第百七十七話
「滝本君は例の件で市立中学から転校したのですよ。今は探索者としてダンジョンに潜っていますが、将来的には軍に入りたいと言ってくれています」
関中佐が説明するも、俺と中佐以外は微妙そうな顔で何も言わない。石丸さんはあの教師の被害者本人と知ってどう対応して良いものか戸惑っているのだろう。
そして軍人組は妙なスキル持ちが入った所で使えるのかと突っ込みたいけど突っ込めないというところか。
「滝本君のスキルは・・・説明するより見せた方が早いか。ここで変わる?ダンジョンに入ってからにする?」
「どちらでも構いませんよ」
「では、お願いできるかな」
俺は席を立ち中佐の要望に従い女性体を発動させた。装備はTシャツにGパン、篭手と斧槍にしておいた。いきなりドレスを披露するのは恥ずかしい。
「女性になった・・・女性体とかいうスキルか」
「服装が変わったし、武器まで持ってる。もう一つのスキルの効果か?」
男性の軍人パーティーは驚きはしたものの冷静にスキルに対する考察を行っていた。対して俺が加わる女性パーティーはというと。
「久川、年下に負けてるわよ」
「くっ、冬馬もギリギリ負けてるんじゃないの?」
「あらあら、一瞬で着替えられるって便利そうね」
冬馬伍長と久川上等兵はナニカの大きさで言い合いをしていて、井上上等兵は素直な感想を述べている。
「まだ十五よね、どうやったらそこまで大きく育てられるの?」
「いや・・・それを聞かれても困るのですが」
スキルを貰った時にはすでにこの大きさだったので、大きさの秘訣は神様にでも聞いてほしい。
「女性になったのが女性体スキルの、服や武器が変わったのは着せ替え人形スキルの効果だそうだ。滝本君は二体の着せ替え人形の着せた装備を任意のタイミングで制限なく入れ替えられる」
「そ、それって複数の装備品を負担無しでダンジョンに持ち込めるという事ですか?」
「はい。事前に着せ替え人形に装備させておけばこのように好きに入れ替えられます」
石丸さんの問に答えつつ俺は斧槍装備から大盾装備に入れ替えた。瞬時に斧槍から大盾に持ち換えられたのを見た一同はそれがどんな効果を発揮するのか即座に理解したようだ。
「おいおい、その能力ヤバくないか?」
「一人でタンクとアタッカーを兼ねれるって反則だろ」
自分でも反則なスキルだと思う。しかも自動修復と自動洗浄というさらなるチート機能付きである。それもバラしたらどうなる事やら。
「ちょっと時間を食ったがそろそろ移動しよう。滝本君、まずはどの装備でやる?」
「双剣は井上さんと被りますから、斧槍か大盾ですね。体力系のモンスターには斧槍、それ以外では大盾でいきます」
下ろしていたリュックを背負うと、二つのパーティーの面々も立ち上がり装備を手にした。関中佐が先頭に立ちダンジョンへと移動する。
「ねえ、そんなスキルがあるなら探索者として成功は間違いないでしょう。何故軍を希望するの?」
「このスキルは探索者として成功を約束してくれる程優秀です。でも、優秀過ぎるのです。勧誘合戦で面倒な事になるのは目に見えてますから」
冬馬伍長の質問に素直に答える。すると久川上等兵が質問してきた。
「確かに優秀なスキルだけど、ちょっと自信過剰なんじゃないの?」
「スキルが知られていなくても、この大盾の素材を持ち帰った時に散々な目に遭いましたから・・・」
「既に経験済みなのね」
遠い目で淡々と答える俺を見て、どんな目に遭ったのか察してくれたようだった。その後俺を見る目に同情の念が含まれていると思うのは勘違いでは無いと思う。




