第二百四話
「父さん、どうするの?」
「はっはっはっ、これは計算外だったな」
朝食を食べた後の道中は順調だった。いや、順調過ぎた。渋滞のじの字もありはしなかった。
制限速度で止まる事なく走り続けたので父さんの負担は下道に比べて遥かに小さかったのは嬉しい誤算だった。それは良かったのだ。
では何が問題かというと、到着が早すぎるのだ。今の時刻はまだ十時前、旅館のチェックインまでかなりの時間がある。
この村は有名な温泉街だけあって高速道路のインターチェンジが作られている。高速道路を降りれば少しの時間で温泉街に到着するのだ。
「取り敢えず役場に行って到着したと報告しておこうか」
去年も訪れた役場に行くが、何だか雰囲気が悪いように感じる。父さんは受付で担当者を呼んでもらっている。
「滝本先生、今年はお早い到着ですね」
「高速道路を使ったら順調過ぎまして。まさかこんなに早く着くとは思いませんでしたよ」
担当の人は去年と同じ人だった。担当さんは電話で旅館に早めにチェックイン出来ないか聞いてくれたが、流石に午前中は無理だと言われてしまった。
「観光を勧めたい所ですが、この村には温泉街とダンジョンしかありませんからねぇ。そのダンジョンも特殊モンスターは出ますが物理無効という厄介な奴なので」
この中で戦闘が出来るのは俺だけだが、攻撃手段は物理のみなので特殊モンスターを倒せない。という事になっている。
他のモンスターを倒すのならばここの1999ダンジョンである必要はない。環境は違うだろうけどモンスターは他のダンジョンと同じなのだ。
「では、到着早々ですが往診をお願い出来ませんか?山間部に起き上がれなくなったご老人が居るのです」
「それはいけませんね、往診に向かいましょう。優と舞はどうする?」
「あっ、お子さん方も同行された方が・・・」
俺や舞が返事をする前に担当さんが同行する事を勧めてきた。理由は言いたくなさそうだったが、従った方が良いような気がする。
「舞、父さんに付いて行こうか」
「お兄ちゃんが行くなら舞も行く!」
こうして宿のチェックインまでの時間を利用して山間部に往診に行く事となった。ナビの為に担当さんが助手席に乗り母さんは後ろの席に移動した。
車が五人乗りのセダンだったら窮屈になったかもしれないが、幸い八人乗りのワンボックスだ。五人乗っても車内には余裕がある。
「去年反対派の者が村長になったとお伝えしましたが、先の選挙で村議会も反対派が多勢を占めました。その為誘致派は発言力を失い反対派はやりたい放題なんです」
余所者を排除する反対派が完全に権限を握り、外部から来た者への風当たりが強くなったらしい。観光資源が売りの温泉街がそれで良いのだろうか。
「先生への依頼も今年が最後かもしれません。ダンジョンの間引きも軍から地元の探索者に変えた程ですから」
「・・・軍も人手不足ですし、探索者で十分間引きが出来るなら良いのではないでしょうか」
別に反対派を擁護する義理もなければ義務もないのだが、間引き対象が減れば軍の負担も減るのは事実なのでそれは言っておいた。




