表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネコミミ娘に転生したので楽しく気ままに生きたい  作者: 星川 咲季
■第2章 魔法習得の訓練編(4歳)
38/256

第37話 魔法操作は思ったよりも難しい

魔力操作は一筋縄ではいきません。


 1週間がたった。今日で魔法を使うための訓練を始めてから1か月目だ。

 今週は冒険者ギルドに行ってる時も椅子に座りながら訓練してた。

 受付嬢のサラさんや資料室の司書ミィさんを始めとして、何人かの冒険者や時々冒険者ギルドに来る妖精がこっちをちらちら見てたような気がしたけど、気にせず私は私のやりたいようにやってた。

 魔力を作ったり操作すると結構疲れるので、お昼寝とかよくしてたけど。

 そんなわけで、がんばった甲斐あって課題は無事クリアだ。


 今日は土曜日なので、いつものように家の庭でお母さんと一緒だ。


 「お母さん、言われたことはできるようになったよ。ちゃんと見ててね」


 「今週はギルドでも訓練してたものね。後ろの方でフランが頑張ってたのは分かってるけど、しっかり見せてもらうわね」


 お母さんは私ができるって分かってるけど、さっそく披露する。

 と言っても、お母さんは直接見るわけじゃなく、魔力感知で私の魔力を感じるわけなんだろうけど。


 「よくできたわ、フラン。すごいわね」


 「んふふー」


 毎回同じパターンで褒められて頑張ってる気がするけど、嬉しいから別にいいのだ。

 決して単純なわけじゃない。


 「手足への移動は大丈夫そうね。耳としっぽにも魔力を移動させることはできるかしら?」


 「ん~、できるかなぁ……。とりあえずやってみるね」


 手足で慣れてたので数十分で何とかできた。


 「ふふ、さすがフランね。初めての挑戦でできるようになるなんて。じゃあ次は魔力を右手、左手、右足、左足、体中に広げる、耳、しっぽ、体中に広げる、これを1セット目。左右を入れ替えたのを2セット目。ここまではいいわね?」


 「う、うん。大変そうかも……。次はこれをやるんだよね?」


 「そうよ、しかも1セット目と2セット目を交互に歩きながら同じように魔力操作をするのよ」


 「ぅえ? うそ?」


 「もちろんホントよ。最終的には走りながらできるようにするのよ」


 「それって魔法使うのにいるの?」


 「この課題ができたら頑張ったご褒美にジャイアントバイソンのお肉たっぷりトマトソースパスタよ」


 「超がんばるね!」


 ジャイアントバイソンのお肉は誕生日に食べたけどすごい美味しい牛肉だ。

 食欲に負けたわけじゃないのだ。決して私は単純なわけじゃない。多分。



 歩きながらの魔力操作は超難しい。


 魔力を手足やネコミミしっぽの目的の部位まで移動させるには10秒くらいかかる。それを集中しながらだから動いていられない。

 例えるなら気合を入れたお化粧をしながら歩き回ったりとかそういうレベルだと思う。まあ中にはできるっていう人はいるかもしれないけど。


 文句を言っても始まらないので、まずは魔力を目的の部位まで移動しきったら1歩進むようにした。次に魔力を移動し始める時と移動しきったらで合計2歩、間にもうひとつ入れて合計3歩とゆっくりながら徐々に歩数を増やしていった。


 数日してようやくある程度慣れて前に進めるようになると、今度は別の問題も出てきた。

 家の壁にぶつかったのだ。

 考え事しながら歩いてると電柱とかにぶつかるでしょ?

 ちょうどあんな感じ。

 え?

 ぶつからない?

 どうせ私は不器用ですよだ。


 ちなみに今までは土日しかお母さんに訓練に付き合ってもらってなかったけど、今週からは平日でも帰ってきてから30分くらいは見てもらってる。


 ごんっ!


 「いたっ!」


 そんなわけで壁にぶつかったところをばっちり見られてしまった。


 「あ、今笑ったでしょ!」


 「そんなことないわ。失敗は誰にでもあるものよ」


 「ふーんだ」


 私はちょっと痛い額を撫でつつ、恥ずかしさを誤魔化すためにも庭にあるベンチでふて寝しようとした。


 「自分で決めたことを投げ出すのかしら?」


 振り返ると笑顔で、しかし怒られたときと同じような威圧をかけて言われた。

 ちょっと怖かった。

 魔法があるくらいだし、絶対お母さんは威圧のスキル持ってると思う。

 いつの間にかお母さんがスパルタなんだけど。


 「ちょ、ちょっと痛いから休憩だよ?」


 今のは私の態度が悪かったし、誤魔化しておこう。これ以上怒らせるとヤバそうな気がする。

 ちなみに、お母さんはぶつかったり転んだりして打撲や切り傷程度の怪我では回復魔法をかけてくれない。

 痛みが無いといつまでたっても失敗するかららしい。

 そんなわけで、歩きながらなら魔力操作をするのですら1週間くらいかかった。

 できたたんこぶは数知れず。



 さらに3週間がたった。

 訓練を始めてから2ヶ月。初夏から夏になった。


 ついに走りながら魔力操作ができるようになった。

 1ヶ月前までは目的の部位まで魔力を移動させるのに10秒はかかってたけど今では数秒だ。

 しかもあんまり集中しなくてもできるようになった。

 走りながら口笛を吹くような感じかな?

 実際やってできるかと言われると分かんないけど、まあそれくらいの感覚と思っていいと思う。

 手足の動きと魔力を集めた位置がバラバラでもなんとかなってる。

 そうそう、走りながらって言っても全力疾走じゃなくてランニングくらいだよ?


 獣人だからか1時間くらいなら余裕で走っていられる体力はある。体を動かすのも好きになった。

 もし前世のマラソン大会があったら、前世の私より今の方が絶対早くゴールすると思う。

 前世の私は今の4歳児に負けるのかと思うとちょっと切なくなるけど。

 とにかく獣人すごい。お母さんと同じ種族で良かった。



 「フラン、おめでとう。よくできるようになったわね。約束通り、ジャイアントバイソンのお肉いっぱいのトマトソースパスタを作るわね」


 「やったー!」


 そう、私はそれを食べたいがために頑張っていたのだ。

 うまくいかず、やる気が無くなるたびに「ジャイアントバイソンのお肉はどれくらい用意しようかしら」とか「とろとろに煮込んだら美味しそうねえ」囁かれたらやるしかないじゃん。


 翌日の夜は誕生日と同じように豪華な夕食となった。

 お父さん、食べ過ぎでお腹丸くなって動けなくなった私のことを笑ってるけど、お父さんも同じだからね?





マリアンナ(母親)の訓練メニューは実はかなりハードだったりします。

魔力操作で手足やネコミミしっぽに移動させたりするのは、体のどこからでも魔法を発動させることができるようにするための訓練です。

動きながら魔力操作するのは、動きながらでも魔法が使えるようにするための訓練です。

どっちも普通の魔術師や魔法使いには高難度であり、将来を見越した訓練だったりします。


次回更新は11/16(木) 22:00の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつも応援ありがとうございます。
面白い、面白そう、今後が楽しみなどございましたら評価やブクマいただけると幸いです。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ