第六百二十五話
以前感想にて指摘していただいた矛盾を変更致しました。病気療養から養子縁組による転校に修正しています。
滝本家とロマノフ家が集まった迎賓館の一室。そこに鈴置中将と関中佐が暗殺未遂事件の後処理の説明に訪れている。
「結論からお伝えしますと、あの事件は公表されない事となりました。陛下と殿下には承服し難い結果と推察致しますが、何卒ご理解を賜われればと・・・」
「企んだ者達への報復は日本帝国と大英帝国が行ってくれるのだろうな?」
「それは勿論です。両帝国の面子まで潰されたのですから、英国のみならず欧州全体が一丸となって徹底的な報復を行う予定です」
鈴置中将の要請にニックが確認をとる。ニックの性格なら報復に拘る事をしなさそうだが、流石にアーシャの暗殺未遂となれば別なのか。
事件は世間に公表はされないが、欧州各国政府には正式に通達される。そして事件の裏を徹底的に調べて関与した組織は潰すというのが日英の合意らしい。
日本は魔石を使用した機器の開発作成において世界のトップを独走している。欧州は英国を通じてそれを輸入している為、日本の怒りを買って輸入が止まると困るのは欧州なのだ。
更に、日本が盟主となっているアジア諸国は欧州に鉱石を輸出している。鉄鉱石など欧州で産出される物も存在するが、銅やニッケル、ボーキサイトなど欧州で産出しない資源はアジアからの輸入に頼っているのが現状だ。
日本の不興を買えば、そんな資源産出国が忖度して値上げや販売拒否をする可能性がある。そうなれば欧州はかなりの損害を被る事となる。
「陸軍大臣と太政官を前に、英国大使と外務大臣は文字通り地に頭を着けて懇願したそうですよ」
なんと、大使と外務大臣は前世にあった格闘漫画で使用されていた必殺技まで繰り出したらしい。無差別格闘早◯女流奥義、猛虎◯地勢・・・両者共プライドは高いだろうに、よくこの技を使う決断をしたものだ。
「我ら父娘は日本帝国の世話になっている身。その恩を返せるなら幸いだ。だが、出来れば一つ頼みを聞いてくれると嬉しいがな」
「今回の件で外務省と英国に対して作った貸しは絶大です。何なりと仰って下さい」
穏やかなやり取りの流れに乗って安請け合いした鈴置中将を関中佐が止めようとしたが遅かった。中将は白紙の小切手をニックに対して切ってしまった。
「では、次回優君がダンジョン攻略に出る際に我ら父娘を同行させてもらいたい。なに、迷い家からは出ぬ故安全に関する心配はいらぬ」
「はっ?えっ、いや、確かに玉藻様の迷い家ならば安全な事は間違いありませんが・・・」
鈴置中将にとっては予想の斜め上を行く要求だったのだろう。内容が内容だけに二つ返事で了承する事も出来ず、返答に詰まる鈴置中将。
「中将、陛下と殿下が中尉のダンジョン攻略に同行したがっていると報告を上げた筈ですが?」
「それは聞いたが、まさかここでそれを言うとは思わんだろう!」
顔を合わせて対応した関中佐と、報告を聞いただけの鈴置中将の差がくっきりと出ている。皇帝陛下に対して望みをきくと明言した以上、そう簡単に撤回は出来ないだろう。
ニックが冒頭で怒ってみせたのはこれを通す為だったのか。この勝負、ニックの勝ちで終わりそうだ。
天皇陛下「ニコライ殿がダンジョン攻略に同行?よし、余も・・・」
侍従長「お止め下さい!」




