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ネコミミ娘に転生したので楽しく気ままに生きたい  作者: 星川 咲季
■第3章 二人の友人編(5歳)
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第41話 絶対治すからね!

少し流血シーンがあります。苦手な方はご注意ください。


 初めての回復魔法は無事成功し、私はほっと胸をなでおろした。


 先程の傷は塞がってかさぶたになっている。

 かさぶたって痕になりやすいんだよね。

 まあ指先なら大丈夫だと思うけど。


 って、またナイフを取り出して今度は手のひらを切ってる!


 「さあ、練習だしもう一度よ」


 「ええ、もう大丈夫だよ。見てて痛いよ」


 「こういうのは何度も試さないとダメだし、どこまでできるのか今のうちに知っておかないといけないのよ。それにほら、もう切っちゃったんだから早くやってね」


 「う、うん、分かった」


 せっかくの綺麗な手に痕を残したくない。

 今度はかさぶたじゃなくもっときれいに治るようにしなきゃ。


 となると、さっきみたいに漠然と傷が塞がるようなイメージじゃダメだ。

 前世にあったキズパワーパ〇ドみたいに過程と効果を考慮してキレイに治るイメージだ。

 あれは高かったけど、ホントに痕に残らずキレイに早く治るし、重宝したからよく覚えてる。


 私は魔力と新たなイメージを込めて魔力を放出した。

 魔法は私のイメージ通りに発動した。

 みるみるうちにお母さんの手は綺麗に治った。


 今度も一発でうまくいって口から安堵の息が漏れる。


 「……本当にフランはすごいわね。とってもキレイに治ったわ。どんな風にイメージしたのかしら?」


 まさか前世の記憶を元にイメージしたなんて言えないし、それっぽく言っておこう。


 「お母さんのキレイな手はよく覚えてるよ。だから今度は怪我が治った後は元通りのキレイな手になーれってこともイメージしたの。ちゃんと治って良かった!」


 ちょっとぶりっ子な感じになったけど、キレイな手はよく覚えてるから事実だ。


 「うふふ、さすがフランね。ここまでできるなら次で最後よ。本気を出しなさいね」


 そう言うや否や再びナイフを構えた。


 「も、もういいよ! お母さんが痛いのはイヤだよ!」


 「っ!」


 私は止めようとしてお母さんの腕を掴んだ。

 そのせいで手元が狂ったのか、手のひらをあり得ないほどざっくり切ってしまった。

 大怪我と言っても差し支えないほどの深い傷を見て一気に血の気が引く。


 「ああぁぁーー! ごめんなさい! ごめんなさい!!」


 取り返しのつかないことをしてしまい、自責の念で思わず涙が溢れてくる。


 「落ち着きなさい、フラン。この程度なら冒険者時代に何度もしてるし、自分でも治せるから心配ないわ。せっかくだから治してご覧なさい」


 「でも! でもぉ!!」


 「やりなさい!!」


 パニックになってうろたえている私は初めての大声による叱咤で思わずビクッとする。


 お母さんの手から血がポタポタ滴り落ちる。

 私の涙もポロポロ滴り落ちる。


 お母さんは腰にある鞘にナイフをしまい、真剣な眼差しで私を見つめる。

 手を私の方に差し出しており自分で何とかするつもりは無いようだ。


 ……


 放っておいても事態はよくならない。

 とにかくやるしかない。

 私は涙をぬぐい覚悟を決めた。


 でもこの怪我の深さではさっきのイメージだと治しきれる自信がない。

 仮に治せたとしても傷痕が残ってしまう。

 下手すれば握りにくくなるとか後遺症もあり得る。


 どうしよう、考えろ、考えて、フラン。

 魔法はイメージなら何でもできるはずだ。


 ただの回復魔法がダメなら別の魔法ならあるいは何とかなるかもしれない。

 私は差し出されているお母さんの手をとり魔力を込めていく。


 キズを無かったことに……。


 ダメ。

 魔力が漏出するだけで魔法が発動する手応えが全くない。

 もう一度、今度は魔力量を多めに……!


 ダメ。

 さっき魔法が発動したような感覚は一切なく、まるで空気をつかむような手ごたえのなさだ。


 今度は怪我を負う前に時間を戻す……。


 ダメ。

 これも魔法が発動する手応えが全くない。


 もっともっと魔力量を込めて……!


 ダメ。

 手ごたえとかそれ以前の感覚。魔力が漏出してるとしか感じない。


 何度かチャレンジしたけどこれらの失敗による手ごたえのなさで理解した。


 魔法でも一度起こったことや失ったものは元に戻らない(・・・・・・)

 結果を覆したり(・・・・・・・)時間を戻したり(・・・・・・・)、因果をねじ曲げて無かったこと(・・・・・・)にすることは、例えどれだけ魔力を使っても不可能(・・・)だ。


 ……つまり死んだら……いや、今はそんなことはどうでもいい。

 とにかく、法則を超えるような何かが起きない限り、因果を変えることはできない。



 でも、魔法で起こす現象は相応の対価が必要であるなら、逆に言えば、相応の対価さえ払えば魔法は発動する。



 最初の傷が治る回復魔法は、つきつめて言えば人体の回復速度を速める魔法だ。

 次の魔法は、さらに回復効率まで大幅に上げた魔法だ。

 どちらも相手の治癒力に依存する魔法であり、消費したのは私の魔力だけじゃなく、細胞分裂して治癒するために相手の体力とエネルギーも消費しているはずだ。

 回復魔法は体に負担がかかるってお母さんが前に言ってたのは恐らくこのことを言っていたんだろう。


 じゃあ相手の治癒力を超えた怪我はどうやって治せばいい?


 相手の体力とエネルギーによらず、なおかつ体力とエネルギーを上回って傷を癒す何らかの対価があればいいはずだ。


 じゃあその対価は何で支払えばいい?


 魔法は魔力とイメージで発動する。

 魔力は現象を引き起こすだけの力がある。

 なら魔力を対価にすれば、魔力を注ぎ込み続ける限り相手の治癒力に依存せず、怪我を治して元通りに復元(・・)することができるのでは?


 矛盾はない。

 たぶん、いける。


 放出する魔力が傷を覆い、魔力が血肉に変わり元通りに復元するイメージをする。


 イメージが弱いと必要魔力量が増えるって言ってたことを思い出す。

 注ぎ込む魔力が足りなかったら困るので、私はあらん限りの魔力を作りだして準備する。


 自分で放出しなくても勝手に魔力が体からほとばしり始めた。

 青みを帯びた白銀の光の残滓がダイアモンドダストのように輝き漂い始める。


 「フ、フラン……?」


 お母さんは心配そうな顔をして私を見る。

 今までで最大量の魔力を出す私を心配してるんだろう。


 でも心配してるのは私の方だ。


 「お母さん、きっと綺麗に治すからね!」


 私はあふれる涙をぬぐい、叫び声をあげて一気に魔力を解き放った。


 「むああぁぁぁぁーーーーー!!」


 ――――


 魔法は発動した。

 

 青みを帯びた白銀の光の奔流がお母さんの手に集まり、傷口は光に覆われた。

 流れ込む魔力を対価に傷は癒され元通りに復元していく。


 傷口を覆う光は次第に小さくなっていった。

 傷がすべて消えると、あたりに漂う白銀の光の残滓は霧散した。


 私はお母さんの手を見る。


 成功だ。

 前と変わらずとてもきれい。


 私の頬を暖かい涙が伝っていく。


 「お母さん、治った……よ…………」


 私の意識はそこで途切れた。





マリアンナ(母親)はフランのためなら相当無茶します。

フランはたまったものではありませんね。


それと魔法は一見すると何でもありで万能かと思えますが、魔法と言えども因果律を超えることはできません。

この世界には魔法の法則(魔法則)が存在してます。


次回更新は11/24(金) 22:00の予定です。

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