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ネコミミ娘に転生したので楽しく気ままに生きたい  作者: 星川 咲季
■第5章 冒険者活動と日常編(8歳)
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第91話 外壁の外での冒険者の心得

3/15 誤字修正しました。


 私たちは座学のため、エリーの部屋に集まった。

 貴族の私室は超大なワンルームだ。その部屋に大抵のものが置いてある。

 天蓋付きベッド、ドレッサー、箪笥、エリー個人の勉強机、お茶を飲む時に使うテーブルに椅子、ソファー。

 もちろん、私たち3人がこれから勉強に使うテーブルもある。

 文字だけ並べるとカオスな感じがするけど、部屋が広いのできれいにまとまってる。


 「さて、これからの2週間ほど、基本的には2の鐘(9時頃)から3の鐘(12時頃)までが座学、食後から4の鐘(15時頃)までが野外訓練だ。進み具合によるが、短期集中はそこで終了だな。そのあとは週1、2回程度のペースになるが、薬草採取などの依頼を受けて実際に外壁の外での活動もしていく予定だ」


 お父さんは今後のスケジュールをざっくり説明してくれた。


 「もちろん、4の鐘(15時頃)が鳴った時点で赤点だと遅ければ5の鐘(18時頃)まで補習だ」


 「え~。夕ごはんはみんなでじゃないの?」


 「う、だ、ダメなものはダメだ」


 補習は嫌なのでお父さんに文句を言ったけど、いつものように折れてくれなかった。


 「マリアから聞いているが、みな優秀だから問題ないはずだ。さっきのはそれくらいの気持ちでいてほしいということだ」


 「ならいいんだけど」


 「フラン、心配ありませんわ。(わたくし)が認める貴女が赤点などあり得ませんわ」


 「そうねぇ、アタシもフランは問題ないと思うわ。もちろんアタシもエリーも赤点とるなんてないわね。どっちかっていうと訓練よ。アタシたちの体力的な問題の方が心配なのよね」


 「ですわ」


 そっか、私はもうすっかり獣人の体力や身体能力が基準になってるけど、二人は違うもんね。


 「ああ、最初に伝えておくが、訓練はついてこられる内容にするから安心してくれ」


 「「ほっ……」」


 二人は安堵の息を出した。


 「良かったね!」


 「フランは楽ができるとか思ってるかもしれないから言っておくけど、訓練の内容は一人一人に合った内容にするつもりだ。ってことは、当然フランはフランにちょうどいいように調整するからな?」


 「むぁー!?」


 無慈悲宣告だった。




 今は午前中。座学だ。


 最初の一回目なのでまずはざっくりした内容や心構えからだ。

 冒険者とはなにか、ランクについて、マナーなどなど……。


 まあ私はいつもギルドにいるからこの辺は問題ない。

 アイリは転生者だから飲み込みが早い。

 エリーは理解力が高く、さらには記憶力も凄いため、大抵のことは圧倒的なスペックで身に付けていく。


 ちなみにお父さんの言葉遣いについては、最初の挨拶以降、普段の言葉遣いだ。

 理由を聞いたら、なんでも公爵様は公式の場での挨拶以外については普段通りで構わないし、そうしなさいと言われたらしい。なるほど。だからエリーも出会ったときから私やアイリに普段通りにしてと言ってたのね。


 「外壁の外に行く目的は色々とあるが、冒険者として最も気を付けなければいけないことがある。それが何か分かるかな?」


 「命を落とさないことですわ」


 「正解。冒険者を名乗るなら、どんなに惨めでも情けなくても、生き抜くことを最優先にすること。生きることを諦めるな。ピンチに陥っているのが自分ではなく、大切な人に置き換えて考えろ。何があっても生きていてほしいと願うだろう? それと同じだ。自分のことを待つ人がいる。理由はなんでもいい。泥水をすすってでも生きるんだ」


 高位ランクの冒険者としての言葉は重たい。


 「貴族にとって名誉を守ることは大切なことだということも分かる。だが名誉を守るためにと死を選ぶな。生きていれば名誉はいくらでも挽回することができる」


 前世も今も平民な私には名誉なんてたいそうなものは意識してないので正直よくわかんない。


 「騎士や貴族は引いてはならないときもある。だが冒険者はそうじゃない。引くことも立派な戦略の一つだ。全員で生き残ることを最優先させるんだ」


 貴族の令嬢であるエリーとアイリには「家」という大きな看板を背負う一人でもある。

 私も大きなものを背負う時が来たら少しでも分かるようになるのかな。少しでも二人のことを理解したい。


 「人は簡単に死ぬ。本当に、あっけなく死ぬ。死んでしまう。それが例え俺よりずっと強いやつでもだ。この目で何度も見てきた。だから強いだけのやつが高ランクの冒険者にはなれない。生き残り続けた者が高ランクの冒険者になるんだ」


 お父さんの言葉は、多分私が思っている以上にいろんなことを経験してきた言葉だろう。

 二人も息を飲んで真剣に聞いている。


 「と散々脅してしまったわけだが、そうそう命の危機になることは無いけどな。心の片隅に置いといていい。だが、時々でいいから思い出してくれ」


 「「「はい!」」」


 外壁の外に行くときの心構えは面白く、とてもためになる。




次回更新は3/18(日) 19:00の予定です。

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