第七百六十一話
「ここがこうなって、あっちに繋がるようじゃな。ふむ、ここはこうなると・・・」
横で繰り広げられる親子漫才を華麗にスルーして魔力反応があった場所を調べる八意思兼命様。物凄い集中力である。
「人の身でこれを作ったとは、俄には信じられん。一度膝突き合わせて話してみたいものじゃな」
と言われても、ダンジョンの製作者は疾うの昔に世界ごと滅んでしまっている。まあ、もし滅んでいなくても寿命で昇天していただろう。
「おおっ、行けそうじゃ。素戔嗚、宇迦之御魂神、儂は制御区画に行ってくる」
「待て、思兼。俺も同行するぞ」
「いや、何があるか分からぬ。もし儂が戻らなんだら他の神に応援を要請せよ。心配するな、ちゃんと階層指定が出来るよう変えてくるわ。彼奴らのような愚行はせぬよ」
何か言おうとした素戔嗚命様を無視して消える八意思兼命様。恐らくダンジョンの管理区画に移動したのだろう。
「ここは思兼を信じて待つしかありませんね」
「そうだな、我らではこれを突破出来まい。もしやれたとしても突破する前に思兼が戻って来るじゃろう」
宇迦之御魂神の呟きに素戔嗚命様が応じる。無事に設定変更出来れば良いがと気を揉んでいたら、迷い家の入り口から母さんが顔を出した。
「玉藻ちゃん、ちょっといい?」
「素戔嗚命様、宇迦之御魂神様。少々御前を失礼いたします。・・・どうしたの?」
素戔嗚命様と宇迦之御魂神様に席を外す非礼を詫びて母さんの所に行く。すると舞とアーシャ、父さんとニックも揃っていた。
「アーシャから神々が顕現なされたと聞いて、供える料理をお持ちしたのだ」
「母さんから顕現なされた時の事は聞いた。我らがお持ちしても支障ないだろうか?」
皆は神々に供える料理の皿を持ってきてくれていた。八意思兼命様が戻られるまでやる事も無いし、時間を潰すには丁度良いかもしれない。
「妾が神気を中和する故、御前に出ても影響は無いと思う。じゃが、只人が御前に伺候する許しは得ておいた方が良いな」
ニックはロシア帝国皇帝なので只人とは言えないかもしれないが、それは人が定めた人の世の理でしかない。
日本の天皇陛下のように日本の神の子孫というのなら話は別だろう。しかし、俺はロシア皇帝家が神の末裔かどうかを知らないし、例え末裔だったとしても異なる宗教の神だろうからなぁ。
取り敢えず迷い家から出て素戔嗚命様と宇迦之御魂神様にお伺いを立てる。許しが出なければ俺がお皿をピストン輸送すれぱ良い。
「素戔嗚命様、宇迦之御魂神様。妾の家族とロシア帝国皇帝親子が御前に料理を供したいと申しております」
「そなたの家族と、そなたが懇意にしておる親子じゃな。妾は構わぬぞ」
「おう、あの天ぷらを作りし者達か。あれは見事な出来であった。あのような料理を食せるのなら拒む理由は無いな」
この瞬間、日本神話の神々の御前にロシア皇帝の一族が伺候する事が決定した。これ、史上初の快挙なのでは?




