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ネコミミ娘に転生したので楽しく気ままに生きたい  作者: 星川 咲季
■第3章 二人の友人編(5歳)
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第53話 魔術ギルドの魔術競技

詠唱でもなんでも魔術が発動するって素敵ですよね。


 ギルドの扉からとんがり帽子をかぶったローブ姿の人たちが出てきた。

 続いて私服の老若男女8人も来た。

 いよいよ魔術競技が始まる。


 「それではこれより魔術競技の生活魔術部門を開始します。生活魔術は多少の資質があれば問題なく使えます。魔術は皆様の生活をより楽に豊かに彩りサポートする素晴らしい技術です。それでは協力者の方たちは準備してください」


 職員がメガホン無しでも通る大きな声で説明を終えると、私服の人たちは一直線に横にならんだ。

 彼らの足元には薪が積まれている。一人一セットだ。


 「それではルールを説明します。スタートの合図と共に各位は薪に向かって生活魔術の火種(イグニッション)を使っていただきます。より早く薪に火がついた方が勝者です。使っていい道具はロッドか杖のみです」


 ロッドは菜箸をもう少し太くしたくらいの棒だ。

 一方、杖は結構曖昧で、ロッドと同じ程度のサイズから2メートル近くのまであり、叩くこともできる頑丈な棒だ。

 私はロッドと杖の違いはよく分かってないけど、たぶんこんな感じだと思う。


 「それではスタート!」



 「「「「我は望む。其は魔力の器なり。器に注ぐは小さな火の意思。我が声に応じ現れ出でよ。火種(イグニッション)」」」」



 うわあ! うわあ! 詠唱がなんかめっちゃ中二病だよお!

 生活魔術なのに仰々しい詠唱がいるとかどんだけよ!



 正直に言うと私は前世で中二病を少しだけ、そう、本当にほんの少しだけ患ったことがある。

 だから何だかんだと詠唱の魅力は理解できる。

 でも私は中二病から卒業したのだ。枕に頭を(うず)めて悶えるのは前世だけで充分なのだ。

 12歳になったときに再発しないよう気を付けようそうしよう。

 ちなみに中二的な言動はしてないからね?

 あくまで脳内での妄想だけだよ?

 そんなことして大丈夫なのはアニメや漫画の中だけだからね?


 ……ん?

 って、隣にいるライト君の瞳がきらきら輝いてる!

 しまった! ここに患いそうな人が! 中二病になるのはまだ早いよ!

 邪眼とか魔眼とか腕に闇を封印してるとかそういう道に進んじゃダメだよ!!


 ……


 …………


 詠唱が中二フレーズ全開だったのでついつい興奮しちゃったけど、冷静になって考えたらこの世界ならマジで魔術が発動するから詠唱しても不自然じゃない。大真面目に意味がある行為だ。

 ちょっと反省。

 でも、もし私は魔術を覚えてもメインで使うつもりはないかな。

 この世界で中二病が再発したら卒業できる気がしないし。



 う~ん、それにしても地味な競技だ。

 ライターで火をつけるくらいの火力だから派手さは全くない。

 いや、火打ち石でがっつんがっつんしなくて済むのはかなり助かるのは間違いないんだけどね。

 あれ、綿や紙みたいな燃えやすい火口がないと火花で着火しないし。お父さんはものの10秒くらいで点けちゃうけど。


 そんなこんなで考え事をしてると薪に火が点き始めた。

 勝者は恰幅のいいおばちゃんだ。40秒で支度させそうな顔つきをしてる。

 夫とともに経営してる宿と料理の宣伝をしてる。さすが主婦は強い。


 「どう? 街の人でも普通に魔術を使えるでしょ?」


 「ああ、そうだな。俺でもできそうな気がしてきた。お金がもう少したまったら今度習いに来るよ」


 「ふふふ、ライトも魔術の魅力が分かったみたいね。フランちゃんは楽しかったかしら?」


 「うん、楽しかったよ。みんな真剣にやってて、でも楽しんでたみたいだし、魔術ってすごいんだね」


 「まあね~。フランちゃんは魔法が使えると言っても、獣人だと魔素量がきついかもしれないから、必要に感じたら習うといいわよ」


 「うん、そうするね!」


 私が魔臓持ちであり、普人よりも桁違いに魔素を保有してるということは秘密だ。

 なので今後もこの手の話は愛想よく笑顔で流しておく。


 生活魔術の他の競技はコップに水を注いだり、そよ風を出したり、地面にちょっとした穴をあけたり埋めたりした。

 いずれも手品みたいに派手なアピールは無いけど、何もないところからあれこれ出るのは面白い。

 どの魔術も中二フレーズ満載だったけど。


 「あの穴を開けるやつ、猪の突進の時に使ったら良さそうだな。それに血抜きでも使えそうだ」


 ぽつりとこぼすライト君。

 その発想はなかった。いたずらくらいにしか使えないと思ってたよ。




 「次は戦闘部門です!」


 今度はとんがり帽子とローブといかにも魔術師な人たちが出てきた。


 「本日は炎の魔術による競技です。より正確に素早く的を射貫いた者が勝者です!」


 司会の人がテンションを上げてきている。


 「やっぱ炎ってロマンだよな」


 「なかなか分かってるじゃない。そう、炎の魔術は至高の魔術よ」


 ルビーお姉さん、その手の話題は危険だと思う。

 キノコやタケノコの形をしたチョコのお菓子はどっちがいいって言うのと同じ類いの話題だと思う。

 ほら、すぐそこにいる魔術師に聞こえたのかギロッて睨んでるよ。


 「それではスタートの合図で目標に向かって炎の魔術である火炎の玉(ファイアボール)を放ってください」


 安直なネーミングだけど、分かりやすいって大事だよね。


 「それではスタート!」


 「「「「我は望む。其は魔力の器なり。器に注ぐは溢れんばかりの火炎の魔力。()を穿つは器の火炎。我が声に応じ弓矢の如く現れ出でよ。火炎の玉(ファイアボール)!」」」」「火炎の玉(ファイアボーゥ)


 むぁー!

 どの魔術も中二フレーズは聞いてるだけで恥ずかしい!

 当人たちは至極まじめにやってるだけになおさらヤバい!

 私の心にダイレクトアタックしてくる!

 前世のラケットを使った球技マンガのキャラで心を閉ざす能力とか意味不明って思ってたけど、その偉大さが理解できた!

 今は心を閉ざして無心になりたい!


 「フランちゃん、大丈夫?」


 「火炎の玉(ファイアボール)の魔術を見て興奮してるだけだろ」


 間違ってない。間違ってないけど、ちょっと違う。

 いや、説明する気は無いけどさ。


 「にしても威力はすげーけど詠唱が長いな。冒険者の魔術師にソロを見かけないわけだぜ」


 「そうなのよ。そこが魔術の数少ない欠点なのよね」


 確かにそうだと思うけど、なんか一人発音が面白い人がいたけどそっちが気にならないの?


 そんな風に割とどうでもいいつっこみを心の中でしてる間に競技は終わった。

 勝者は冒険者として活躍できると有用性をアピールしてる。パーティを探してるようだ。


 なるほどね。

 魔術競技って単に見学者を楽しませたり興味を持たせるだけじゃなくって、出場者にもアピールする場になるんだね。

 よく考えられてる。


 観光で魔術ギルドにきてとても楽しかったけど、私にとってはある意味危険な場所だった。

 一人で勝手にダメージを受けてただけなわけだけど。






魔術を使うには詠唱が必要なので、近い将来魔術ギルドによりこの国に中二病が流行るっ!

かもしれません。


次回更新は12/17(日) 22:00の予定です。

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