入れた。ここも、聖地だった。
聖地巡礼は旅の基本だ(あくまでも個人の感想です)。
そうして、たどり着いた、3月末の身延。駅の近くのそこかしこに、聖地らしいポスターやら等身大のキャラやら……最高なのだが、4月も近いというのに、思っていたよりも寒い。
駅舎に戻り、座って一息つく。
タブレットを取り出して、ネットを開く。旅先でもWiFiでネット接続だ。ネット社会は病んでいるとおれは思うが、その闇にどっぷり浸かっている自分を否定できない。
ジャンル別月間2位だった短編『王子も楽じゃない ~婚約者の義妹が「お姉さまにいじめられて……」と言うのだが~』が1位になれたのかどうか、気になっていたので、いつものように『なったろう』を何気なく開いた。
左上に、『メッセージがありますよー』という通知があった。
「……ん? なんだ? 運営? 感想の返信じゃなくて?」
いつもなら、書き込んだ感想への返信がその作者から返ってきて、それがメッセージとして残されるのだが、この日は、返信ではなく、運営からのメッセージだった。
「まさか、垢BANの警告とかだと、笑えんのだが……」
おれは、恐る恐る、そこをタップしたのだった。




