第二百五十八話
あれから数日経った土曜日の午後。噂はどんどん広がり、SNSでは盛んに真偽について議論がされていた。
「お兄ちゃん、それなんて面白いよ」
「えっと、神の使徒というのは軍の陰謀で臣民の士気を上げる為の捏造である、か」
真実とも偽りとも証明のしようがない以上、どれだけ議論を尽くしても相手は納得しないので無駄なのだがね。
人は自分に都合が良い物だけを見たがり都合が悪い物は無かったことにしたがる生き物だ。例え明確な証拠を突きつけても偽造された物だと難癖つける者も居るのだからたちが悪い。
「優ちゃん、お野菜が欲しいから迷い家で収穫したいのだけど良いかしら?」
「あっ、玉藻さんになるなら尻尾をモフらせて!」
リビングで舞とスマホを見ていたら母さんに野菜の補充を頼まれた。それを好機と尻尾をモフろうとする舞。我が尻尾ながら、あのモフモフは病みつきになる触り心地だからな。
「あら、それじゃあお母さんもモフらせて貰おうかしら」
母さんまで乗ってきたが断るという選択肢は俺には無い。女性体と妖狐化を発動して玉藻に変身した。
「このモフモフは止められない止まらない」
「何時間でも触っていられる至高の尻尾ね」
舞が両腕で尻尾に抱きつき某有名スナック菓子の宣伝文句のような言葉を放つ。母さんは両手で丁寧に尻尾を撫でてうっとりしていた。
「舞も母さんも、すっかり尻尾に嵌まったなぁ・・・って、ちょっと待って!」
何で舞が両腕で抱きしめている尻尾を母さんが撫でられるのか。答えは一つしか無いのだが、現実逃避をするかのように二人に質問する。
「舞は尻尾を抱きしめてるし、母さんは尻尾を撫でてるよね?」
「うん、モッフモフでいつまでも抱きしめていたいよ!」
「このフサフサな手触りは何とも言えないわね」
二人の返事を聞き、覚悟を決める為に深呼吸をする。そして振り返り自分の尻尾を確認した。
「ですよねぇ・・・」
そこには袴の切れ目から生えた二本の尻尾を一本づつモフっている舞と母さんの姿があった。
「何で本体に断りもなく増殖しちゃうかな?」
「玉藻ちゃん、普通尻尾が増える時にこれから増えますって断り入れないと思うわよ」
それ以前に尻尾が増える事自体が普通じゃないのだけどね。妖狐で玉藻と言えば九尾と相場が決まってるけど、そこまで増えるのかな?
「しかし、何でいきなり尻尾が増えたかな。特に変った事をした覚えは無いぞ」
「お姉ちゃん、ステータスを見たら何かわかるかもよ」
舞に指摘されてステータス画面を呼び出す。すると尻尾が増えた原因であろう変化をすぐに発見出来た。
「種族が神使になってる・・・」
妖狐であった種族の欄が神使になっていた。神の使いという事だろうな。多分これが尻尾が増えた原因だろう。
「スキルは・・・狐火が神炎になってるけど空歩と迷い家は変わらずか」
妖力で作っていた火の玉が神力で作る火炎に変化したようだ。燃やす対象の選択を出来るのは変わらず、新たに炎の形状を変える事が出来るみたいだ。
「で、こんな重大事が起きてるのにモフるのは止めないんだ」
「だって、種族が変わっても優ちゃんは優ちゃんだから」
「お姉ちゃんが神の使いなのは元からだし」
我が家の女性陣、適応能力高すぎませんか?




