第七百五十六話
「アーシャよ、渦に入ってもモンスターに遭遇しないと言うのじゃな。何故にそう思ったのじゃ?」
「えっ、あれ?何ででしょう。ふとそう思って・・・」
転移しても大丈夫。そう発言したアーシャ自身も何故そう発言したのか理解していないようだ。これは確かめる必要があるか。
「舞、しっかり慣性制御を頼むぞえ」
念の為舞に防御を頼み渦に入る。しかしアーシャが言った通り、三十九階層に出てもモンスターの影は見えなかった。
三十九階層も三十八階層と同じで迷宮ステージだった。地形はランダム作成なので、二連続で同じ地形になる事もままある。
「アーシャ、この階層の地図を頼むのじゃ」
「・・・この一本道の先に大きな部屋があります。この階層はそれだけみたい」
ここはシンプルな作りのようだ。攻略が楽になるので助かるな。ついでにどんなモンスターが居るのかも見てもらおう。
「モンスターはどのような物がおるかのぅ」
「モンスター・・・あれ、見えません」
アーシャの千里眼で見えないとなると、光学迷彩で隠れているかモグラのように地中に居て近付いたら出てくるか。どちらなのかは明日確認しよう。
「ありがとうアーシャ。進むのは明日にして今日は戻るとしようぞ。検証したい事もあるでな」
三十九階層の攻略は明日に回して今日は迷い家に戻る。夕食にブリのお刺身とスズキの奉書焼きを堪能して検証を始める。
「舞、アーシャとじゃんけんをするのじゃ」
「じゃんけん?うん、良いよ。じゃあ、じゃんけんポン!」
舞はグーを出し、アーシャはパーを出した。負けた舞は悔しそうだが、これは必然だろう。次に父さんとやってもらい、母さんやニックにも挑戦してもらう。
結果はアーシャの全勝で、舞は何度か再戦したが呆気なく全敗している。俺?負けると分かっている勝負をする程酔狂ではないのだよ。
「アーシャちゃん、何でそんなに強いのよ・・・」
「何だか何を出すのか分かる気がして・・・」
じゃんけんの結果が頭に浮かんで、勝っている手を出したら全勝していたそうだ。これはもう間違いないな。
「どうやらアーシャの千里眼が強化されたようじゃな。さしずめ未来視といった所かのぅ」
まだ覚えたてなのですぐの未来しか見えないと思う。だが、それに慣れて使いこなしていけば見える時間も長くなっていくだろう。
「深い階層で戦った故、魂の器が広がりスキルが強くなったようじゃな」
「えっ、じゃあ舞も強くなってる?」
「その可能性は高いのぅ。個人差はあると思うが、そう大きな差は無かろうて」
アーシャがダンジョンに潜る時は舞も共に居た。なのでアーシャがレベルアップする程経験値を貯めたなら舞も貯まっている可能性は高い。
「どのような強化かは自分で探るしかないのぅ。明日、妾がダンジョンに行っている間に試行錯誤してみると良い」
「分かった。どんな風になっているか楽しみだなぁ」
強くなるのは良い事たけど、もう十分にチートなのだからお手柔らかにお願いします。




