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第170話 アーティファクトの再現

 幸いなことに『優しき一角獣の腕輪』の材料は、メルアのアトリエに全て揃っていた。


 僕はまず、トネリコの樹液を錬金釜に溶かし、その中にユニコーンの角を粉末状に砕いたものを入れた。二つの材料が融け合ったところで、メルアが使っていた腕輪の型に錬成液を流し込む。


「少し時間を短縮しても構わないかい?」

「それで腕輪が出来るなら、構わないよ」


 メルアの許可を取り、少し邪道ではあるが、アルフェに氷魔法で錬成液を冷やしてもらうことにした。


「へっ!? そんな乱暴なやり方ってアリ!?」


 通常なら常温で冷えるのを待つ過程なのだが、僕が魔法で直接冷やすという手段に出たのでメルアが驚愕の叫びを上げた。


「材料のほとんどが樹液だからね。冷やして固める分には問題は生じないんだ」


 思えばこれを量産していたときも、この方法で冷やしたわけだし、現代に残っている『優しい一角獣の腕輪』も大半がこの過程を経て出来たことになるわけだ。そう思うと、メルアがマチルダ先生から借りたという本物と全く同じ工程を辿っているのだから、ある意味正しいのかもしれないな。


 こうしていると前世の記憶がありありと蘇ってくる。こうした些末な記憶に関しては、不思議と嫌な気分にはならないな。今世でも錬金術を学び、突き詰めることを選んでいるのだし、僕はやはり錬金術が好きなんだろう。


 アルフェのおかげで冷却時間をかなり短縮できたので、メルアが準備していた研磨した魔石を繋ぎ合わせて腕輪の表面に一角獣の模様を作っていく。


「ねえ、待って。魔石の配色がオリジナルと全然違うじゃん」

「ああ、これ? 魔石部分はただの装飾品としての飾りだよ。この『優しき一角獣の腕輪』の真価を発揮させるのは、裏に彫る簡易術式なんだ」

「嘘でしょ……。うち、この魔石を再現するのに滅茶苦茶苦労したんですけど~」


 メルアは僕の手際の良さにすっかり見惚れてしまっている。この様子だと、僕が出鱈目を言っているという疑念は大分晴らせているようだ。


 ユニコーンの血を用意し、腕輪の裏側に(たがね)を使って浄化の簡易術式を彫っていく。ここに彫るルーン文字は新字ではなく、敢えて僕が得意とする旧字にした。その方がメルアを説得できると考えたからだ。


 案の定メルアは、僕の書いたルーン文字を読み取りながら、感心したように頷いてくれている。仕上げにユニコーンの血を流し込み、乾くのを待って完成とした。


「これでもう完成だよ」


 完成した腕輪をメルアの前に差し出すと、メルアは訝しげに眉を寄せた。


「これで完成? 確かに手際は良かったし、話してた内容との矛盾もないけど……。でも、でもさ、作り始めてから一時間ぐらいしか経ってないじゃん!」

「まあ、時間を短縮させてもらったからね」


 初めて作ったにしては手際が良すぎる、という指摘が来なかったことには安堵しつつ、僕は首を竦めた。


 そもそもこの『優しき一角獣の腕輪』は、前世の僕(グラス)が生活費を稼ぐために作っていたもので、当時は街の装飾品店などで手に入る代物だったのだ。この程度のものを作るのに何時間も時間をかけるのは馬鹿らしいので、徹底的に効率化を重視したのだ。


「それなら試させてもらうね」

「どうぞ」


 メルアが腕輪を装着し、エーテルを流す。


「……やばっ。さっきから胃がキリキリしてたんだけど、滅茶苦茶清々しくて良い感じじゃん。バリバリに効いてるって感じがするんですけど~!」


 メルアが鳩尾のあたりをさすりながら、驚きに目を瞬いている。


「その腕輪の浄化の力は、人間の自然治癒力を高めるからね。ちょっとお腹が痛いくらいならすぐに良くなるよ」

「やばすぎ! キミはもしかして錬金術の神!? うちを弟子にしてー!!」


 メルアがその場に屈み込み、僕の前に平伏する。突然のことに僕もアルフェも反応できずに、驚きの表情で顔を見合わせてしまった。


「……どうするの、リーフ?」


 アルフェもこの成り行きについて行けない様子で、戸惑いの声で訊ねた。


「弟子というか、錬金術を教えるのは構わないよ。その代わり、アルフェに魔法を教えてほしいんだ」

「そんなんでいいの!?」


 僕の提案にメルアが勢い良く顔を上げる。


「元々は、そのつもりでここに来たからね」


 僕が頷くと、メルアは立ち上がり、僕とアルフェの手を力強く握りしめた。


「それじゃ、そういうことで宜しく! リーフ大先生とアルフェちゃん!」


 やれやれ。メルアに魔法の先生を頼みにきただけのはずなのに、妙なことになってしまったな。



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