第二百九十話
「ふぉぉぉぉ、速い速い!」
「この船は時速百キロ出せるそうだよ」
海の上を爆走する船に興奮した舞が叫び、父さんが豆知識を披露する。前世で就航していた水中翼船は確か時速八十キロだったから、ダンジョン素材で改良されているのかもしれない。
「あっ、あそこに大きな船が!」
「あれは海軍さんの巡洋艦と駆逐艦だな」
視力も上がっている俺の目には艦体に積まれた主砲まで見えた。恐らく近海を哨戒している小艦隊だろう。
船は順調に進み佐渡島の港に着いた。タクシーに乗り金山に向かう。佐渡の面積は島嶼部を除いた東京都の半分程で結構広い。
佐渡金山には二つの坑道があって、江戸時代の採掘状況や伝統行事を再現してあったり金塊や小判の実物まで展示してあった。
「さて、お昼が近い。昼食をどうするか」
「お父さん、ここはどうです?」
母さんがスマホで見せたのは回転寿司のお店だった。地元の魚を使ったお店と言う事で、反対意見もなく決定した。
まだ十二時になっていないからか店内にお客はあまり入っておらず、すぐに席に着く事が出来た。おしぼりで手を拭きお茶を淹れると各自好きなネタを取って食べる。ネタはどれも新鮮で、ついつい食べすぎてしまった。
食べすぎたお腹を抱えてやって来たのは、先程とは別の金山だ。ここは砂金採りの体験が出来る。初級・中級・上級があり、上級は実際の川で採るとの事。
うちは初めての体験なのでインストラクターがついてくれる初級を選択。施設内に作られた水路で砂利を掬いざるを振って砂金を探す。
全員小さな砂金粒を採る事に成功し、父さんと母さんはネックレスに。俺と舞はキーホルダーにしてもらった。
次に訪れたのは小木という港。ここではたらい舟の乗船体験が出来るのだ。定員二名なので父さんと母さん、俺と舞に別れて乗り込む。
たらい舟は穏やかな海面を女性の船頭さんの巧みな操船で進む。船頭さんの動きを観察した俺は船頭さんに話しかけた。
「すいません、試しに漕がせて貰って良いですか?」
「ええ、構いませんよ。ゆっくり立ち上がって下さい」
転覆しないよう慎重に立ち上がった俺は船頭さんと場所を入れ替える。そして櫓を持つと先程見た動きをトレースして漕ぎ出した。
「お客さん上手いですね。前に漕いだ事がおありですか?」
「いや、初めてですよ。船頭さんの動きを観察していたので真似ているだけです」
前世で普通のボートや足漕ぎボートは漕いだ事はあったが、流石にたらい舟は漕いだ事は無い。見よう見真似だが案外上手くいくものだ。
「普通観察したからといってそこまで上手く漕げないのですけどねぇ・・・」
その後舞と交代するも、漕いでも漕いでもたらい舟は全く進まなかった。疲れ果てた舞は降参し、苦笑いする船頭さんと交代した。
「お嬢さん、それが普通ですよ。いきなり上手く漕いだお兄さんが凄いんです」
たらい舟は船頭さんにより無事に岸へと戻った。父さんと母さんは漕がずに乗っていたみたいだ。
「舞、大丈夫か?」
「うん、頑張る」
時間も丁度よいのでタクシーに乗り港へ。帰りも水中翼船に乗って新潟市に戻り、ホテルに帰り着いた。




