第七百五十ニ話
アーシャの案内により無事に三十八階層へと降りる渦に到着した。とはいえ、現在進行形で石の槍が二方向から絶え間なく飛来して来る。
「このまま渦に入る訳にはいかんじゃろうなぁ」
モグラが追尾してきた場合、スタンピードを起こす切っ掛けになるかもしれない。三十七階層までのモンスターが地上に出たら、どれだけの被害が発生するだろうか。あの亀さんが数匹出るだけで帝都が壊滅するかもしれない。
「一旦迷い家に戻りタゲを外すぞえ」
「えっ、タゲを外すって?」
「済まぬ、こちらでは通じぬな。モンスターのターゲットになっておる状態から外れるという事じゃ」
つい前世のゲーム用語を使ってしまった。聞き流さなかった舞の質問に答えて迷い家に戻ろうとしたのだが、アーシャの発言で留まった。
「玉藻お姉さん、あそこに宝箱があります」
「ふむ、ついでに開けていくかのぅ。ありがとうなぁ」
アーシャの頭を撫でながら移動し宝箱の前に降りる。抱っこしていたアーシャを降ろして蓋を開けると、中には真っ黒な装束が入っていた。
「これって、忍者装束よね」
「また意外な物が出てきたのぅ」
優秀な盾か武器が欲しかった所だが、ソシャゲじゃあるまいしリセマラなんて出来やしない。取り敢えず迷い家に持ち帰る事にした。
夕方近くになっていたので、今日の探索はここまでにした。モグラが確実に諦めるまで待っていたら夜になってしまうからだ。
「ダンジョン産故、何かしらの特殊効果がありそうじゃが・・・」
「こ、これがニンジャの制服・・・使用して確認するのが良いのではないか?」
夕食後、宝箱から入手した忍者装束を披露した。ニックが試着を提案し、食い入るように見ている。もしかして忍者好きなのかな?
「デメリットがあるやもしれぬ。鑑定するまで着用はせぬ方が良いじゃろう」
「その時はすぐに脱げば・・・」
「脱げぬようになる効果があるやもしれぬ。ダメじゃ」
あからさまに落胆するニック。今度仕立て屋を呼んで忍者装束を作らせようか。どんな効果があるか分からないコレを渡すより良いだろう。
翌朝、俺は舞をおんぶしてダンジョンに戻る。アーシャも来たがったが、三十八階層にどんなモンスターが居るか分からないので待機してもらう。
迷い家から出たが、モグラからの攻撃は受けなかった。流石に一晩置いたので諦めたようだった。念の為舞に慣性制御フィールドを展開してもらいながら三十八階層に繋がる渦へと駆け込んだ。
「これはちと厄介じゃな」
「あれは倒していく必要がありそうね」
三十八階層は迷宮ステージになっていた。整えられた通路が三方向に続いている。そしてその通路の先にこの階層のモンスターが陣取っていた。
「大蜘蛛、それも巣を張るタイプとはのぅ」
通路を塞ぐように張られた巣の中央に、一メートル程の大きさの蜘蛛が佇んでいた。三十九階層に降りるには、あれをどうにかしないと進めそうにない。




