第七百三十九話
呪いをかけた術師は意外とあっさり判明した。関中佐はスキルをリストアップすると同時に各地の病院に問い合わせをしていたのだった。
その内容は、急な発症で搬送され原因不明の患者は居ないか?という物だった。その条件に合致する患者は数人いたそうだが、その中におまじないというスキル持ちが含まれていたのだ。
「こいつで間違いないでしょうな」
「症状が渋沢子爵令嬢と同じですからね。令嬢より重症なのは呪いの反動だからでしょうか」
そいつの身辺調査をしたところ、過去にとある会社から多額のお金が入金されていた。
「この会社、某侯爵家と繋がりがある会社です」
「それ、もう確定ですね」
その侯爵家は黒田家と対立している家だそうだ。直接黒田家を攻撃したらバレるから寄り子の渋沢子爵家をターゲットにしたのだろう。
「しかし、まだあんなに幼い令嬢を狙わんでも良いでしょうに」
「子爵本人を狙うより効果があると思ったのでしょう。確かに効果的ですが、バレた際のヘイトも大きくなりますね」
関中佐の言う通り、直接関係ない俺も依頼者と思われる侯爵家に敵対心を抱いている。どんなに効果的でも、幼子を巻き込んではいけない。
その後裏取りを行いほぼ確定となった為、一連の調査内容を伝える為に黒田侯爵と渋沢子爵に宮内省まで出向いてもらった。
会合の場所を宮内省にしたのは、相手の侯爵家にこちらの動きを悟られない為と侍従長に今回のあらましを伝える許しを得る為だ。
呪術を皇族に使われる可能性がある以上、皇族の近くに侍る者と情報を共有した方が良い。しかし当事者に無断で共有するのは憚られる。
という訳で、宮内省の一室に俺と関中佐、黒田侯爵と渋沢子爵が侍従長さんを交えて話し合いを行う事となった。
まずは二人に許可をとり事の顛末を侍従長さんに話した。始めは怪訝な顔をしていた侍従長さんだが、原因が呪いだったと聞いて顔色が変わった。
「そ、そんなの滝本医師と玉藻様が居なければ対処のしようがないではありませんか!」
「だからその情報を伝えているのです。無いとは思いたいですが、今上陛下や皇族の方々が呪いの対象となった時、この件を知っていれば対処が変わりますから」
狼狽する侍従長さん。それを即座に診断出来るのが現状では父さんしか居ないので、皇族専属にとお誘いが再燃するかもしれない。
「術師と依頼者への報復は我らが。と言っても術師の方はその必要が無いかもしれませんな」
「黒田侯爵、今後呪術に手を出す者が出ぬよう徹底的に頼む。多少の齟齬は宮内省が調整する」
侯爵と子爵の報復は宮内省のお墨付きとなった。幼女を苦しめるような輩は徹底的に潰してほしい。
粗方話し合うべき事柄は話し合い、そろそろ終わろうかという時。立ち入り禁止となっていた筈のこの部屋に乱入者が現れた。
「神使殿、また迷い家で休ませてくれ!公務続きでストレスがっ!」
「ああ、最近鈴代の件や呪いの件でご無沙汰でしたからねぇ・・・」
今上陛下の頼みを断る事など出来やしない。玉藻となった俺は迷い家を開いて今上陛下を招くのだった。迷い家を体験して腰抜かしてた侯爵様と子爵様が居たのは見なかった事にします。




