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ネコミミ娘に転生したので楽しく気ままに生きたい  作者: 星川 咲季
■第4章 それぞれ思ってること編(6~7歳)
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第80話 アイリーンは転生チートがしたい


 アタシはアイリーン・ムーンライト。

 ムーンライト男爵家の長女よ。


 アタシは何年か前に突然高熱で倒れ、生死をさまよったらしいわ。

 その後、無事に回復したのはいいんだけど、それ以来なぜか知らないはずの知識を知ってた、ということが何度か起こったの。


 そしてアタシは気づいた。

 アタシは転生者だと。


 アタシには断片的だけど前世の記憶と言うものがあったわ。

 断片的だと分かったのは、前世のアタシの名前や両親の名前だけじゃなく、容姿がなぜか全く思い出せないから。


 だからというわけじゃないけど、前のアタシと前世のアタシのどっちの人格がメインという訳じゃなく両方とも混ざりあった今のアタシがアタシなのよね。

 ま、精神的に急成長したのと人生の経験値の違いで前世のアタシの方が色濃いかも知れないけど。


 多分自分以外のことも所々で抜けてるんだとは思うけど、「忘れた記憶・抜け落ちた記憶は何か」なんてことは分からないしね。

 必要なことを思い出そうとして初めて「あ、この記憶がない」って連続した前後の記憶で分かるのよ。


 まあ前世の記憶のせいでアイデンティティーが崩壊して頭おかしくなる、なんてことにならなくて本当に良かったわ。

 お父様やお母様を愛してることが変わってしまったら嫌だもの。



 そんなわけでアタシは幸運にも第二の人生を謳歌することができてるのよね。

 しかも下級とは言え貴族として。

 神様には本当に感謝しかないわ。


 ちなみに神様に会って転生特典やチートをいただいた、なんて記憶はないわよ。

 でも部分的とは言え、遥かに進んだ文明の現代知識があるということと、何より人生の経験値があると言うこと自体が既にチートよね。



 アタシは前世では世に言うオタクと言われてた人種。割りと色んなサブカルチャーに手を出していたわ。

 そんなわけで、剣と魔法のあるこの世界はまさしくアタシの大好きな世界!


 当然、アタシはロマン溢れる魔法を使いたい!

 と思って幼いながらに必死に勉強したわ。

 まずは文字を覚えた。文字が読めなきゃ何を学ぶにも話にならないしね。


 そしてある程度文字が読めるようになった頃、ようやく魔法について調べてみたんだけど、魔法は適性がないと無理だと言うことが分かったのよ。

 家族や使用人に聞いても誰も魔法を使える人なんていない。


 そんなわけで、魔法適性があるかどうかはを知るには魔力を感じとる力があるかどうか、と言うことらしいんだけど、魔力なんてどうやって感じればいいのかさっぱり。

 この時点で独学で魔法を学ぶのが頓挫。



 じゃあ次に魔術はどうかというと、結論から言うと使えたわ。

 でも、正直コレジャナイ感がすごいのよね。


 貴族には代々伝わる魔術というのがあるんだけど、ムーンライト家に伝わる魔術は金属を柔らかくする魔術。

 何でも、ムーンライト家の初代は300年ほど前にこの魔術で敵の盾や武器を柔らかくして切り裂き、武勲を上げて貴族になったらしいわ。

 下級貴族とはいえ、ムーンライト家って意外と歴史のある由緒正しい家なのね。


 とりあえずお父様からその魔術を習ってみた。

 中二ワードを並べて魔素を魔力に変換し、ロッドの先に魔力を集中すれば発動する、らしい。


 アタシはどうやって魔素を魔力に変換するのかさっぱり分からないけど、とりあえず中二ワードを恥ずかしさに耐えて詠唱。その時、力んでたらできた。

 代々伝わるだけあって、この魔術はムーンライト家の一族に敷居が低いのかもしれない。

 結局魔術が発動しても魔力の感覚はよく分かんないけど、できればなんだっていいのよ。

 ちなみにこの魔術以外は全く発動しなかった。

 アタシたちの血が金属ふにゃふにゃ魔術(アタシ命名)と相性が良いのかも?


 ただ連続して魔術を使うとかなり脱力し、とにかくやる気がなくなる。

 これって世に言うMP切れよね。

 当然やる気がなくなればベッドに潜り込むのは言うまでもないわ。


 で、魔術で金属が柔らかくなると言っても、バターのように切れるわけではなかったのよね。

 細い金属なら幼女の力でも頑張って曲げることができる程度だ。

 これでどうするのよ。

 正直ビミョー。


 そんなわけでMP切れの症状というデメリットがあることと、金属ふにゃふにゃ魔術の微妙さにがっかりしたので、魔術を学ぶのはここで一区切り。



 じゃあ次に何をしようかと言ったら内政チート。

 お金儲けして札束で左うちわよ!

 この国にお札はないけど。


 さーて、それじゃあやってみようかしらと我が家のことを調べてみたら、無情にも男爵家に内政チートできるような広さの領地なんて無いのよね。

 あるのは農家数件と商業区の僅かな一区画。弱小貴族もいいとこな気がする。


 そして子どものアタシがどんな経営をしてるのか話を聞いても所詮は子ども。お父様は分かりやすく説明してくれるけど具体的な話はほとんど教えてくれないのよね。アイリにはまだ早いって言って。

 仕方ないので輪作とかやったら生産力向上するかもと、それとなく話してみたけど軽く流されてしまった。

 あとは簿記でもあれば違うんでしょうけど、そんなの知らないし。


 まともに相手にされないので内政チートは儚く消えたわ。

 ……そもそも内政チートできそうな知識はほとんどないから良かったのかも。



 他に何かできそうなことと言えば、マヨネーズ!


 あれはたしか植物油、卵黄、塩、お酢、レモンの5つだったわよね。

 うろ覚えだけど、この知識が残ってたのはありがたいわ。

 特許をとれば一生安泰よ!


 ここまではよかったのよ。


 早速料理長から若い料理人を借りてチャレンジしたものの、まず配合量が分からず全然できないのよね。

 どうにかそれっぽく見えるようになったので何度か味見したけどこれもダメ。

 挙げ句の果てには料理人と二人して食中毒。二度目の人生が終わると思ったわ。


 数日寝込んでようやく回復したけど、数年前に高熱で生死をさまよった時のようにまた両親を泣かせてしまった。


 それと料理長に絶対に卵を生で使ってはいけないと激おこなお説教をもらった。

 若い料理人の彼は責任とって辞めると言い出したのでアタシは全力で引き留めたわ。

 彼はアタシの命令通りにやっただけだから、責任はすべてアタシだもの。


 で、怒られたときに時初めて気づいたわ。

 あれって多分サルモネラ菌による食中毒よね……。


 前世で読んだ小説では簡単にマヨネーズを作ってたけど、現実は非情よね。

 火を通さず生卵のまま使う料理は全滅だと思うわ。無理よ、無理。

 食中毒甘く見てるとマジで死ぬ目にあうわ。


 前世の日本では、消費期限が過ぎてなければ生卵の食中毒なんて気にしたこと無かったのよね。

 そう考えたら日本の卵農家さん、安全管理を徹底してて本当に尊敬するわ。


 この事件以降、アタシは料理に手を出すことを固く禁止された。

 ああ、唐揚げが……。



 こうして食品チートの夢は砕け散ったわ。







食の安全、超大事。

中世ヨーロッパっぽい時代の異世界の衛生面は日本と同じ感覚だと危険だと思います(^^;)


次回更新は2/10(土) 19:00の予定です。

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