第七百四十九話
「よく見ると可愛い顔してるのね」
「愛嬌がありますわ」
でしょうね。目に涙を溜めて懇願するように見つめられれば可愛いと思うだろう。
「翼も綺麗!」
「・・・この子、連れて帰ったらダメ?」
アーシャ、綺麗で可愛くてもこの子はモンスターだから。高空から高速鉄道より速い速度で急降下しつつ風魔法を放ち、鋭いクチバシと爪で攻撃してすぐ離脱する難敵だからね!
「もう可哀想だからトドメを刺してあげるのじゃ」
「ええっ、もう少し見たい」
俺達の目の前には、舞の慣性制御フィールドに囚われて何も出来ない隼さんが居る。初めはジタバタと逃れようとしていたが、全て無駄だと悟り抵抗しなくなっていた。
「これ、前人未到の深い階層に出てくるモンスターじゃからな?戦闘特化ではないとはいえ探索者の上澄みである妾に手傷を負わせる手練じゃからな?」
「はっ、そうだった。この子は玉藻お姉ちゃんの玉の肌に傷をつけた犯人だったわ!」
キューブの赤を合わせて火魔法を放つ舞。隼は炎に包まれ魔石に変化した。それを拾ってアーシャに渡す。アーシャは迷い家に戻すので、ついでに持って帰ってもらおう。
「アーシャ、これを持って迷い家に戻るのじゃ」
「玉藻お姉さん、舞ちゃんも居るし一緒に居たらダメですか?」
「隼を見落とした場合、舞の慣性制御が間に合わぬ可能性もあるでの。アーシャの千里眼で監視すれば見落とす可能性は低いじゃろうが、歩きながらは使えまい?」
アーシャの千里眼は便利なスキルだが、視界が変わってしまうので移動しながら使えないという弱点がある。
流石にダンジョンの奥深くで我儘を言う程聞き分けがない子ではないので、アーシャは大人しく迷い家に戻ってくれた。
「ダンジョンでロシア帝国皇女殿下を負傷させる訳にはいかんからのぅ」
「偉いと色々と大変よねぇ」
舞と雑談しつつ、アーシャが示してくれた次の階層への渦の方へと歩く。頭上への警戒をしながらなので歩く速度はそんなに速くない。
「玉藻お姉ちゃん、夫婦鶏の時みたいに空を飛んで戦うのはダメだったの?」
「あれは空を飛んでいるのではなく歩いておるのじゃが・・・隼は素早いのでな。追いつくのも難しく神炎も追尾しきれんのじゃ」
迎撃は可能だが、こちらから追撃する事は出来ないのだ。もし他の探索者もここに辿り着いたとして、対抗する術があるのだろうか。
「この分ではダンジョン攻略の度に舞に同行を頼む事になりそうじゃのぅ」
「舞は玉藻お姉ちゃんに頼られて嬉しいよ。だから一緒に来ようね!」
社交辞令ではなく本当に嬉しそうな舞。浮かれながらもしっかりと急降下してきた隼と放たれた風魔法を止めているのだから頼もしい。
「玉藻お姉ちゃんに舞とアーシャちゃんが居れば、ダンジョンなんてすぐに攻略できちゃうよ!」
「冗談ではなく本当に出来そうなのが恐いのぅ」
防御チートな舞と探知チートなアーシャ。二人を俺に出会わせたのは宇迦之御魂神様の手引きだったりしないよね?




