第71話 アイリのお土産
私たちはエリーからのクッキーと紅茶をしばらく楽しんだ。
少ししてアイリがカバンを取りだすとタイミングよく切り出してきた。
「じゃ、次はアタシの番ね。この前はエリーもフランもアタシのお店に来てくれたのに、アタシのアクセサリーを見せてあげられなかったわよね。と言うことで、今日はいくつか持ってきたわ」
「え!? ホント!?」
「まあ、楽しみですわ」
アイリのアクセサリーは売れ切れだったし、ちょっとした騒ぎになってしまったので結局見れなかったので正直嬉しい。
「じゃじゃーん!」
そう言うとアイリは鞄からネックレスやピアスを取り出した。
ちなみにそのまま入ってるのではなく、一つ一つが小さな布の袋に小分けされてる。
「まあっ! 素敵なデザインですわ!」
「わぁー!」
アクセサリーはシンプルなデザインだけど、前世にあったような現代的なデザインのものだ。
今は中世ヨーロッパっぽい時代だから現代的って表現でいいのか知らないけど、とにかく私の感覚では現代的なデザインだ。
ネックレスのデザインは形はハートマークだったり、十字架だったり、メビウスリングだったり、細工のついた輪だったり。
ピアスのデザインはシンプルに小ぶりな宝石が一つついてたり、リング状だったり、星型だったり、雫の形をしてたり。ただ、ピアスは数自体が少ない。
ん?
なんか摂氏4度とかでありそうなデザインのもある?
それと、GとCの組み合わせた形や、逆向きのCとCの組み合わせた形のものまである。
……違う世界だから著作権はもう関係ないね。
でも、これよりもアイリのオリジナルと思われるやつの方がずっと素敵に見える。
「もっといろんなアクセサリーを作りたいんだけど、今のアタシの腕じゃまだまだこれくらいが限界なのよね」
「そんなことないよ、すごいよアイリ!」
「でしょでしょ! 天才アイリーン様はまだまだ発展途中だから、今後も期待しててね」
「ええ、とても楽しみにしてますわ」
それにしてもちょっと気になったのが、ピアスはあるけど、付けてる人をほとんどいたことが無い気がした。
「そういえば、ピアスってあんまり人気が無いの?」
「フラン、ピアスは貴族の夫婦が付けるものですわ」
「え? そうなの?」
「そうなのよ。お父様とお母さまが付けてるから普通のことかと思ったらそうじゃないのよね。だから作ったはいいものの売れないのよね~」
どうやら結婚指輪のようにピアスは意味のあるものらしい。
そりゃ魔道具でもなければ売れないか。
「ま、それはともかくとして試作品とかもあるけど、エリーもフランも気に入ったのがあれば持っていってね。あ、分かってると思うけど、ピアスはダメよ」
アイリ太っ腹!
大好き!
「まあ、ではこの捻れた輪のものをいただきますわ。アイリ、ありがとう」
「アイリありがとね! 私、初めての自分のアクセサリーが友達からもらったのってすごく嬉しい!」
「喜んでもらえて良かったわ」
「えーっと、じゃあ私はこのシンプルなリングのネックレスかな」
んふふん、帰ったらお父さんとお母さんに自慢しちゃおう。
それに冒険者ギルドで受付嬢のサラさんや資料室の司書ミィさんにも自慢しちゃおう。
「でも、こんな高そうなもの、ホントにもらっていいの?」
ただでもらっちゃうってなんか少し悪い気がしちゃう。
「いいのいいの。その代わり誰かに聞かれたら私のお店【月の明かり】の宣伝してもらえると嬉しいわ」
「うん、分かった! ばんばん宣伝するね!」
「もちろんですわ」
ただでもらうのは心苦しいけど宣伝するなら大丈夫だ。私は冒険者ギルドにいるからいろんな人の目に留まる。裕福そうなおばさまも依頼に来るしその時にお勧めしちゃおう。
私は話題のアクセサリーがもらえて嬉しい。アイリはお店の知名度が上がり、アクセサリーが売れて嬉しい。Win-Winの関係だ。
アイリは意外と商魂たくましいと思う。
「それにしても、アイリみたいに貴族でも自分でなんか作ったりするものなの?」
「ううん、多分あんまりいないんじゃないかしら? アタシは楽しいから作りたくて作ってるだけだし。ま、好きにやってることで稼げるならそれに越したことはないわ」
「素晴らしいですわ。少なくとも私にはアイリのような特技は無いもの」
「何言ってるのよ。エリーはその年でもう立派な貴族のお手本じゃないの。アタシは貴族らしく振る舞うのは苦手なのよね。アタシもエリーみたいにできればなぁ」
「二人ともすごいよ。私は魔法が使えるけど、エリーみたいにすごくないし、アイリみたいにアクセサリー作れるわけじゃないし……」
うーん、二人がすごくて私だけ置いていかれてる感がする。
今の人生を楽しく気ままに過ごそうと思ってるから、本当に好きなことしかしてきてないし。
次回更新は1/20(土) 19:00の予定です。




