第六百一話
一通りお宝の検証が終わったので迷い家に入る。時間もお昼になったので、四階層に向かうのは午後からになる。
「うわっ、これどうしたの?」
「凄く・・・美味しそうです!」
食卓に並んだ鰻丼を見て舞が歓声を上げ、アーシャの目も釘付けになる。俺も声こそあげていないが結構驚いている。
「いや、ニックと釣りに行こうと物置に行ったら鰻罠があってな。使い方の説明がてら仕掛けたら面白い程かかった」
「まあ、迷い家じゃからのぅ。これ、バレたら一騒動になりそうじゃな」
この世界の日本、安い鰻が出回っていないのだ。なにせ、前世では安価な鰻を供給していた大陸国家が群雄割拠状態なのだ。
その為、市場には国産鰻しか店頭に並んでいない。大陸国家産と国産の違いによる値段の差は、皆さんご存知だと思う。
「お母さん、鰻丼のタレなんて買い置きしていたの?」
「舞ちゃん、タレは母さんが作ったのよ。山椒は裏の林に自生してたわ」
迷い家に山椒が生えているとは知らなかった。一度迷い家内部の徹底調査をしておく必要があるかもしれない。
迷い家産天然鰻は美味しかった。全員が米粒一つ残さず綺麗に完食している。
「玉藻ちゃん、この鰻は天皇家にも献上しないとマズイわよ」
「定期的な献上を求められそうじゃな」
前世より早く回復しているとはいえ、この世界でも河川の水質汚染は発生した。改善され、鮎や鰻などの川魚もとれるが完全に需要を満たしているとは言えないのだ。
「鰻の献上は地上に帰ってから考えるべきじゃな。それより、午前中の戦果がこれじゃ」
俺はキューブをテーブルに置いて使い方を説明した。ニックが手に取り色を揃えようとする。攻撃魔法が出る赤や青は危ないが、揃えようとしているのが白だったので止めなかった。
「これは中々難しいな。これ揃えるのをモンスターの前でやるのは無理じゃないか?」
「揃えられる手前で止めておいて、モンスターと対峙した時に揃えれば解決するぞ」
父さんがキューブの上手い使い方を考案したが、残念な事にそれの対策はキッチリと成されているのだ。
「それが出来れば良いのじゃが、一定時間で色がバラバラに戻るのじゃ。しっかり対策されておる」
実際、あともう少しで揃うという所までいったキューブは色が変化しバラバラになってしまった。また一から揃え直しだ。
「まあ、慣れれば早く揃えられるようになるのじゃがのぅ。ほれ、このように」
俺はニックから受け取ったキューブを回し白を揃える。前世では六面全部揃える事が出来たのだ。一面だけなら楽勝で揃えられる。
「あら、何だか疲れが取れたみたいだわ。これがそれの効果なのね」
「疲労回復は有用じゃが、持ち歩くにも微妙に邪魔となるし後方支援用じゃな」
攻撃魔法は俺の神炎や井上兵長の杖がある。使い難いキューブを使う必要はないだろう。
「さて、午後の探索を始めるが、皇女殿下と舞は待機じゃ」
「えっ、玉藻お姉ちゃん、何で!」
舞とアーシャは不満そうだが、効率を考えるとそれが一番なのだ。理由を話して納得してもらいたいが・・・




