第五百六十三話
「これが前回お話しする予定だった内容を文書にした物です。銃が犯罪に使われた実例や統計が載っております」
上司さんが机に置いた書類の束を鈴置中将が手に取り、パラパラとめくって内容を確かめた。
「ふむ、やはり対人戦において銃は有効なようですな」
「ええ。犯罪の道具としても、犯罪者を制圧する道具としても有効です」
非力な者でも強い殺傷力を手に入れられる拳銃は、犯罪者にとっても便利な道具だ。スキルと違い、数を揃える事も比較的容易である。
だからこそ体制側が反体制側を取り締まるのに有効な武器となる反面、反体制側が体制側に反抗する武力とするのにも有効だ。
「今後銃を使う犯罪者が帝国に潜入する事を考えれば我ら陸軍も装備する意義はあるだろう。しかしなぁ」
「陸軍限定とはいえ、帝国内で使用すれば帝国内の犯罪者に普及する可能性が・・・」
鈴置中将の言葉を太政官さんが継いだ。陸軍とて完璧な組織ではない。末端には不届きな言動をする者も少数ではあるが存在する。
もし陸軍で拳銃が配備され、そんな不心得者に横流しでもされたら。そして、それを基にして量産され犯罪者達に渡ってしまったら。
あっ、因みに、海軍は既に導入しているが活動の場が主に海外なので国内への影響は少ない。銃が使用されるのは主に海賊なので、銃は艦内装備となっているそうだ。
そして国内の犯罪者対策と言えば警察組織だ。本来この場に警察庁からも人が来る予定となっていた。しかし、例の不祥事でハブられるという警察庁長官涙目な事態となってしまった。
現役警察官複数が犯罪行為に加担していたのだから、警察に拳銃を配備なんてしたら横流しされるのでは?と思われても仕方ないよね。
「貴重なデータをありがとうございます。試験的に貴国より拳銃を輸入する事になると思います。本国によろしくお伝え下さい」
「わかりました。必ず伝えましょう」
鈴置中将の言葉に微妙そうな表情で答える上司さん。普通に考えれば、海軍で運用しているのだからそちらから調達すれば良いと考えるよな。
「こちらからもお聞きしたい事があるのですが・・・」
「ほう、どのような内容でしょうか?」
会談がスムーズに終わり、俺の出番は無いかと思われたが上司さんが別の話をきりだした。
「ついこの間、貴国でデンシカの角が大量に出回ったそうですな。それだけの量をどうやって持ち帰られたのでしょうか」
日本側でその理由を知らないのは外務大臣ただ一人。彼は鈴置中将をガン見している。彼もそのカラクリを知りたいのだろう。
「それは機密事項となります。残念ですがお教えする訳にはいきませんな」
鈴置中将の答えを聞いて外務大臣だけがガッカリしている。英国の二人はその答えを予測していたのだろう。
「では、こちらも引き換えに情報を出しましょう。そうですね、陸上で運用する砲の情報など如何ですか?」
平静を装っている鈴置中将の眉がピクリと動く。現状必要性が低いとはいえ、他国の兵器の情報は知っておくに越したことはないのだ。




