第六百二十二話
俺と舞が身に着けているレイスの布は前回の探索で俺が取ってきた物だが、今は情報部の備品となっている。なので外して関中佐に返却した。
「舞、何で残念そうにしてるんだ?」
「あっ、これがあればアーシャちゃんとお出かけしやすいかなって思ったから」
レイスの布を身に着けたからといって、完全に意識から外れる訳では無い。装着者の印象が強いと効果は相殺され薄くなってしまう。
例えば玉藻が身に着けたとしても、特徴的な狐耳と尻尾で注目されるので少し存在感が薄くなっても注目度は然程変わらない。
アーシャも綺麗な銀髪が注目されるのでそのままでは効果が薄いだろうが、帽子やフードで隠せば注目されずに出歩けるだろう。
「となると、贅沢を言えば六枚確保したいな。関中佐、休み中にレイス乱獲に行っても良いですか?」
ニックとアーシャ、両親と舞と俺で六枚だ。俺は女性体や玉藻にならなければまだ注目されにくいし両親も顔を覚えられる程露出していないが、あれば何かと役に立つだろう。
「それは構わないが、盗難や紛失しないよう注意する事と効果を知られないよう注意する事を厳守してもらう」
効果は微妙な所もあるが、使い方次第で悪用出来るアイテムだ。管理を厳重にするのは当然だな。
「しかし、こんなアイテムが出るダンジョンの間引きを民間に委託したのは驚きですね。民間のパーティーが入手していたらまずかったのでは?」
「これに関しては情報部内だけで情報を止めていた。漏洩防止の為だったが、それが裏目に出て攻略部隊の管理部署が間引きの委託を受けてしまったんだ」
軍が間引きするにも予算がかかる。況してや、レイスの間引きとなれば貴重な魔法スキル持ちを派遣しなければならないのだ。
そんな水中村ダンジョンの間引きを民間でやりますと言われれば、布の事を知らない管理部署は予算節約の為に応じるのは自然な反応だろう。
「だから滝本中尉から氾濫の知らせを聞いて、顛末を知った時には本当に驚いたよ。その後ダンジョンの管理を情報部主導でやっているのはその為なんだ」
情報は知る人間が増えれば漏洩の危険が多くなる。かと言って、制限し過ぎても水中村ダンジョンのように支障が出る事もある。
どこまで広め、どこまで秘匿するのか。その匙加減を判断するのは難しい。その判断を任されている関中佐の心労は、俺が思っていたより重い物なのかもしれない。
「着いたようです。本職は侍従長殿と太政官殿に事の次第を報告に行きます。滝本中尉は陛下と殿下に付き添ってくれ」
ニックとアーシャは今上陛下との面談を行う事になっている。会見の為に外務省に行っていた宮内省の職員が事件を報告し、それを聞いた今上陛下が面談を希望なされたそうだ。
「中佐、舞はどうしましょう?先に戻らせますか?」
ニックとアーシャが今上陛下と面談し、俺も同行する。多分俺は控室で控える事になるだろうけど、問題はその間舞がどうするかだ。
舞は軍人でも軍属でもないので、アーシャの護衛として同行する訳にはいかない。一人車内で待たせるよりは、タクシーでも呼んで先に帰らせる方が良いだろう。
「ああ、舞ちゃんも滝本中尉に同行してくれ。既に話は通っている」
関中佐は先手を打って舞が同行する許可を貰っていたようだ。流石は頼れる我が上司。そこに痺れる憧れる!




