七百六十三話
「八意思兼命様、それは全てのダンジョンで三十九階層まで潜る必要があるという事でしょうか?」
「うむ、そうじゃ。制御区画に入れるのは儂だけじゃて、お主が行く必要があるのぅ」
陸軍の部隊で手分けして攻略出来れば楽だったのだが、その可能性は否定されてしまった。どうにか他の人が制御区画に入る事は出来ないだろうか。
「多分無理じゃぞ。そうじゃな・・・星を見る◯というゲームを情報無しでノーデスクリアするより難しいと言えば伝わるかのぅ」
「八意思兼命様、それって難しいを通り越して完全に無理ゲーです」
スタート地点で初期状態において絶対に倒せない敵とバカスカエンカウントするゲームをノーデスなんて、絶対に無理だろう。と言うか、思兼様は俺の前世世界を知っているのか。
「面倒ではあるが、朗報でもあるな。それならば人が三十九階層に辿り着いても制御区画には入れぬ」
「妙な変更をされて大ごとになるのも困る故、その方が良いかもしれぬな。あっ、そのシメジは妾が狙っておった物じゃ!」
「他者が入れぬようにして独占とかする者も出そうじゃからな。儂しか入れぬのは幸いじゃて。食べるのは早い者勝ちじゃ」
確かに、人に制御区画に入られて勝手な変更をされるよりはマシかもしれない。それはそうとして、料理の減りが早いな。結構あった筈なのに、もう無くなりそうだ。
「玉藻よ、よくやってくれたのぅ。よもや制御区画まで来れるとは思わなんだ」
「宇迦之御魂神様より賜った迷い家のお陰に御座います」
宇迦之御魂神様のお褒めに対して、迷い家のお陰だと返した。掛け値なしでこのスキルの功績が大きすぎる。
「確かに、ここが我らが顕現する中継地とならねばダンジョン内であろうとも顕現する事が出来ぬ。その点でも迷い家が果たす役割は大きいのぅ。じゃが、それを上手く育てたのはそなたじゃ。誇るがよい」
「素戔嗚命様・・・ありがとうございます」
お社の前に三柱が集まり、宇迦之御魂神様の宮に戻ろうとしていた。しかし、そこに父さん達が風呂敷包みを手に駆けてきた。
「偉大なる三柱の尊き方々に奏上致します。些少ではありますが、供え物を用意させていただきました。お納めいただければ幸いに御座います」
「おお、これはあの料理か。その気遣い、喜んでいただこう」
代表して口上を述べた父さんに素戔嗚命様が答え包を受け取った。宇迦之御魂神様と八意思兼命様も風呂敷包みをしっかりと抱えた。
「玉藻よ、そなたへの依頼は達せられた。他のダンジョンに潜るかはそなた次第じゃ。大義であった」
宇迦之御魂神様の言葉を残して三柱の神々は戻っていった。まだ一つのダンジョンしか攻略が終わっていないが、依頼は達成したと見做されるようだ。
元々制御区画への到達ではなく攻略を進めるのが依頼内容だったからな。制御区画への到達は良い方向で想定外だったのだろう。
「神々への土産まで用意してくれたのじゃな。疲れておるじゃろうに済まなんだ。じゃが、お陰で神々は大層お喜びであった」
皆はフル回転で材料を集め調理をし続けたのだろう。神々も戻られた事だし、ゆっくりと休んでもらいたい。




