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ネコミミ娘に転生したので楽しく気ままに生きたい  作者: 星川 咲季
■第5章 冒険者活動と日常編(8歳)
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第86話 冒険者のギルドカード


 ようやく私たちの番がきた。


 「おはよう、フランちゃん。おはようございます、お嬢様がた」


 受付嬢のサラさんはにっこり微笑んで丁寧に挨拶をしてくれた。

 私たちも挨拶を返す。


 「サラさん、おはよう!」


 「おはようございます、ですわ」


 「おはようございます」


 サラさんはいつもより真面目に、だけどフランクな感じで自己紹介をしてきた。


 「初めまして。私は王都冒険者ギルドの受付嬢サンドラ・シャーウッド。気軽にサラって呼んでね」


 「初めまして、サンドラ様。アタシはアイリーン。ムーンライト男爵家が長女、アイリーン・ムーンライトです」


 アイリは若干緊張した様子で、でも手慣れた感じで丁寧にカーテシーを交えて挨拶を返した。

 でもサラさんにはちょっと不服だったようだ。

 っていうか、サラさんのファミリーネーム初めて知った。

 エリーとアイリが貴族だと察してフルネームで名乗ったのかな?


 「ご丁寧にありがとう、アイリーン様。でも、今の私はただの受付嬢だからそんなに畏まる必要はないわよ。ほらほら、もっと力抜いて。いつも通りにしないと他の冒険者や依頼者が私のところに来にくくなっちゃうわ」


 「えっと、分かりま……分かったわ。サラさん、よろしくね」


 「はい、よろしくお願いしますね!」


 サラさんのコミュ力はすごい。

 私が関係したことだと、とたんに残念になるのを除けば、ホントすごい人なんだけどなぁ。


 「では次は(わたくし)が。(わたくし)はエリザベス・ファーレンハイト。ファーレンハイト公爵家の長女ですわ。(わたくし)はこの話し方がいつも通りですの。ご容赦くださいまし」


 エリーは優雅に挨拶をカーテシーと共に返す。

 いつも通りスタイリッシュでカッコいい。


 「はい! エリザベス様、よろしくお願いしますね!」


 様付けはしてるが、相手が公爵令嬢だとしても変に態度は変えないみたいだ。


 サラさんすごいなぁと思ってみてると、三人はなぜか私をチラ見して微笑みながら頷きあう。謎の連帯感だ。


 や、なんとなく分かるよ?

 自分で言うのもなんだけど、可愛いネコミミ娘を愛でたくなる気持ちは。前世で私も好きだったし。

 でも自分が当事者になると結構困惑するから。

 っていうか恥ずかしいから!

 むぁー!



 「こほん、満ち足りたので話を進めましょう。さっきの話を聞いてたから分かってるけど、決まりだから確認するわね。今日はどんな用事かしら?」


 いや「満ち足りた」じゃないよサラさん。

 それは「萌える」と言うことよ、じゃないよアイリ。

 余計な知識をサラさんに与えないで。

 マジでサラさんの病気が進行しちゃうから。


 なんで自己紹介の後もこんな大変なの?

 先に進む度に心の中でつっこまなきゃいけなくなるの?


 「(わたくし)たちは冒険者になりにきたのですわ。サラさん、登録の受付をお願いしますわ」


 「承りました。冒険者ギルドとしての決まり事や注意事項について説明を聞きますか?」


 「ええ、お願いしますわ」


 あらかじめ私は二人にこの説明をしているけど、ちゃんと職員から話を聞くことは大事だよね。

 ちなみに普通は仮ギルド証を発行してもらい、誰でもできる規定数の依頼をこなして初めて正式なギルド証、つまりギルドカードをもらえる。例外的に身分が保証されていたり、何らかの実績がある場合は最初からギルド証を発行してもらえる。

 今回、エリーとアイリは貴族の令嬢だし、私はギルドでアルバイトの実績があるので、その例外が適用されるのだ。




 「ランクの呼び方は慣れないわね」


 説明が終わったあと、アイリは相変わらずランクのことについて呟いていた。

 気持ちは分かるよ。

 でもこの世界にはローマ字ないから仕方ないね。


 「ね、ねえ、やっぱりギルドカードには自分のレベルとかスキルとかステータスが表示されたりなんてしないのよね? ギルドカードに血を垂らすと自分用のカードになったりしないのよね?」


 サラさんが私たち用のカードを用意してくれてる間、アイリが聞いてきた。


 「そんなすごいカードなんてないよ。もしそんなすごい魔道具なカードがあったとしても、高すぎて配布なんてできないんじゃない?」


 「そうですわ。魔道具についてはアイリが一番分かってるのではなくて?」


 「そ、その通りだけど、こういうのはテンプレ(お約束)なのよ」


 スキルって概念はお母さんから魔法を習ってるときに何度も出てきてるから一般的だと思う。

 一方、ゲーム的な意味で使われるレベルやステータスなんて言葉はギルドにいても聞いたことがない。

 じゃあなんでエリーはレベルやステータスなんて概念が分かるのかと言うと、お茶会のおしゃべりでアイリがゲームにありそうなシステム的な話をうまいことぼかしながら話したことがあるからだ。

 そんなふわふわした内容でも理解できるエリーはすごいと思う。

 だいたい数値で表せたとしても何を基準として誰がその数値を決めたのか謎だし。


 「はい、登録しました。カードを渡すわね。鉄ランク(Gランク)よ。無くすと再発行に銅貨5枚必要になるから注意してね」


 私たちはサラさんからカードを受け取ってお礼を言う。


 「あら、思ったより軽いですわね」


 「そうね。鉄板かと思ったら木の板に羊皮紙を貼ったものなのね」


 「そりゃ私たちみたいな子どもも冒険者になるし、鉄板じゃ重たいし錆びて大変だよ」


 「あー、なるほど。言われてみればそうかも。再発行に銅貨5枚は……材料費や加工費を考えたら仕方ないわね」


 銅貨5枚はだいたい5000円分相当。

 子どもの冒険者には大金なので、自然とみんな扱いにはとても丁寧になる。


 「ステータスオープン」


 「なんですの? それは」


 「や、何でもないわ。何となく言ってみたかっただけよ」


 アイリ、やっぱり試したかったんだ……。



 「お嬢様がたー、まだ終わってないわよー」


 ついつい話し込んじゃったところをサラさんに注意されてしまった。


 「失礼しましたわ。続けてくださいまし」


 「ええ。ギルドの基本的な決まりはさっき説明したけど、決まりについてはロビーの棚に手引きがあるわよ。失礼だけど、文字は読めるかしら?」


 「(わたくし)たちなら大丈夫ですわ」


 サラさんは私が文字を読めるってことは知ってる。

 でも、平民の私が読めるのに貴族のエリーやアイリが読めないとなると外聞が悪いので、あえて私のことを引き合いに出さなかったんだろう。


 「すごいわね。普通、エリザベス様たちくらいの年齢で文字を読める人はいないわよ。貴女たちと同い年くらいの第三王子殿下でもまだできないんじゃないかしら?」


 え?

 王子様?

 突然気になるキーワードが飛び出てきた。






次回更新は3/3(土) 19:00の予定です。

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