第67話 文通
私はエリーからのお茶会のお誘いの返事を出すと、翌々日の木曜にエリーからの手紙が届いた。
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フランシェスカ様
初夏の朝日がとても気持ちいいですわね。
早速のお返事ありがとう存じますわ。フランシェスカ様ならきっとご参加いただけると思っていても、正直不安でしたの。とても嬉しいですわ。
もちろんアイリーン様もご参加のお返事をいただきましたわ。先日はフランシェスカ様のことが心配でアイリーン様にはきつく言ってしまったのですが、本当は彼女とも友達になりたいの。
私だけで頑張ってみますが、もしかしたら協力をお願いするかもしれませんわ。その時はよろしくね。
心配事の件ですが、どちらも問題ありせんわ。普段通りでいいのですわ。
先日アイリーン様と会話していたフランシェスカ様も素敵ですが、私はありのままのフランシェスカ様が好きなのです。
当日はフランシェスカ様の家に迎えを出しますので、お乗りくださいまし。
ではごきげんよう。
追伸
フランシェスカ様の想像通り、とても驚きましたわ。
直筆のお手紙をもらえるとは思ってなかったので、お返事をいただけてとても嬉しいですわ。
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心配事はとりあえずクリアだ。
貴族二人のところに平民の街娘スタイルの私が並ぶとか心配だけど、変におどおどすると余計に目立ちそうだし、そもそもお茶会参加者は私たち3人だけだし、開き直って堂々としてよう。
服装はどうにもならないけど、幸いにも私はお母さん譲りの容姿がある。
容姿についてなら二人に見劣りすることは全くないので安心だ。
自惚れるつもりはないけど、結構自信はあるし。
それにしても、迎えを出すので乗ってって馬車でもくるのかな?
住所を言った覚えはないし、そもそもちゃんとした住所があるのか知らないし。
……気になるけど深く考えるのはやめとこう。
ともかく私は返事を書いた。
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エリーへ
こんにちは、フランだよ。お返事ありがとね。
アイリも来てくれるんだね。アイリはいい子だからエリーもきっとすぐに好きになるよ!
アイリもエリーのことは気になってるみたいだし、すぐに友達になれると思うよ。もちろん、手助けが必要だったら言ってね! 協力するよ!
心配事についてもお返事ありがとね。
そういってもらえて良かった。ありのままの私ってどんな私なのかよく分かんないけど、いつも通りにするね。
ありのままと言えば、私もありのままのエリーが大好きだよ。いろいろと伝えたいけどお手紙じゃ書ききれないからお茶会のときに絶対に聞いてね!
じゃあまた来週の土曜日に会おうね!
フランより
追伸
ドッキリ大成功!
文字が書けて良かった!
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なんかとりとめのない感じがするけど、こんな感じでいいかな。
お父さんとお母さんは私の好きにやっていいって言ってくれたし、もう手紙を出しちゃおう。
……考えたらどうやって手紙を届けてもらえるんだろう。エリーの家の住所なんて知らないし。
前回は預ければ回収に来るってあったからついでに渡すようにお願いしたけど、今回は返信用の手紙など回収に来るものは無かったよね。
「フランちゃん、どうしたの? またむぁーとか言いながらくねくねしてるわよ」
私が頭を悩ませてる時に受付嬢のサラさんが声をかけてきた。
「くねくねなんてしてないよっ」
とりあえずいつものように否定しておく。
「えっとね、サラさん。お友達からお手紙をもらったからお返事書いたんだけど、どうやって届ければいいのか分かんなくて困ってるの」
「お友達? ああ、この前お出かけの時に仲良くなったって言ってた子ね。なんかフランちゃん宛の手紙を預かった時、使用人の子が2日後にまた来るって言ってたらしいから前回と同じように預けてくれればいいわよ」
やった、これで届けてもらえる!
使用人の子ってスーさんかな?
まあなんにせよ届けばいいや。
「そうなんだ。良かったー。じゃあこのお手紙をお願いしていいかな?」
「いいわよ」
「はい、預けました」
「はい、預かりました。……フランちゃんの文字って可愛いわね」
ゆ、油断してた!
「恥ずかしいから読んじゃダメ!」
「だだだ、大丈夫よ? さすがに中身を読むようなことはしないわよ?」
「ホントお?」
サラさんの視線がすっごいふらふらしてるし、きょどってるし、この人多分読むよね。まあ読まれて困ることは書いてないからいいんだけどさ。
「そんなことより、手紙の相手が使用人の子が来るような人っていったいどんな子と知り合ったのかしら?」
……露骨に話題を変えてきたけど、追求してもはぐらかされるだけだからもういいや。
仕方ないのでサラさんにエリーの凄さと可愛さを自慢しよう。
「えっとね、エリーっていう子なんだけどね、金髪のドリルなんだよ」
「え? ドリル?」
サラさんの表情にはてなマークが浮かぶ。
「うん、ドリル。しかも二つもあるんだよ」
「ツインドリル」
「目の色は綺麗な緑色なんだけど、迫力のあるつり目で」
「つり目」
「私と同い年だけどとっても大人なんだよ。でもすっごい嬉しいと、おーーほっほっほって高笑いするんだよ!」
「高笑い」
「ね、すっごい可愛いよね!」
「へ? え、ええ、そうね。うん、とっても可愛いわね?」
サラさんは微妙な笑顔で頬をひくつかせている。
「もー、ちゃんと聞いてた? 可愛いところは他にもたくさんあるんだからね?」
まだまだ言い足りないんだよ?
「あ、フランちゃん、そろそろ休憩時間が終わりそうだから行くわね!」
「えー。まあお仕事なら仕方ないか。サラさん、頑張ってね」
サラさんに逃げられた。
まあ今度語ってあげようそうしよう。
フランがサラにした説明が悪くてドン引きな内容に!(笑)
次回更新は1/12(金) 19:00の予定です。




