第七百三十話
午後の記者会見は迎賓館に戻って視聴した。その内容は酷かった、そのひと言に尽きる。あの場に居なくて良かったと関中佐に感謝した程だ。
会見に出たのは関中佐と埼玉県警本部長、大宮基地基地司令の三人。現場に居たのは本部長のみなので、発言は本部長がメインとなった。
まずは事件のあらましから。別件で商業施設に警官隊が詰めていた事、隣接する研究所に改造人間が出現した事、警官隊では手に負えず、陸軍大宮基地に出動要請をかけた事が本部長より語られた。
次いで大宮基地司令より現着すると偶々俺が居合わせ、大宮基地の部隊と合同で作戦にあたった事、説得により投降させた事が語られた。
事件の説明が終わり質問を受け付けたのだが、まず聞かれたのが改造人間の身元だった。これは本部長が答えられないと回答した。
対象が投降したのなら聞き出せたのだろうと追及されたが、本人の言葉だけで確認が取れていないという理由で公表出来ないと逃げ切った。
次に板橋の事件との関連を聞かれ、関中佐が調査中だが関連している可能性は高いと答えた。それを聞いたマスコミ連中は色めき立った。
研究所が属している会社についての質問は無かったが、それはマスコミがそれぞれで調べて報道するだろう。
俺が都合よくその場に居合わせたのは陸軍が事件に関与していたからではないか?との質問もあったが、関中佐が即座に否定していた。
実際陸軍は一連の事件に関与はしていない。ただ情報を掴んでいても何もしなかっただけなのだ。現行法においてそれを罰する規定は存在しない。
すると、では何故俺がその場に居たのか理由を説明しろと騒ぎ出した。これには本部長が商業施設にお忍びで訪れたVIPの護衛任務だったと正直に公表した。
警官隊と県警本部長の自分が現地に居たのもVIPの警護の為だったと説明。殆どの記者は納得してくれたが、県警と陸軍がグルだったのだろうと陰謀論を振り回し何度も同じ質問をしてくる記者も居た。
あれは事実を聞き取り記事にするのではなく、自分が妄想した内容を事実だと信じてそれに整合する情報だけを引き出し捏造しようとしているとしか考えられない。
その後はマスコミが望んでいる回答を引き出す為の質問が繰り返された為、会見は終了となった。番組では強引に会見を終わらせた県警と陸軍を非難していたが、世間はどう受け取るだろうか。
「うちの祖国には整備された報道機関なんて無かったから分からないが、報道というのはあれが普通なのかな?」
「どうでしょう。比較対象が欧州しか無いですが、あちらも酷い所は酷いかと」
一緒にテレビを見ていたニックが呆れていた。欧州は日本よりまともだと思うけど、パパラッチとか居るし似たり寄ったりかもしれない。
「暫くマスコミはこの事件を競って報道するでしょうね。また記者連中に追い回されそうです」
神使騒動も少し落ち着いてきたかな?と思っていた矢先にこれだ。俺の平穏はいつになったら訪れるのだろうか。
作者「平穏?そんなの訪れると思っているのか?」
優「諦めたらそこで試合終了だ・・・諦めないぞ!」




