第79話 マリアンナの独白3 - ペット爆誕
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必死に食い下がるフランに、ついには私とケインは根負けして好きにさせることにしたわ。
ただし、少しでもフランを襲うような素振りを見せたら、有無を言わさず討伐するという条件付きだけど。
ケインが真剣な表情でフランに注意を促す。
「いいか、フラン。絶対に油断しちゃダメだぞ」
「う、うん、分かってるよ」
そういえばフランはケインのこの表情を見たのは初めてだったわね。驚くのも無理はないわ。
冒険者時代で戦いに備えるときによく見たけど、このケインってカッコいいのよね。
フランはお手洗いに近づいていく。
ケインはいつでも飛び出せるように短剣を持ち準備している。
念のため私も短剣を持ち、いつでもフランを庇えるように準備する。
「スラちゃん」
お手洗いの中から出てきてしまったスライムにフランは声をかける。
(ぷるぷる)
フランの声に反応するようにスライムがぷるぷるする。
「スラちゃん、私の言ってることが分かる?」
(ぷるぷる、ぷるぷる)
私は心底驚いた。
まさかフランの言葉が分かるっていうの?
たまたまよね?
「スラちゃん、大事な話があるの」
(ぷる)
たまたま、ぷるぷるしてるのよね?
「スラちゃん、スラちゃんの見た目って変わっちゃったよね。でね、今のスラちゃんはね、私たちの言うこと聞いていい子にしてないと、この家にいちゃいけないんだって」
(ぷるぷる)
ちょっと待って。
このスライム器用に頷いてる、ように見えるわよ。
「スラちゃん、いい子にできる?」
(ぷるぷる、ぽよんぽよん)
もうこれ絶対言葉分かってるわよね。
「じゃあ約束してくれるなら、丸して。あと握手できる?」
フラン、いくらなんでもそれはムチャぶりじゃ?
(ぷるん、にょろー)
え、なにこれ。
器用に体の一部からこぶのような丸いのを出してるんだけど。
あと、ちょっとだけにょろんと伸びる体の一部が、まるで指みたいなんだけど、どういうこと?
あ、フランはスライムの伸ばしたところを摘まんで握手っぽくしてるわ。
「お父さん! お母さん! スラちゃん、ちゃんと言うこと聞いてくれるよ! 大丈夫だよ!」
そんなわけあるか。
そんなわけあるか。
心の中だけど、思わず二度つっこんじゃったわよ。
これでもそこそこ冒険者時代は長いし色んな所を見て回ったけど、スライムとコミュニケーションを取れたことがあるなんて聞いたことがないわ。
テイマーって職業はあるけど、あれは相手が獣型の魔物だからできるものであって、そもそもスライムは言葉を分かるような知能があるの?
聡いフランによって名前を得て進化したことで知能を得た?
分からない。
全然分からないけど、なんだかもういいわ。
だってフランだし。
その後のことなんだけど、スライム、って言うとフランが怒るわね。
スラちゃんは私たちが話しかけると言葉を理解しているのか反応を返してくれたし、敵意は全く無かったわ。
魔物がここまで従順で大人しく言うことを聞いてくれるなんていまだに信じられないけど、スラちゃんはもうそういうものだと思わないとやってられないわね……。
大きさは今までケインのこぶし大くらいのサイズが、今は一回り大きく枕くらいのサイズになったわ。
元が生活用のスライムだから、進化した今のスラちゃんでも一般的なスライム程度のサイズなのよね。
スラちゃん自体は明らかに普通のスライムとは違いとても綺麗。濁ってない感じで。
見た目は半透明だけど色の濃度を変えられるみたい。
ただ、透明にすると魔物のコアである魔石が丸見えになっちゃうから透明にはあまりなりたくないようね。
フランが色々とスラちゃんに話しかけてた時の反応から察するに。
ちなみに手触りはつやつやしてて案外良かったのよね。
もちろん事前に溶かして吸収していいもの悪いものは教えないといけなかったけど、ちゃんと言いつけ通り衣服を溶かされるようなことは無かったわ。手は最初から溶かされることはなかったわ。
ただ、もともとお手洗いの中に住んでたということが気になるわね。
溶かして吸収するからきっと汚いなんてことはないでしょうけど。多分……。
あぁやっぱり念のため後で洗っておきましょう。うん。
あと、フランにはスラちゃんのお世話するように言っておかなきゃ。
この子が言うこと聞かせるって言うんだし、最後まで面倒見させるのが教育よね。
最初のペット(?)がスライムとか意味不明すぎるけど。
こうしてフランのやることを放っておいた結果、我が家には新たにスラちゃんという魔物のペット(?)が増えたわ。
次回更新は2/7(水) 19:00の予定です。




