第45話 アルバイトの条件
バイトするために関係者と話を詰めていきます。
★祝★ユニークアクセス10000ですヽ(´▽`)ノ
ギルマスとの面接は無事に終わった。
好きにやっていいと破格な条件だったので、裏があるのかと思わず警戒した。
でもお母さんは私の不利になるようなことがあれば口を出さないはずがないので、大丈夫だろうと思い直した。
さて、アルバイトの許可はもらったものの、回復魔法を使って軽い擦り傷や切り傷程度を治す以外はなんにも決まってない。丸投げもいいところだ。
相談しようにもサブマスはまだギルマスの部屋だ。
ギルマスはお母さんと相談して決めればいいって言ってたし、素直にお母さんに聞いてみよう。
「お母さん、ギルマスは好きにやっていいって言ってたけど、どうすればいいの?」
「まずは医務室の先生たちに相談した方がいいんじゃないかしら?」
ギルドにも医務室はあるので、怪我した冒険者はそこに行く。
「そっか、そうだよね。お母さん、色々お願いしていい? 私じゃ難しくて分かんないの」
「もちろんよ。フランはまだまだ子どもなんだから分からなくて当たり前なのよ」
そんなわけでお母さんと私は医務室に入っていった。
「おや、マリアンナさんにフランちゃんが来るとは珍しいね」
「先生、おはようございます」
「おはよう。怪我や病気、というわけではなさそうだね。今日はどんなご用かな?」
医務室には薬師のドクトル先生に、教会所属のシスターであるナース先生がいる。二人は夫婦だ。
ドクトル先生は渋くてカッコいいおじさんだ。薬師に似合わず鍛えているのか体格がものすごくいい。
ナース先生は偶然なのか前世の看護師な名前だが、れっきとした治癒術士だ。
「娘のフランが回復魔法を使えるようになりまして、回復魔法を役立てたいと言うことでギルマスに話したところ、アルバイトの許可をもらいました。回復対象は軽い擦り傷や切り傷程度ですけど、それ以外は特に決まってないんです。気が向いたときだけでもいいから好きにやっていいと言われてますけど、実務は先生方なので相談に来ました」
「なるほど。獣人で、しかもその歳で回復魔法が使えるとはフランちゃんは素晴らしい才能だね」
「ええ、自慢の娘です」
お母さんはにっこり微笑み、私の方を見る。
お世辞だけど嬉しい反面ちょっと恥ずかしい。
「しかし、好きにやっていいとはまたずいぶんすごい話だね」
「そうなんです。場所や体制、怪我の判断基準はある程度は考えたけど、私だけでは決めきれません」
「ふむ、確かに決めることはいくつもあるね。ではマリアンナさんの考えを聞かせてもらえないかい?」
「ええ、もちろん。私はフランがまだ子どもということ、途中でフランが止めてもいいように、場所は医務室ではなく受付のロビーがいいと思ってます。言い方は悪いけど、先生たちにとってもフランを当てにしない前提の方がいいと思いました。利用者はフランが回復魔法のアルバイトをやってたらラッキーくらいに思われる程度で十分でしょう。また、受付近くなら、万が一でも私たちで対処できます」
「なるほど」
まあそうだろう。
先生に迷惑かけないようにするには、そもそも私を当てにしない仕組みじゃないとって考えだよね。
好きにやったりやらなかったりって、すごい無責任で申し訳ないけど、そう感じるのは中身が大人な私だからであって、5歳児に求められるお手伝いレベルではこの程度が限界だろう。
とはいっても、いくらなんでも好き放題はしないし、週に2、3日くらいはやるつもりだ。
「それと、利用者のターゲットは、わざわざ医務室へ行かなくてもいい程度の軽い怪我だけど、ちょっとでも早めに治しておきたい人が対象です。それが分かるよう、怪我の判断基準は看板を用意すればいいと思います。例えば、怪我の大きさの目安を描いた絵と、それ以上の怪我は医務室を案内する絵を書けば、フランが判断しなくて済むと思います」
「ふむ、それなら私たちとしても安心して任せられるね」
「そう言ってもらえると助かります。最後に料金ですが、こればかりはいくらが適正価格なのか分かりません。軽い怪我限定だから1Gでもいいと思うんですが……」
私としても1Gで全然かまわない。1Gは黒パン1個と同じ値段だ。
薬局で消毒液とバンドエイドをそろえる値段を考えればそんなもんかな?
前世基準だけど。
「そうだねえ、いくら軽い怪我が対象とは言っても、さすがに1Gは安すぎると思うよ。それにその値段が当たり前と思われると後々トラブルになりかねない。ナース、そうだろう?」
「ええ、安すぎるのも問題ね。フランちゃんが大きくなった時に格安で回復魔法を要求する人が現れないとも限らないから安売りはしない方がいいわね。せめて5Gはあった方が無難と思うわ」
「と言うことで、まずは5Gで様子を見るのがいいかもしれないね。私はマリアンナさんの方針と値段が5Gで特に問題は無いよ」
「ありがとうござます。ではこの案でサブマスに相談の上、決めますね」
「ああ、構わないよ」
「私もそれで問題ないわ」
……今更ながらだけど、結構いろんな人に迷惑をかけてしまってる気がする。
売り上げの一部はギルドに入れるつもりだから、それで良しとしてもらえればいいんだけど。
その後、サブマスに相談した。
さっき話した内容で許可が降り、私のアルバイト内容が決まった。
5歳児がアルバイトとか前世の日本であったら経営者は逮捕されるだろうし世も末な感じだ。
でもこの世界には労働基準法なんて無いし、そもそも子どもが働くのが普通だ。
もっとも、ギルドでクエストボードに張り出される依頼に対し、小さな子どもができるのはお手伝いのような超簡単なものしかないけど。庭掃除とか。
今世は体力に優れる獣人とはいっても、前世のように馬車馬のごとく仕事をするつもりは絶対にない。
頑張った結果が当たり前となり、その当たり前からさらに頑張って結果を求められ続けられ、その果てに過労死となったことが未だに私の心に深い傷として残っている。
頑張りすぎるからいけないじゃん、っていう考えもその通りだと思うけど、頑張らなければ後が無いというのは想像以上に思考や行動が制限されるのだ。
だから今世こそ私は楽しく気ままに暮らし、趣味の旅行をしてみたい。
そしてできれば楽なお仕事でお金を稼げればなあって思う。
そんなわけで、今回のアルバイトはやりたいときにやっていいと前世ではあり得ないほど好条件だ。
所詮5歳児ができることなんてたかが知れてるからこんなもんだと思われてるかも知れないけど、だからこそ、リスクが全くと言っていいほど無い今がチャンスだと思う。
魔法というロマンが叶っただけでなく楽にお金を稼げることを考えたら、1年間も魔法の訓練をしたかいがあったというものだ。
とりあえず、週に2日営業(?)して、1日3~4人来てくれれば2週間ほどで王都の案内料とおこづかいくらいなら稼げるかな?
キャラの名前は何となく浮かんだ名前以外は分かりやすさ重視です。
次回更新は12/2(土) 22:00の予定です。




