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ネコミミ娘に転生したので楽しく気ままに生きたい  作者: 星川 咲季
■第1章 異世界の日常編(3歳)
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第8話 静かにめっちゃ怒られた

調子に乗って自重しなかったフランが叱られるお話です。

 宝箱(ドレッサー)のアイテム確認は終わった。

 私の知的好奇心は満たされた。

 でも、まだクローゼットが残ってる。

 次のターゲットはクローゼット、君に決めた!


 お母さんに秘密の衣装はあるのかな?

 んふふん、私、気になりますっ!

 私はクローゼットに目を向け、移動しようと一歩を踏み出した。


 その瞬間――



 「フラン、ただいま」



 びびくぅっ!



 私は背後から声をかけられた。とても聞きなれた声だ。

 でも、獣人故か分からないが、前世で感じなかったような気配というかプレッシャーらしきものを背後から半端なく感じる。

 マンガで効果音が出るようなシーンってこんな感じなのかなと思わず現実逃避したくて場違いのことを考えてしまう。


 「あ、お、お母さん、お帰りなさい」


 ぎぎぎっと音がするようなぎこちなさで振り返ると、お母さんはにっこり笑顔だった。

 ただし仁王立ちだ。

 知ってる。

 こういう時の笑顔は笑顔じゃない。


 しっぽを左右に大きく振ってる。

 こんな振り方のお母さんを初めて見たけど、本能的にこの振り方はヤバい感じだと分かる。

 思わず自分のしっぽが右足に巻き付いた。



 「お留守番はちゃんとできたようね?」



 自分の状況を思い返す。

 周りはドレッサーの中身をひっくり返したような状況だ。

 いや「ような」じゃない。ひっくり返したままだ。

 そしてその犯人は私だ。

 ヤバい!

 後片付けする前にお母さんが帰ってきた!

 思った以上にアクセサリーのファッションショーで時間たってた!?


 「うん、ちゃんと、できたよ? 誰も、来なかった、よ?」


 思いっきりしどろもどろになりながらどうにか答えれた。

 体が鉛のように重たく動かなくなるように感じる。


 「そう、ところでフランは何をしてるのかしら?」 


 分かってた、絶対に言われるのは分かってた。

 そして今言われた時に心臓が跳ね上がる音が聞こえた。


 「えっとね、えへへ」


 「そんな可愛く耳を動かしながらとぼけても誤魔化されないわよ?」


 「あうぅ……」


 あ、ダメだ、怒ってる。相当怒ってる。

 すごく大事なものがあったのかな。

 ど、どうしよう。


 「こういう時は……」


 え、なんでそこで溜めるの?

 嫌われちゃったかな。怖いよ。

 自分でも何だか分かんなくなるほどすごく怖い!

 怖い、怖い、怖い……!

 どうしよう、どうしよう、どうしよう……!


 「こういう時はどう言えばいいか分かるわね?」


 「ううぅ、ごめんなさい、お母さんの物を勝手にいじって、ごめんなさい……」


 そう言うと、途端にプレッシャーのようなものがふっと消えたように感じた。

 思わず目の前が滲んできた。


 「ちゃんと謝れて偉いわ。そうよ、悪いことしたらちゃんと謝らなきゃいけないわね。ほらほら、そんな涙を浮かべないの。私と一緒に片付けしましょう?」


 「うん……。お母さんの大事な物だよね。元の通りにきれいに片付けるね」


 「ええ、丁寧にお願いね。お父さんが帰ってきた時にお昼ごはんできてないと、お父さんお腹すいちゃうし、頑張って早く片付けしましょうね」


 「! ……うん!」


 最後にギュッとハグしてくれた。良かった。許してくれた。私の中に暖かさが戻った。

 私もギュッとハグして元気いっぱいに答える。

 散らかしたものを丁寧に、でもできる限り早く片付けた。




 それにしても、声を掛けられるまで全く気付かなかった。

 3歳児の小さなネコミミといえども、前世の人間の耳と比べて高性能。小さい音もばっちりだ。

 そのはずなのに、いくらファッションショーに夢中になってたといっても、近くに来たらそれなりに音がするはずだし気づくと思うんだけどなぁ。

 不思議だ。

 ちなみにこうやって考えていられうのは、お片付けが全部終わって少し余裕ができたからだ。


 それにしても笑顔で怒ったお母さん、めっちゃ怖かった。

 しっぽをあんな風にぶんぶん左右に振ってるお母さん初めて見た。

 記憶の限り、決して怒鳴ったり手を上げたりしたことないけど、怒ったときは、こう、オーラみたいな? 絶対に逆らえないような凄みがあるんだよね。

 でも今日のは別格だった。死ぬほど怖かった。粗相するところだった。

 足がすくみ体が動かなくなり何も考えられなくなるレベルだった。

 絶対お母さんのドレッサーに手を出してはいけないことを私は学んだ。


 いつも優しく丁寧で、ちゃんと良し悪しを教えてくれるし、とても私を大事にしてくれるし、悪いことしたらしっかり何に対して悪いことをしたのか理解させるように怒る、そんなお母さんは私にとって理想の聖母にしか思えない。

 そんなお母さんだから、子どもがちょっといたずらした程度、と自分で言うのもなんだけど、それで私を嫌うわけがなく大丈夫と分かっていても、不安は不安だ。

 私のこの体は不安に対して敏感に反応するのかもしれない。

 でもハグされると不安が一気に氷解し心底安心する。

 お母さんはアフターケアも完璧だ。



 中身が大人といっても、思い返せばどう見ても子どもな行動をしまくりなあたり、肉体年齢に引きずられているのは間違いない。

 そう思いたい。気を付けよう。

 それにお母さんのドレッサーに手を出さないよう気を付けよう。

 大事なことなので2度思うくらい気を付けよう。



 こうして午前の冒険は終わった。


マリアンナ(母親)はこっそりフランの様子を見ようと思い帰ってきてみたら、フランが夫からプレゼントされた大切なお気に入りのアクセサリーをおもちゃにしてたため、思わず怒ってしまいました。

意図せず威圧スキルが発動するくらい。フランはこの威圧に当てられ恐慌状態になります。

我に返ったマリアンナはやり過ぎたことに気づき、なんとかフォローして無事解決。

そんな裏設定があったりします。


次回更新は10/1 22:00の予定です。

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