第七百五十話
三十七階層に進む渦へと到着した。ここで舞を迷い家に戻した。舞は一緒に来たがったが、どんなモンスターが出てくるのか分からないので多少強引に戻す。
舞の慣性制御は魔法にも通用する事が判明したが、それは攻撃魔法のみだ。八階層の迷い猫のように精神干渉系の魔法を使われた場合、跳ね除ける事が出来るかどうかは分からない。
皇居ダンジョンの三十七階層は荒野フィールドだった。見通しは良いのだが、視界に入る範囲にモンスターの影が見えない。
まだ遠くに居るので見えないのか、鷹のように高空から奇襲してくるのか。周囲を警戒しつつ適当な方向に進む。
「むっ、下からじゃとっ!」
足元に違和感を覚え、空歩で空へと退避する。見下ろすと先程まで俺が居た場所では大きな土竜が半身を出していた。
「空の次に地中からとは、ダンジョン作った者は性格悪すぎるじゃろ・・・おっと」
鷹による急降下攻撃の次に地中からの奇襲だ。これを設定した奴の意地悪さに思いを馳せていると、土竜から石の槍が飛んできた。慌てて回避しつつ高度を上げる。
槍の射程は長い上に連射が効くようで、次々と飛んでくる槍をサイドステップを多用して躱していく。すると別方向からも槍が飛んできた。
「空に居ても探知されるのか、初めのやつとリンクしたのか。どちらかは分からぬがストーンワームより厄介じゃの」
ストーンワームより体は小さいが、出現時の前兆を掴みにくいので奇襲を成功される可能性が高い。更にこの連携しての弾幕を避けるのは前世でシューティング好きだった俺でも骨が折れる。
「これは一旦リセットするべきじゃな」
空中で迷い家への入り口を開いて飛び込む。背後に石槍が迫っていたが、迷い家に入る事が出来ずに阻まれて砕けたようだ。
「あら、玉藻ちゃん早かったわね」
「三十七階層の敵が面倒でのぅ。一旦仕切り直しじゃ」
リビングに落ち着き、母さんに淹れてもらったお茶を飲む。しかし待機していた舞とアーシャが迫ってきた。
「玉藻お姉ちゃん、三十七階層のモンスターってどんなのだったの?」
「玉藻お姉さんが苦戦する程の相手だったのですか?」
三十八階層への渦を探す為にアーシャを迎えに来たと思いきや、仕切り直す為に戻ったと聞いて舞とアーシャが詰め寄る。
「半身しか見ておらぬが、恐らく大きな土竜じゃな。ほぼ前兆もなく地中から奇襲してきた上、石の槍を飛ばしてきおった」
「それだと舞の防御が間に合わないかも・・・」
「私の千里眼で探そうにも、地中では見つけにくそうです」
慣性制御フィールドも地中までは対応出来ないだろう。千里眼も移動しながら地面の中を探知し続けるのは負担が大きくなりすぎる。
「空中ならば飛んでくる槍を舞の慣性制御で防げるわ。玉藻お姉ちゃん、おんぶして!」
「それは良案じゃな。じゃが、三十八階層への渦は自力で探す必要がありそうじゃな」
流石に舞とアーシャの二人を同時におんぶは出来ない。アーシャをおんぶして石の槍を回避し続けるという手もあるが、位置が目まぐるしく変わってしまうので千里眼での探知に影響しそうだからなぁ。




