第五百十一話
まだ舞に試して貰いたい事はあるが、アーシャを放置している訳にもいかない。彼女のスキルも確認と検証をしておかなければ。
「アーシャ、テーブルの下で指を何本立てているか見えるかな?テーブルが透けるよう念じれば見えると思う」
「やってみます・・・三本、です」
アーシャはテーブルを透かして俺が立てていた指の本数を当ててみせた。では次のステップに移行しよう。
「透視は問題なしと。次は遠視だな。ここでは狭いから外に出ましょう」
俺達は家屋から出て縁側に集まった。迷い家内は外の時間とリンクする為、空には星が瞬いていた。・・・という事は、迷い家の空の上には宇宙が広がっている?
また新たな疑問が浮かんでしまったが、今は脇に置いておこう。優先すべきはアーシャのスキルの検証だ。
「アーシャ、ここから果樹園は見えるかな?」
「星あかりだけだと、薄っすらとシルエットが見えるくらいです」
因みに俺にはくっきりと見えている。玉藻の目には昼間のような明るさに映っているのだ。この高性能な身体には高い視力と暗視能力がデフォで備わっていた。
「では、昼間のように見えるよう念じてみてくれ。それが出来たら、カメラのズームのように大きく見えるよう念じてみるんだ」
「・・・あっ、出来ました。木の葉や果実の色もはっきりと見えます」
暗視や遠視もクリア。千里眼は視力系のスキルを内包した複合スキルで確定だな。次は応用編にいってみよう。
「アーシャ、桃だけ見たいと念じてみてくれ」
「はい・・・えっ、桃の木以外が見えなくなりました!えっ?お父様や玉藻お姉ちゃんも見えない!」
「大丈夫、慌てないで。スキルを解除すると念じたら戻ると思う」
アーシャは俺達まで見えなくなり軽くパニックになっていたが、スキルを解除する事で視界が戻り何とか落ち着いた。
「玉藻様、今の検証って・・・」
「探したい物のみを見る能力・・・例えば危険物だけを見たいと念じれば、刃物や銃、爆弾といった凶器だけが見えるでしょう。それを発動させて会見場の記者達を見れば、安全度が高まりますね」
もし記者の中に爆弾などを持ち込んだ者が居れば、それだけが見える。誰も持ち込んでいなければ、アーシャの視界に何も写らないという事になる。
「舞ちゃんといいアナスタシア殿下といい、玉藻様が説いた危険に対する対処スキルをこうもタイミングよく授かるとは・・・これも玉藻様のお力で?」
「授かるスキルは神々にも自由に出来ませんよ。それを為す為に平行世界から魂を呼ぶという裏技を使うのですから」
この世界の人が授かるスキルは宇迦之御魂神様や他の神々でも自由に出来ない。正真正銘の神様でも無理なのに、眷属でしかない俺には到底不可能だ。
「アーシャの千里眼はとても有益なスキルだと判明したけど、舞の協力があれば面白い事が出来ると思う。舞、検証に協力してくれるか?」
「勿論だよお姉ちゃん。何をすれば良いの?」
もしもアーシャの千里眼に舞のスキルを組み合わせる事で俺が予想した通りの効果を発揮するなら、俺が抱える問題を一つ解決出来るかもしれないな。




