第二百八十八話
「渋滞が無くなってる。何だか不思議」
「ここが渋滞の先頭、という感じが無いからなぁ」
花園インターチェンジ手前からの自然渋滞を抜けてからは混む事もなく順調に進んでいった。途中赤城高原サービスエリアに寄り休憩をとる。
「このおうどん美味しい!」
「榛名山の水沢うどんだな。近くに温泉もあるし、一度行ってみるのも良いな」
前世ではあの近くに観光牧場やトリックアート美術館があったが、この世界でもあるのだろうか。あったら結構楽しめるだろう。
休憩を終えて北に向かい走る。紅葉で色付く山々が目を楽しませてくれる。
「このトンネル長い!綺麗な景色が見えないよ」
「これは群馬と新潟の県境の山脈を潜るトンネルだから長いぞ。確か日本で二番目に長いトンネルで、十一キロあった筈だ」
「むぅ、つまらない・・・」
真っ暗な車窓にむくれる舞の頭を撫でて慰める。下道から三国峠を越えれば景色は良いが、運転手にかかる負担は大きくなる。
前世で二度走った事があったが、特別な理由が無い限りトンネルを使う方が時間的にも体力的にも良いと思う。
長いトンネルとはいえ終わりはやって来る。長い長いトンネルを抜けると、そこは白銀の銀世界・・・とはいかず紅葉に染まる山々が連なっていた。
「この辺りは月末辺りから雪が降るらしい。十二月にはチェーンが必須になるそうだ」
「そこまで降り積もる雪、一度見てみたいわね」
母さんは温かい岡山の出身なので、関東に来るまで雪を見たことが無かったそうだ。なのでテレビなどで見る高く積もった雪に憧れのような物を感じているのだろう。
「流石にそんな雪の中を運転する自信は無いな。もし来るなら鉄道だな」
「楽しみにしてますよ、お父さん」
お母さんの中では雪のシーズンに来る事が確定しているらしい。舞も期待して目を輝かせているので俺は口出しをしなかった。
車は高速道路を降りて新潟市内に入る。今回宿泊するのは市内にあるシティホテルだった。車を駐車場に停めて父さんがフロントでチェックインの手続きをした。
「プールに大浴場、露天風呂まであるのね」
「水着も無いし、流石にプールは行けないがな」
父さんと母さんはソファーに座ってお茶を飲み、舞は室内をあちこち見て回っている。俺はと言うと、ソファーに座って館内のご案内という冊子を読んで非常口の場所を確認していた。
「明日は父さんお仕事だが、母さん達は水族館とか観光して来るか?」
「観光はお父さんも一緒が良いから待ってる!」
俺達はホテルで父さんを待つ事となり、その間一階の売店でお土産を物色する事に。食べ物は賞味期限があるので帰る前に購入するが、買う物を物色しておく。
「この白い子可愛い!」
「こっちのピンクの子も可愛いわよ」
売店で売っていた犬のヌイグルミを手にはしゃぐお母さんと舞。その脇でどう反応して良いか分からず棒立ちの俺。
「観光地の売店で真っ先に見るのがヌイグルミって・・・」
これが御当地に関連があるワンちゃんとかならまだ理解できるのだが、ここ新潟とは全く関係のない極普通の犬のヌイグルミなのだ。
レジを打つ店員さんの微笑ましいものを見る温かい視線がやけに印象的だった。




