第六百四十六話
その後の会見はまともな質問をされて関中佐か冬馬軍曹が答えるという至極普通の展開となった。井上兵長と久川兵長不在の理由も聞かれたが、消耗が激しく療養中と回答していた。
そしてきりが良い所で会見は終了となった。ベースキャンプの管理をしていて三十四階層に潜っていない事になっている俺に対する質問はゼロであった。
「予想はしていましたが、俺が居る意味ありましたかね?」
「記者からの質問が無くても、情報部の会見に滝本中尉が居ないと後で苦情が来るのだよ」
その連中、俺をアイドルか何かと勘違いしていないか?必要が無いのに会見に出る筈無いと何故理解出来ないのか。
ともあれ、この後は情報部に戻って今後の方針に関する話し合いとなる。三人娘が続行出来るかどうかや、亀さん対策も話し合わねばならない。
「あっ、お帰りなさい。会見お疲れ様でした」
「中佐、会見に関して『何で滝本中尉はゴスロリではないのか』と苦情が来ました」
先輩が中佐不在の間の報告をするが、果てしなくどうでも良い内容だった。俺は女性になってゴスロリで会見に出なければならないなんて決まりは無いからな!
「苦情に関しては後回しだ。こちらから呼ぶまで部長室には入らぬように」
そんな下らない苦情は受け付ける必要ありません!という俺の魂の叫びは誰にも届かず、四人は部長室に入る。
関中佐は入り口に施錠すると備え付けの冷蔵庫から人数分のお茶を取り出して配る。それを受け取り応接セットに腰掛けた。
「さて、三十四階層到達は目出度いが問題も発生した。井上兵長と久川兵長の様子はどうだ?」
「二人とも落ち着いています。しかし、ダンジョン攻略を続けられるかは分かりません。私もですが迷っています」
大型トラック並みの亀に押し潰されそうになったのだ。今回は迷い家への避難が間に合ったが、次も間に合うという保証はどこにもないのだ。
「ふむ、となれば代わりのパーティーを検討する必要があるか・・・」
「中将、それは急ぐ必要はないと思います」
鈴置中将の言を否定した俺に注目が集まる。俺はお茶で口を湿らせてからその理由を語った。
「現状、あの亀を攻略する手立てがありません。無視して進むのが最善だと思いますが、岩塊の射程を考慮するとかなり厳しいかと」
「探知範囲の広さに加えて、本体の速さもあります。あれから逃げ続けるのは難しいと言わざるを得ません」
実際に岩塊と突進を食らった冬馬軍曹の話は説得力に溢れていた。この場で、いや、世界で最もあの亀の脅威を知っているのは彼女なのだ。
「代わりのパーティーと潜っても、また同じ事の繰り返しとなりかねません。その時に冬馬軍曹と同じように助かるとは限りませんから」
玉藻の空歩で避けて進むというのも一つの選択肢だが、それだと陸軍の戦力は先に進めない状態になる。将来を見据えて精神面も鍛えるか、取り敢えず玉藻単独で先に進むか。ここは大きな分岐点になりそうだ。




