第十一話
翌朝、いつもの時間に起きて柔軟体操とジョギングを行う。これは毎朝の日課にしていて、どんなスキルを得ても体の柔軟性と体力は役に立つと思ったからだ。
強い力を活かす近接系戦闘スキルを得ると予想していたのだが、まさかの非戦闘系スキルだ。表情には出さなかったが正直驚いた。
それでも着せ替え人形の方は利用法について予測が出来る。装備も瞬時に変えられるので、片手剣で戦っていていきなり大剣に換装して攻撃するなんて事が出来るだろう。
多彩な武器を用意し、場面によって使い分ける。それを使うに必要な筋力はヘラクレス症候群で賄う。それが神様が用意したシナリオだと思う。
女性体の方は分からないが、もしかして着せ替え人形は一人二体しか実装出来ないのかもしれない。なので数を増やす為に女性体にして四体の着せ替え人形を使用可能にしたのだろうか。
転生時に会った女神の言うこちらの担当者に会えればその辺りも聞けるかもしれないが、残念ながら今の所その当ては無い。
ジョギングを終えてシャワーを浴びる為に脱衣所へ。着ていたジャージと下着を洗濯機に放り込みシャワーを浴びた。体を拭いて普段着の着せ替え人形に換装する。
「おはよう優。昨夜は遅かったのに早起きね」
「おはよう、母さん。少し眠いけど生活サイクルを崩したくないからね」
食卓に座り母さんが作ってくれたトーストに目玉焼き、ウインナーを完食する。前世では不規則な生活を送っていたので、今世では規則正しい生活を送りたい。
「母さん、優、おはよう。よし、二人共健康だな」
起きてきた父さんが母さんと俺にハグをした。これも毎朝の恒例行事で、父さんのスキルでの健康チェックとスキンシップを兼ねている。
「母さんは買い物に行くと言っていたな。優はどうする?一緒に行くのか?」
「父さん、女性用下着も買うのに一緒に行くと?何なら父さんが一緒に行く?」
俺用の買い物だとは重々承知しているが、男子中学生が女性下着売り場に入るにはかなりの覚悟が必要となる。
「あら、お父さんが荷物持ちをしてくれるのかしら?」
「すまん、勘弁してくれ」
不利を悟り逃げを打つ父さんに母さんは追撃をしなかった。流石に女性下着売り場に父さんを連れて行くのは酷だと判断したのだろう。
その後、遅れて起き出した舞を連れた母さんはタクシーで買い物に。父さんは最新の論文を読むと書斎に籠もってしまった。俺は母さんの言い付けで外出も出来ないので日舞の自主練と着せ替え人形の能力を試行錯誤した。
リュックサックや鞄も着せ替え人形に登録出来れば疑似アイテムボックスとして利用出来ると思ったのだが、その考えは甘かった。
リュックサックや鞄は着せ替え人形に登録されず、背負って着せ替え人形を発動しても服が変わるだけだった。
そして母さんと舞が山のような荷物を車に積んで帰宅。俺と父さんで家に入れる羽目になった。




