第44話 アルバイトの面接
ギルマスの登場です。
翌日、いつも通りにお母さんは私をつれてギルドに出勤した。
私はミーティング室で受付嬢のサラさんと資料室の司書ミィさんと話してる間、お母さんはギルマスの予定を確認してくるとのことだ。
その後、朝のミーティングではギルマスに用があるので少しの間受付を空けると報告する。
急にも関わらず他の受付嬢や職員からも問題ないと後押ししてくれた。
コンコンコン
お母さんはギルマスの部屋の扉をノックする。
ミーティング前に予定を確認してくると言ってたけど、まさかの朝一だ。
こんな急で大丈夫なのかと心配になるが、ギルドのトップであるギルマスが大丈夫ならいっか。
さて、いよいよこれからギルマスとの面接だ。
「どうぞ」
「「失礼します」」
私はお母さんに続いて部屋に入っていく。
「やあ、よく来たね」
「お待ちしておりました」
金髪にエメラルドグリーンの瞳、尖った耳が特徴のイケメンがいる。
この人がギルドマスターだ。みんなはギルマスと呼んでいる。
ギルマスは見た目通りエルフであり、エルフの例に漏れず、ものすごい美形。ハリウッドスターも真っ青だ。
私は何年もギルドに連れてこられているので、当然ギルマスとは顔見知りだ。
ギルマスは見た目に反してとても気さくだ。それに結構子供好きだと思う。時々撫でてくれるし話しかけてくれる。
前世で読んだラノベやWeb小説の知識ではエルフは排他的だったり選民思想だったり気障ってパターンもあったけど、ギルマスを始めとして少なくともこの国にいるエルフはそうではないようだ。
うん、差別がなく平和なのは良いことだよね。
王都冒険者ギルドのギルマスでエルフでイケメンで気さくで子供好き。ハイスペックすぎでしょ。
でも不思議なことに独身らしい。
ギルマスの隣には水色の髪に深い青色の瞳、セミロングのストレートヘアできれいなお姉さんがいる。
この人がサブマスターだ。みんなはサブマスと呼んでる。
サブマスは普人族でいかにも仕事ができる秘書みたいな印象だ。メガネがあれば完璧だと思う。
ちなみに水色の髪の毛って前世じゃありえないけど、地毛だからか違和感は全然ない。眉毛の色もちゃんと水色だったりする。コスプレで眉毛だけ黒かったりすることもない。
あ、もちろん私の眉毛は銀色だよ。
「さ、どうぞおかけください」
サブマスは誰に対してもすごい丁寧だ。
お母さんと私は言われた通りにソファーに腰かけた。私の場合は若干飛び乗るようにしないと座れないけど。
「ギルマス、急な話なのにありがとう」
「他に聞いてる人もいないんだし、僕と君との仲なんだからギルマスなんて肩書で他人行儀なこと言わないでくれよ」
「そうね、トロイメライ」
ギルマスの名前を初めて知った。なんかカッコいいな。
それにしても今までギルマスとお母さんはやたら気安いとは思ってたけど、名前で呼ぶとかいったいどんな仲なのやら。私、気になります。
ちなみに私も普段通りに話してほしいと言われてたりする。
「じゃあ早速だけど始めようか。詳しく教えてくれるかな?」
お母さんは私が回復魔法を使えるようになったこと、昨夜私が話した理由でお仕事をしたいことを説明していった。
「なるほど。うん、いいよ。採用。雇用形式はアルバイトでいいかい? 12歳以下は正職員や臨時職員として雇えないしね。アクアくん、問題ないよね」
アクアっていうのはサブマスの名前ね。髪の毛や瞳の色によく合う名前だ。
「ええ、規則上の問題はございません。採用に関してもギルマスがおっしゃるのであれば異論はございません」
「というわけだ、フランシェスカくん。アルバイトは許可するよ。ちなみにアルバイトは毎日する必要は全くないからね。やりたい日はやって、やりたくない日はやらなくていいよ。自由にして構わないからね」
「え? そんな適当でいいの?」
「うん、大丈夫だよ。君たち親娘はいてくれるだけで意味があるからね。それに君はまだまだ小さい。気軽にやりたい日だけやってくれればいいよ。ただ、治すのは擦り傷や切り傷程度の軽い怪我だけにしてくれよ。じゃないと医務室の本職たちのお仕事が無くなってしまうからね」
「うん、分かった!」
「ま、後の細かい話はマリアンナくんとフランくんが相談して決めればいいよ。その後はアクアくんに伝えてね」
「トロイメライ、ありがとう」
「いいのいいの」
なんかありえないほど破格な条件だけどいいんだろうか。
前世が過労死するほど働いてたので思わずビビってしまう。
それに他にそんな自由気ままな職員いないと思うし。
まあしょせん私は5歳児だから子どもの遊びと思って便宜を図ってくれてるんだろう。
何はともあれ予想以上の結果でよかった。
こうして私は冒険者ギルドでバイトを始める許可をもらった。
新キャラが登場したけど出番が多いとは言ってません(
次回更新は11/30(木) 22:00の予定です。




