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第百五十二話 とあるギルドにて

 いつもと変わらぬ日常。いつもと同じくダンジョンに入る渦を見張るだけの退屈な仕事をこなすだけ。その筈だった。


「た、大変だ。馬鹿がトレイン起こしやがった!」


「な、何だとっ!何階層だ!」


 平穏な筈だった一日は渦から飛び出して来た探索者の切羽詰まった叫びによりかき消された。ギルド員は問うと同時に壁に設置されたスイッチに拳を叩きつける。


「彗星鶏が来てるから十九階層だ。今は一階層で足止めしてるが・・・」


 探索者の答えを聞きながら、ギルド員はスイッチの脇に置かれていた小型無線機を耳に装着する。


「2098番、板橋ダンジョンにてトレインが発生。元は十九階層。現在一階層にて足止め中」


 ギルド員が使っている無線機は、当該ギルドの全館と軍情報部に強制的に放送を流す。これにより軍の情報部やギルドに居る職員や探索者全員が状況を把握する事が出来る。


「当ダンジョン内にてトレインが発生しました。全探索者は協力を願います。受付で氏名を登録した後係員の指示に従って下さい」


 館内放送が入り、ダンジョン入り口の区画とギルド本館を繋ぐ通路に隔壁が降りる。分厚い鉄板で出来た壁には人一人がやっと通れる位の扉が付いている。


 負傷者の搬出や増援を受入れる時に時間がかかってしまうが、青毛熊やオークといった大きなモンスターを出さない為だ。


 次いで監視員が付けた無線機にギルド長からの指示が入った。


「監視担当、こちらギルド長だ。早急にダンジョン内の探索者を引き上げさせ、建屋内での応戦に切り替えろ」


「了解しました」


 ダンジョン内に居る者に連絡するには伝令を出すしか無い。それでは情報の伝達に遅延が生じるので、出入り口の渦を閉じ込めた屋内で戦闘する方が良いのだ。


「済まない、戻って阻止線を移動させるとダンジョンの探索者に伝えて来てくれ」


「分かりました。何としても乗り切りましょう」


 青い顔をした探索者が踵を返しダンジョンに戻っていく。最悪、探索者達と監視をしていたギルド員はここで全滅する可能性がある。


 渦からは続々と探索者が引き上げて来た。浅い階層で活動している者ばかりなので、戦力的には心許ない。


 三十人程が戻り、渦を囲むように布陣した。渦からは突撃豚や奇襲ヘビ、迷い猫などが次々と姿を現していく。


「片端から倒していくぞ。少しでも削るんだ!」


 モンスターが出て来た瞬間に複数の探索者が寄って集って攻撃する。これなら守れるかと油断した時、一匹のオークが姿を現した。


「くっ、よりによってオークかよっ!」


 体力自慢のオークは複数人の攻撃を物ともせずに反撃した。片手剣を持った探索者が棍棒を剣で受けるも吹き飛ばされた。


「配置を変えるぞ。俺達が前に出る!」


 自分達では敵わないオークに探索者が怯んだその時、ギルドからの増援が到着した。最低でも十階層を突破出来る実力を持ったパーティーが前線に出ていく。


「そいつは連れ出して治療させろ。五階層に到達出来ない探索者は退避しろ!」


 監視をしていたギルド員が戦闘力の低い探索者を退避させる。二桁階層のモンスターが出てくる以上、彼らは足手纏になりかねない。


「くっ、まだ倒れないか!」


「こんなのの相手、剣じゃやってられん!」


 ゴーレムを相手にしているパーティーから泣き言が聞こえる。しかし望まぬ相手であろうとも相手をしなければならないのだ。


「おいっ、誰かあのゴーレムを止めろ!壁を壊す気だ!」


 誰かの叫び声に探索者の意識が一瞬奪われる。モンスターの壁の奥では、一匹のゴーレムが壁を殴っていた。


「ダメだ、敵が多くて辿り着けない!」


「魔法が頭に直撃しても無視しやがる!どうしろって言うんだよ!」


 ゴーレムを止めようと足掻く探索者達。しかし、その努力は実を結ばなかった。頑丈な筈の壁が音を立てて崩れていき、ゴーレムがそこを通っていく。


 多くのモンスターに阻まれた探索者達は穴から出ていくモンスターに何も出来ないのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 無双しなくてもそれぞれの戦いがあるね
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