三回目固定:終わらなかった世界
空が裂ける。
ミアの身体が、透けていく。
『三回目消失対象——ミア』
声が告げる。
僕は、震えている。
願えば、四回目へ行ける。
だが。
二回目で彼女は言った。
「やり直さないで」
三回目で彼女は言った。
「今度は、選んで」
——選ぶ。
僕は、目を閉じる。
「……願わない」
声が止まる。
『再構築、未実行』
世界が軋む。
ミアの身体が、光に溶ける。
だが、消えない。
崩壊が止まる。
空の裂け目が、ゆっくり閉じる。
沈黙。
僕とミアだけが、広場に立っている。
「……え?」
ミアが、自分の手を見る。
透けていない。
消えていない。
『三回目、固定』
声が静かに告げる。
『再構築回数、残り四』
僕は顔を上げる。
「残り……?」
『未使用分は保持』
理解が追いつかない。
七回目で確定。
だがそれは、
“七回使い切ったとき”の話。
三回目で止めれば——
まだ、余白がある。
ミアが笑う。
涙ぐみながら。
「終わったの?」
僕は、うなずく。
「終わった」
その瞬間。
広場にいたはずの人々が、いない。
店も、建物も、音も。
街の半分が、消えている。
無音。
遠くに、巨大な空白。
「……何これ」
神殿の声が、最後に響く。
『三回目固定により、世界安定率34%』
『不足分は削減で補填』
削減。
僕は理解する。
三回目で終わらせた代償。
“世界が削れた”。
ミアが震える。
「これ……私たちのせい?」
僕は答えられない。
七回目で誰か一人が消えるはずだった。
だが三回目で止めたことで、
“一人では足りなくなった”。
世界はバランスを取った。
街の三分の一を消すことで。
そのとき。
空に、薄い亀裂が走る。
まだ崩壊ではない。
だが、わずかに軋んでいる。
『観測者二名、存在継続』
『最終確定まで、猶予あり』
ミアが僕を見る。
「ねえ」
「これ、本当に終わってる?」
僕は空を見上げる。
ひびは小さい。
だが確実に、そこにある。
三回目で止めた。
それでも世界は、完全ではない。
七回を“使い切る”まで、
世界は、未完成のまま。
つまり。
これは終わりではない。
“保留”だ。
そして保留された世界は、
ゆっくり腐っていく。




