第六十九話
食事をとり、ゆっくりと入浴してから就寝する。地上の時間で朝七時に目覚ましが鳴るようにセットして就寝した。
思ったよりも疲れが溜まっていたようで、目覚ましに起こされるまで熟睡してしまった。畑から茄子を収穫し、揚げ茄子にしてカレーにトッピングした。
外の様子を確認し、誰もいなかったので落とし亀の甲羅と魔石が入ったリュックを持って迷い家を出る。妖体化と女性体を解いて男に戻り、着せ替え人形を呼び出す。
両手に持たせた片手半剣は、見事に修復されていた。刃の部分しか無かった方もちゃんと柄が再生されている。
・・・着せ替え人形のチート度が上がってしまった。武具をわざと破損させ、修復して増殖させるという無限生産が可能だと検証されてしまった。
もっとも、この剣の材質である鋼で出来たからといって魔鉄やミスリル、アダマンタイトやオリハルコンでも同じ事が出来るかはわからない。
もしも出来るとしてもそれらの強靭な金属を折るなんていう芸当は出来ないだろうし、使っていて真っ二つに折れたなんて話も聞いた事がない。
・・・と思って今は考えないようにしよう。もしもオリハルコンやミスリルの武具を量産出来るスキルだなんて知られたら、玉藻の事がバレなくても狙われてしまう。
問題を先送りにする事として、着せ替え人形を戻すとリュックを背負い落とし亀の甲羅を持って地上を目指す。甲羅は大きい上に持ち手も無いので持ちにくく、両手で持っていく。
八階層と七階層はモンスターにも探索者にも遭遇しなかったが、六階層で青毛熊と戦っている探索者パーティーと遭遇した。
片手剣とバックラー装備が二人に槍装備が二人のパーティーで、全員が二十代後半から三十代の男性で構成されていた。
剣の二人が左右に分かれて足を中心に攻撃し、前から槍の二人が上半身を狙って突いている。槍はダメージ目的の攻撃ではなく牽制が目的のようだ。
剣持ちに攻撃しようとすると槍を突かれ防がねばならない。槍に気を取られると左右から剣持ちが足を削る。時間はかかるかもしれないが、堅実な戦法だ。
足の傷が深くなり立てなくなった青毛熊は、首を槍に刺されて絶命した。まだ動く腕での反撃を警戒し、リーチの長い槍を使った慎重な終わり方だった。
「待たせてしまったな」
「いえ、勉強させていただきました」
五階層への最短ルートを塞ぐように戦闘していたので、俺は離れた場所で見学していた。脇を通る事も出来たと言えば出来たのだが、戦況に影響を与える事は避けたかったのだ。
彼らは戦いながらそれに気づいていたようだ。俺が横を通ると青毛熊が俺に気を取られイレギュラーな行動を取る可能性を潰す為に待っていたと分かってくれている。
「それはもしかして、落とし亀の甲羅かな?」
「はい、九階層で狩ってきました。中々出なかったので苦労しましたよ」
「そうか、これはまた珍しい物を。初めて実物を見たよ」
落とし亀の甲羅を入手しようなんて酔狂な人間はほぼ居ない為、長く探索者をやっていても見たことがないなんてざららしい。
「昨日は狐の獣人が居たという話だし、珍しい事が続くものだな」
「おいおい、あれは本当かどうか分からないだろう?」
「いや、どうも複数のパーティーが目撃したらしい。確定だろうな」
どうやら玉藻の事が早くも噂になっているようだ。それも俺だと知ったら、彼らはどんな顔をするだろうか。絶対に言わないけどね。




