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ネコミミ娘に転生したので楽しく気ままに生きたい  作者: 星川 咲季
■第3章 二人の友人編(5歳)
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第51話 教会とこの世界の神様


 どれに向かって祈ればいいのかルビーお姉さんがどう説明しようか困ってると、正面から法衣を着たおじいちゃんが声をかけてきた。


 「ほっほっほ、今日は可愛いらしい子が来ましたな。僭越ながら儂がお教えしよう」


 「おじいちゃん、ありがとう。お願いします」


 「あ、神父様、すみません、お手を煩わせて」


 あ、やっぱり神父様だったんだね。

 私はぺこりと頭を下げた。


 「礼儀正しい子じゃな。それにおじいちゃんか。孫のようで嬉しいのう。なに、構いやせん。我らの教会は何人(なんぴと)にも開かれているし、少しでも知ってもらえればの」


 穏やかで優しいおじいちゃんだ。朗らかな笑顔がとても安心感を与えてくれる。


 「この世界には多くの神がいらっしゃる。神々はそれぞれ火水風土の4元素を始めとして氷雷光闇、さらに未分類、未解明、我らが知らないその他の属性など、1柱が1つの属性を司っておられるんじゃ」


 むぁー、思ったよりたくさんいるんだね。

 あれ? いる?

 神様はある(・・)、じゃなくている(・・)の?


 「神様っている(・・)の?」


 「おい、フラン、いくらなんでも失礼だぞ」


 ライト君に怒られてしまった。

 さすがに今の発言はヤバかったかな?


 「こんな小さな子じゃ、知らぬのも当然のこと。気にしておらんよ。質問に対する答えは、確かに神はおられる。この世界に何度も降臨なさっていると書物にも伝えられておるぞ。一番最近では700年ほど前じゃ」


 マジか。

 神様がリアルにいる世界なのか。すごすぎる。

 でも、教会にはそれらしい人物の像や絵がない。


 「神様がいるのに、なんで像や絵がないの?」


 「いい質問じゃな。もちろん多くの者が神のお姿を残そうとしたのじゃが、不思議なことに誰一人としてそのお姿はおろか、お顔すら覚えておらんらしいのじゃ。天変地異すら起こせるとされる圧倒的な魔法の使い手であること、お姿が分からないということ、使命を終えるといつの間にかお隠れになるのは世界共通で伝わっておる。故にせめてもと神が司る属性をシンボルとしておるんじゃよ」


 なるほど、確かにそれなら神様と言われても納得できる。

 でも……


 「神様ってすごいけど、なんかちょっと寂しいね」


 「おや? どうしてそう思うか聞いてもいいかな?」


 「だって誰も顔すら覚えられないってことは、誰も自分のことを覚えてないってことだよね? 誰だか分からなければ、どんなにすごいことをしても、頑張ったね、すごいねって誰にも誉めてもらえないと思うの。私だったらお手伝いを頑張って終わらせた後にお母さんにありがとうって言われたり、ぎゅーってハグしてもらえないのは寂しいなって思うよ」


 そういうと、神父のおじいちゃんはポカンと口を開き、しかし、そのあとすぐに優しい笑顔で目じりに涙を浮かべた。


 「あなたのような心優しい子に想ってもらって神々もさぞ喜んでいると思いますぞ。神に代わってと言うのもおこがましいことじゃが、それでも言わせてほしいんじゃ。ありがとう」


 「ううん、どういたしまして」


 自分のことを神様に当てはめるってずいぶん不敬なことを言ってしまった気がしたけど、好意的に受け止めてもらえてよかった。


 「可愛らしい小さなお嬢さん、よければこれを受け取ってもらえんかの?」


 そういうと神父のおじいちゃんは膝立ちとなり、私の手を取って銀のメダルを乗せた。


 「おじいちゃん、これってお金じゃないよね? これなあに?」


 「これはお守りじゃよ。それと、何か困った時があったらこのメダルを持ってここにいらっしゃい」


 「うん」


 「この小さなお嬢さんを連れてきてくれたお二人にも渡しておこうかの」


 神父のおじいちゃんはルビーお姉さんとライト君にもメダルを手渡していった。


 「神父様、ありがとうございます」


 「ありがとうございます! 俺、嬉しいです!」


 「礼を言うのはこちらの方じゃよ。この年になっても新たな発見は嬉しいものじゃ。子どもの発想は素晴らしいのう。ほっほっほ」


 あった時からずっと思ってたんだけど、なんだかこの笑い方って前世の小さいころ近所でお世話になったおじいちゃんにすごい似てるんだよね。

 そんなおじいちゃんだから、つい馴れ馴れしくなっちゃうのは仕方ない。

 ……でも、前世は大人だったから、子どもの発想って言われて素直に喜べない。


 「して話はもどるが、本日はお祈りをしていくのかな?」


 「うん、お祈りしていくよ。今日は王都観光してて、ルビーお姉さんとライト君に連れてきてもらったの。せっかくだしお祈りしていこうってことにしたの」


 「そうかそうか。さっきはどのシンボルに祈ればいいかと言う話じゃったかな。お祈りは椅子に座って手を組み、自分の信じる神々に祈ればいいんじゃよ」


 「え? そんなでいいの?」


 「もちろんじゃ」


 「俺、祈るとき、単に神様ってしか考えてなかった……」


 「私もよ……」


 何はともあれ、予定通り椅子に座ってお祈りをする。

 私の場合は私を転生させてくれた神様だ。


 前世は過労死という酷い終わり方をした私を憐れんでくださったのか、もう一度新たな人生を歩むチャンスを下さりありがとうございます。

 前世の両親や親友にもう会えず感謝の言葉を伝えることはできないけど、それは記憶を持ったままだから思えること。もしも叶うなら幸せだったという想いが少しでも伝わればと思います。

 そして今は強くてたくましいお父さん、優しく愛に満ちたお母さんの間に生まれたフランシェスカとしてとても幸せに暮らせています。

 本当に、本当にありがとうございます。

 私に使命のようなものは無いけれど、幸せに楽しく生きます。

 ずいぶん自分勝手かもしれないですが、その幸せが神様に対して私のできる信仰と恩返しだと思います。


 私たち3人はお祈りを終えると神父のおじいちゃんに向き直った。


 「おじいちゃん、今日はいろいろと教えてくれてありがとね」


 「ほっほっほ、儂の方こそ良き出会いに感謝しておるぞ。何かの縁じゃ。さっきも言った通り何か困ったことがあったらいつでも訪ねてきなさい」


 「「神父様、ありがとうございます」」


 「おじいちゃん、またね!」


 こうして私たちは1つ目の観光地を後にした。






次回更新は12/13(水) 22:00の予定です。

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