第二百七十一話
十月に入り残暑も抜けた頃、二回目の探索を行う事が決定した。今回は関中佐によるお迎えはなく、水中村ダンジョンにて現地集合となる。
理由は玉藻が神の使徒だと今上陛下が確認したと宮内庁から公式に発表された為だ。中佐は玉藻と連絡を取れる希少な人物として官民問わずマークされているらしく、フィールドワークに出られないとぼやいているという。
絶賛大注目中人物が秘匿を要する任務に就くなど言語道断な為、中佐は情報部の部長室で書類仕事に精を出しているそうだ。
中佐が外に出られない皺寄せは部下である部員さんに降りかかるのだが、書類仕事を放棄して現場に飛び出していた関中佐が書類仕事に専念しているという事で玉藻は感謝されているとの事。
そんな訳で大宮駅から高速鉄道に乗った俺は上毛高原駅で下車し、適当に山中へ入って行く道を歩く。人や車が来そうにない事を確認し玉藻へと変わり空歩で水中村を目指した。
上空から見下ろすと、第1999ダンジョンに通じる道は軍用車で封鎖されていた。車外に立っていた人の顔に見覚えがあったので情報部の人だろう。
ギルドの中に入るとエントランスで冬馬パーティーの三人が待っていた。
「お久しぶりです、玉藻様。長らくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした」
「一月かかった理由はそれじゃな、また随分と思い切った事をしたものじゃ」
冬馬伍長の武器は長剣と盾で変わっていなかったが、以前と色が違うので素材が魔鉄からクラスアップしていると思う。
防具も革鎧に金属の追加装甲が加えられた物となっていて、動きやすさはあまり落とさずに防御力を高めた物になっていた。
井上上等兵と久川上等兵は冬馬伍長と同じ鎧で武器が変わっていた。井上上等兵が長槍で久川上等兵は大きな戦鎚を肩に担いでいる。
「槍ならば突きさえ様になれば戦えます。器用さと素早さを活かして弱点に突きをお見舞いしようと思います」
「私はパーティーの足りない攻撃力を補う為に戦鎚を選びました。ポーター兼務で鍛えた力と体力を活かしたいと思います」
武器を変えた理由は理に適っていてパーティーとしてもバランスが良い編成になっていると思う。しかし、いくらポーターで力と体力が鍛えられているとはいえ戦鎚を運用するのは大変ではなかろうか。
「二人の武器転換は玉藻様の迷い家ありきの選択です。一戦毎に充分過ぎる休息を取ることができ、常に万全の体制で戦えるからこそ出来たのです」
「今回の探索で成果を出すという点においては最善の選択じゃな。迷い家の使用を前提とした物であろうと成果を出せば上も認めざるを得ぬじゃろう」
元々軍には女性だけのパーティーはそう多くない。軍のお偉いさんが本格的に俺と組ませるパーティーを選ぶ時、既に同行して実績を残しているとなれば大きなアドバンテージとなるだろう。
「ところで玉藻様、お聞きしたい事があるのですが・・・」
「尻尾が二本になっておる事じゃな?」
三人の視線が尻尾に集まっているので嫌でもわかる。前回は一本だったのが一月で二本に増殖しているのだから気にするなという方が無理だろう。
「種族が神使に変わってのぅ。その影響で尻尾が増えたりスキルが変化したりしたのじゃ」
大雑把に説明するも尻尾から視線は外れなかった。俺はため息をつくと三人に約束をする。
「・・・モフるのは休憩時間にな」
ガッツポーズで喜ぶ三人。二倍に増えた尻尾は魅力も二倍に増えたのだろうか。




