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ネコミミ娘に転生したので楽しく気ままに生きたい  作者: 星川 咲季
■第3章 二人の友人編(5歳)
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第47話 少年冒険者に気に入られた

ちょっと大変な怪我を治すお話です。


 アルバイトを始めて2週目のある日、一人の少年冒険者が私のところにやってきた。


 「な、なあ、この看板にある大きさより小さい傷ならホントに5G(ゴールド)でやってくれるのか?」


 「うん、そうだよ」


 「じゃあ……いつつ、これはいけそうか?」


 少年冒険者は右手で左腕に巻いてある包帯を取ると傷口を見せてきた。



 「っ!」



 思わず息をのんだ。

 前世でこんな怪我を見たら悲鳴を上げただろうけど、この世界は魔物が跋扈するせいか結構どころかかなり酷い怪我をしてギルドに入ってくる冒険者が時々いたりする。だからこれくらいなら何とか冷静でいられる。

 冒険者ギルドは教会の治療院より街道側の外壁に近い位置にあるので、基本的に冒険者たちは冒険者ギルドに来る。

 当然医務室で薬師のドクトル先生と治癒術のナース先生のお世話になる。

 もちろん、この二人だけでは人手が足りないので薬師や治癒術士は何人もいる。医務室の代表者がこの二人なだけだ。


 それにしても、確かにこの怪我は看板にあるサイズよりも小さい。

 でもそれは表面で見えるだけで深さが違う。

 これってたぶん矢傷だよね。

 傷の深さまでは決めてなかったのは失敗だったかも。


 「薬草採取に夢中でうっかり森の奥に行ったらゴブリンに不意を撃たれちまったんだ」


 ゴブリンと言えば異世界ものやゲームではザコ敵として有名だが、資料室にある魔物図鑑を読んだ限りだとこの世界では油断できるほどザコじゃない。

 体は小さく頭はよくないって書いてあるけど、中には剣やこん棒だけでなく命中率は低いけど弓まで使える個体がいたり、場合によっては集団で襲ってくるとも書いてある。

 いや、武器を使える時点でどう考えても頭が良くないってことないでしょ。

 ただ臆病なので誤ってテリトリーに侵入しなければ襲われることはあまりないみたい。

 もっとも相手が女性だった場合はその限りではないらしい。怖すぎる。


 「ポーションは使わないの?」


 この世界では医療技術が未発達な代わりにポーションや回復魔術、回復魔法を中心に発達している。

 ポーションってこれまたゲームっぽい表現だけど、現代医学じゃ考えられない不思議な治療薬だ。


 低級ポーションでも傷口にかければ、動画を高速再生してるようにもりもり回復する。

 どうやらポーションに含まれる魔素が作用して回復を促してるらしい。

 興味本位でポーション使った人の近くに行ったら、私の拙い魔力感知のスキルでも使用者の体内に魔力が発生したのが分かった。

 ただし、一度使うとある程度体内からポーションの成分が抜けないと効果が薄くなり、連続使用できなかったりする。もちろんポーションも体に負担がかかるらしい。


 前世のゲームによってはポーションにクールタイムとかリキャストタイムとかある理由が不思議だったけど、こんな理由であれば納得だ。

 前世の地球で考えた人って、ホントは異世界からの転生者なんじゃないかと思える。


 「情けない話だけど、まだまだ駆け出しの俺には低級ポーションでも高くて手が出しにくいんだよ。そんなわけで、5G(ゴールド)ならダメもとでもって思ったんだ。やってくれないか?」


 そうだった。確かにポーション高いもんね。

 低級でも確か1つ50G(ゴールド)くらいするんだよね。日本円にすると5000円くらい。

 命に直結するのでそれくらいの値段なら冒険者たちは持ってて当たり前かと思うよね。

 でも、使用期限が1か月くらいないうえに日に日に効果が下がっていくから、維持費だけでもかなりの出費になる。

 そんなわけで、ある程度安定して稼げないとポーション常備は厳しいのだ。


 「うん、大丈夫だよ。任せて」


 依頼されたからには、お仕事はしっかりこなしたい。たぶん何とかなる。


 患部は既に腫れてきてる。

 ゴブリンの弓矢ということはすこぶる不衛生なはずだ。殺菌してから回復魔法を使った方が効果は高いはず。

 さっき外した包帯は正直言うと汚いし、まずは患部をきれいにしよう。

 私は手の空いてる職員さんにお願いして桶ときれいな布を用意してもらった。


 「な、なあ、なんで桶が必要なんだ?」


 「傷口をきれいに洗うと治りが良いからだよ。しみると思うけど我慢してね」


 魔法はイメージなら水だって出せるはずだ。

 ということで、水素と酸素がくっつくイメージで試してみたら魔法はちゃんと発動し、思った通りに水が出てきた。

 中学校の勉強ちゃんとしといてよかった。それに心なしか回復魔法より必要魔力量が少なく簡単だ。よしよし。

 ついでなのでちょっとだけオキシドールも混ざるか試してみたらちゃんと出た。魔法マジ便利。

 ちなみにオキシドールを使うと泡が出るのでさっと拭いてバレないようにする。この世界にオキシドールとか絶対ないだろうし。


 「いててててっ! しみる! それともうちょっと丁寧に拭いてくれよ!」


 「男の子なんだから我慢して!」


 私に医療の心得なんてない。丁寧にやってるけどこれ以上は無理。5G(ゴールド)なんだから文句言うな。

 しかし、この少年は頑丈と言うかすごい痛みに強いと思う。いくらゴブリンの矢に返しがついてないからといっても、前世ではこんなことしたら痛みで暴れだしそうな気がするし。


 元通りに戻るあの回復魔法はお母さんから封印するよう言われてるので使えない。

 なのでいつもの通り綺麗に治るキズパワーパ〇ドをイメージして回復魔法だ。


 「おー、すげぇ。痛みが引いてきた。傷口がちゃんと塞がったし」


 「ふぅ、ちょっと傷跡が残っちゃったけど、ちゃんと治ったよね」


 「これくらいなら構わないさ! ありがとな! これですぐに依頼がうけれるぜ!」


 「ダメ! 怪我は治ってるけど流れた血は戻らないし、体に負担がかかるから今日はお休みしなきゃダメ! ゆっくり休んでしっかりごはん食べないと倒れちゃうよ」


 「あ、ああ、分かった。それにしても、ちびっこなのに回復魔法を使えてすげーな」


 「ちびっこじゃない! フランだよ」


 「悪い悪い、俺はライトだ。助かったよ、フラン」


 少年冒険者のライト君はニッと笑顔で右手を差し出してきた。手には鉄貨が5枚握られている。

 私は受け取ろうと手を出すと、手渡しつつ握手してきた。


 「俺、フランのこと気に入ったぜ! 怪我したらまた頼むな!」


 「あ、う、うん。お大事にね?」


 私がポカンとあっけに取られてると、ライト君は耳を赤くしながら笑顔で去っていった。

 美少年に好かれたっぽい気がするけど、10歳くらいじゃ近所の男の子って感じしかないんだよね。

 ま、何とかなってよかった。


 サラさんがじとーってこっちを見てるような気がするけどきっと気のせいだ。




ライトは12歳未満なので、正当防衛以外の魔物討伐は許可されてません。

あと、ライトは不利を悟ってゴブリンから逃走しています。


次回更新は12/5(火) 22:00の予定です。

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