第93話 休息日はお部屋でゴロゴロしたい
3/21 誤字修正しました。
今日は訓練の合間の休憩日。
あれから1週間、私とアイリはエリーのお屋敷に泊まり込みだ。
なんか友達の家で合宿してる感じがすごくいい。
座学はいいとしても、体を動かす訓練の方はエリーとアイリの二人にはきついらしい。
私的には訓練といっても軽い運動程度だったけど、体を動かし慣れてない二人は今日に至るまで毎日筋肉痛。ベッドの上で悶えてた。
お父さんからは個別に訓練内容を変えると言っていたけど、1週目はランニングとか体の動かし方とか基礎訓練的なやつばっかりだ。そのうち私用のメニューが増えるのかな?
「あいたたた……。1日どころか半日で筋肉痛とか若い証拠なのは良いけど、さすがに毎日これは辛いわ……」
「ですわ……。こういうときは身体能力の高い獣人が羨ましいですわ……」
そう、私は筋肉痛にはなってない。
考えてみたら転生してフランシェスカとなって以降、獣人だからか筋肉痛らしい筋肉痛はしたことがないかも。
あっても多少だるいなぁ程度だったと記憶してる。獣人すげえ。
まあ私は普段から運動してるから、この程度は今更だしね。
ちなみに私の運動はと言うと、お母さんのお仕事がお休みの日の午後にやってる。運動と言う名のほとんど訓練な内容だけど。
時間は4の鐘が鳴り、お出かけから帰宅したあと、お母さんが夕ごはんの支度を始めるまでの間だ。時計がないから大雑把だけど、多分1時間程度かな。
運動の内容は、追いかけっこしながら軽い木製ボール当てだ。木製ボールといっても布で覆ってるので当たってもあんまり痛くない。
でも侮ることなかれ。単純だけど、前世で考えられないくらいの内容だったりする。
とにかく速いし、飛んだり跳ねたりするし、家の壁まで使うし、避けるだけじゃなく当てないといけないし、挙げ句の果てにはこの運動をしてるときはずっと魔力感知と魔力操作、場合によっては魔法まで要求されるし。
それでも、どんくさくてワンテンポ遅れてた前世と違い、今の私は思い通りに動けるし、ちょっとやそっとじゃ疲れないので体を動かすことがとても楽しい。
運動はもう習慣ってレベルだ。
前世じゃ体を動かして楽しいなんて考えもしなかったなあ。
ただ、最近お母さんは組み手を勧めてくることがある。
8歳児の女の子に何やらせようとしてるし。
体を動かすのは好きだけど、殴る蹴るは積極的にはやりたいとは思わない。なので「そのうちね」と先延ばししてたりする。
……獣人は女でも子どもでも、みんな小さい頃から強くなるように運動や遊びと称して鍛えられるのだろうか。謎の文化だ。
それと、何がとは言わないけど、運動中はお母さんのがとても揺れる。
説明するのが今更だけど、中世ヨーロッパっぽい時代だからか、王都と言えどもスポブラどころか前世にあった普通のブラもない。あってもバンドタイプのものかサラシだ。
それに化学繊維なんてないので布の伸縮性はそれほどでもない。お母さんはずれにくくて揺れにくいサラシをよく使ってる。
私が生まれる前、冒険者時代のお母さんは【ミスリル】の冒険者だ。
高位ランクということは当然魔物と戦ったはずであり、戦うということは運動なんて目じゃないくらい激しく動く。
つまり何が言いたいのかというと、獣人は頑丈だけども固定せずに激しく動いて痛くないのかとても気になるということだ。何がとは言わないけど。
ただ種族的な特徴なのか、体が頑丈な恩恵はクーパー靭帯にもありそうだ。
運動後はよく一緒に水浴びするんだけど、数年確認し続けてきたから間違いない。
お母さんの形はまったく崩れていることなく、すごくきれいだ。
同じ女性として憧れるほど。とても子持ちとは思えない。ついでに体形もとても子持ちとは思えない。
クーパー靭帯がとても強靭だったり再生するのかもしれない。神か。獣人マジ最高。
そんなどうでもいいことを考えてると、アイリがベッドに寝転がりながらだるそうに声をかけてきた。
「フランー」
「なあに?」
「せっかくの休憩の日なのに、筋肉痛がきつくてゆったり休みを楽しめないと思うのよ。アンタって回復魔法使えるのよね。ちょっとかけてくれないかしら? アタシじゃ回復魔法使えないし」
「ん、いいよ」
私はベッドの上でゴロゴロしながらアイリの方に向き直る。
回復魔法は別に触ってないといけないなんてことはないので、この程度の距離ならゴロゴロしながらでも問題ない。
なんか忘れてるような気がするけど、一緒にベッドの上で寝転んでるアイリに回復魔法をかけた。
「ああぁ~~、効くわあぁ~~……」
アイリは成長期が遅いのか出会ってから数年たった今でも背が小さく、未だに幼女といっても全く差し支えない。
でも、幼女だからといって乙女が出していいのかちょっと心配になるような声を出した。
「アイリ、はしたないし、だらしないですわ」
「今はアタシたち3人だけなんだし構わないでしょ。気の知れた仲だし今更取り繕っても仕方ないわよ。それに、これはありのままのアタシを受け入れてくれるっていう信頼の証拠よ」
「そ、それなら仕方ないですわっ」
エリーってこういうところが可愛いんだよね。アイリはよく分かってる。
私たちのいる部屋に近づく足音が聞こえる。
「私は別にいいけど、多分もう少しでスーさんが来るよ? いいの?」
「げっ」
そういうとアイリはもそもそと起き上がり、ベッドに腰かけた。
自宅ならいざ知らず、さすがに友人宅のメイドにこのだらけた姿は見せたくないらしい。
手櫛でボサボサの髪の毛を整えてる。
こんこんっ。
「よろしくてよ」
「失礼いたします」
スーさんをはじめとして、他に5人のメイドさんが入ってきた。
彼女たちは服を着替えさせてくれるメイドさんだ。
「フラン、ありがとう。着替えもあるし、回復魔法はもういいわ」
「うん、どういたしまして」
「それにしても、何だかすごくお腹が空いたわ……」
「あ、そうだ、思い出した」
「何を思い出したの?」
アイリは私に聞き返したと同時にお腹の虫を可愛く鳴り響かせた。
「っ……!」
「まあ、可愛らしいですわ」
「回復魔法って体の回復力を高める魔法なんだけど、早く治ろうとするぶん体力使うんだ。だからお腹空くよ」
「アイリーン様、朝食の用意はできておりますよ。ささ、お着替えいたしましょう」
「フラン、そういうことは早く言ってちょうだいね!? ホント、早く言ってちょうだいね!?」
恥ずかしさで顔を真っ赤にしてプルプルしてるアイリ。
私のフォローは追い討ちになってしまったけど気にしない。
これからお着替えタイムだ。
フランが運動でやってる軽い木製ボール当てですが、いくら布で覆ってると言っても投げる速度が速いので当たればそこそこ痛いです。
フランがあんまり痛くないと感じてるのは、獣人が頑丈だからです。
良い子のみんなはマネしないでね!
次回更新は3/24(土) 19:00の予定です。




