第七百三十一話
「お父さん、相談したい事があるのだけど・・・」
記者会見から数日後、夕食の席で舞が小さい声で父さんに相談事を持ちかけた。舞が相談事をするなんて珍しい。父さんだけでなく俺と母さんも舞の相談事を聞くことにした。
「お父さんなら注射しなくても病気の原因が分かるわよね?」
「ああ、それが父さんのスキルだからね」
全ての検査をすっ飛ばしいかなる病気も見抜いてしまう、脅威のぶっ壊れスキル。そんなスキルを持ちながらも普通の町医者として暮らしてきた父さんを俺は誇りに思っている。
「クラスメートの子に聞いたのだけど、とある子爵家の幼い子が原因不明の難病らしいの」
「それは心配だな。陸軍を通して依頼してくれればすぐにでも診察に行くのだが」
幼い子供が原因不明の病気で苦しんでるなんて、優しい父さんには耐えられないだろう。勿論俺もだ。何とか治してあげたい。
「だけど、その子はお医者さんを嫌がってて病院に連れていけないそうなの。だから検査をしないお父さんなら何とかなるかなって」
「今は陸軍の軍医だから勝手に動けないからなぁ。陸軍に依頼してもらえれば・・・」
町医者の時ならば父さんの判断だけで動けたのだが、今は陸軍の命令に従う義務がある。勝手に診察に出向く事は出来ない。正式に陸軍に依頼してもらい、陸軍が受けてくれれば良いのだが。
「舞、その子の情報を集めてくれないか。俺も関中佐に聞いてみる」
知ってしまったからにはそのまま放置するなんて事は出来ない。困っている人達全員を救うなんて事は出来ると思っていないが、せめてこの手で救う事が出来る子供くらいは救いたい。
翌日、情報部に行き関中佐と先輩方に話を振ると情報は簡単に集まった。表立っては広まっていないが、知っている者は知っている話らしかった。
「何だか、情報通の間では有名な話らしいよ。医師会が必死に隠蔽しているそうだ」
情報部から帰り、両親と舞に仕入れてきた話を聞かせる。当事者は渋沢家という子爵家で、患者はそこの一人娘だそう。
ある日渋沢家の一人娘が高熱を出して倒れてしまい、救急車で搬送された。搬送先の病院で検査を受けるも原因が分からず、熱も下がったので一先ず退院したそうだ。
その後熱が上がったり下がったりを繰り返すので、医師会に紹介された腕利きの医師がいる病院で検査を受ける事に。
そこで医師の不手際があり、怒った渋沢子爵は医師会に他の医師を紹介させ転院。そこでも医師がやらかしたらしく、それ以降子爵令嬢が検査を拒み自宅療養して現在に至る。
「自分達の紹介した医師が二度連続でやらかしたので、医師会が話を広めないよう各方面に圧力をかけているらしいよ」
「あの医師会は本当にろくな事をしないな・・・」
父さんが医師会を退会して軍医になったのは本当に正解だったのかもしれない。被害を受けた子爵令嬢、何とか助けてあげたいな。
読者の皆様の応援で何とか二年間毎日更新出来ました。来年も宜しくお願いいたします。




