第六百二十六話
「中佐・・・」
ダンジョン攻略当日、皇居外縁の特別攻略部隊が使っていた部屋に俺達は集まったのだが関中佐は三人娘から無言の追及を受けている。中佐に説明を求める冬馬軍曹だが、関中佐は目を逸らして誤魔化すばかりだった。
「軍曹、中佐にも言えぬ事があるのじゃ。察してやってはくれぬか?」
「玉藻様がそう仰るのなら・・・でも、良いのですか?」
部屋には皇帝陛下と皇女殿下が居る。本来ならばダンジョン攻略に同行して良い人物ではない事は言うまでもない。
「宮内省と陸軍の許可は出ておる。どこからも文句は出ぬ筈じゃて気にするでない」
「皇帝陛下と皇女殿下もですが、舞ちゃんとお母さんまでいらっしゃるとは思いませんでした」
そう、ここにはロマノフの二人だけでなく舞と母さんも居るのだ。当然二人とも一緒にダンジョンに潜る事になる。
「舞はアーシャちゃんと一緒だから!」
「この大所帯には食事を用意する人は必要よ」
舞はアーシャの護衛なので同行するのは当然として、母さんまで着いてきたのは料理を頼む為だった。これは母さんが言い出してくれた。
三人娘とロマノフ父娘、舞と俺。料理が出来るのは俺だけで、舞とアーシャは母さんから教わり始めたばかりで手伝いは可能というレベルだ。
皇帝陛下と皇女殿下が居るのに食事がレーションばかりという訳にはいかない。となると、ダンジョン攻略をしている玉藻が料理もする事になる。
戦闘で疲れている状態で料理までやるのでは負担が大きくなると母さんが指摘し、料理担当として同行を申し出てくれたという訳だ。
ちなみに父さんは地上で留守番である。父さんは診察の予定があったので、それをキャンセルする訳にいかなかったのだ。
「さて、今回の攻略は三十三階層に到達する事が目的だ。三十二階層からは小型カメラを装着し、攻略の様子を記録してもらう」
「中佐、玉藻様が映ってしまうと思いますがよろしいので?」
「公表する際は玉藻様が映っていない部分を選ぶ事になるから大丈夫だ」
久川兵長の質問に即答する関中佐。玉藻が同行している事は英国に開示したのだし、そろそろバラしても良いのではと俺は思っている。
「もし目標を達成出来なくても良い、無理はするな。無事に戻る事を第一に考えろ」
関中佐のありがたいお言葉の後、表向き同行しない事になるロマノフ父娘に舞と母さんは迷い家に入ってもらう。
玉藻から優に戻りダミーのリュックを背負えば準備完了だ。部屋を出てダンジョンに向かう。何度か通った道なので迷う事もない。
ダンジョンを守る衛士二人と関中佐に見送られてダンジョンに入る。突撃豚を蹴散らしながら走り、二階層に入った所で玉藻になる。
「では手筈通り今日は妾のみで走破じゃな」
「玉藻様一人に任せてしまい心苦しいのですが・・・」
「それが最も効率的じゃからな。昼には食事をとりに行く故、待機しておれ」
俺は三人娘を迷い家に入れると空歩を使って三階層への渦を目指す。入る階層指定が出来れば楽なのにと思ってしまうが、それが出来ていたら俺はこの世界に居ないんだよなぁ。




