第31話 魔法を使うのに必要なスキル
猫獣人が魔法を使えてもいいと思うんです。
お母さん曰く、私たちはケットシーというレア種族のようだ。
「ケットシーは獣人族だけじゃなくってね、妖精族でもあるのよ」
「あれ? それじゃあ私たちは獣人族と妖精族のハーフなの?」
「ハーフとは違うわね。それぞれの特徴を持った種族なのよ。妖精族はね、体の中に人間には無い魔臓っていう臓器を持ってるのよ。逆に言えば、魔臓を持っていれば妖精族のくくりにもなるわ。その魔臓を持った猫の獣人族がケットシーなのよ」
なんだかよくわかんないけど、私の体の中には魔臓なる臓器があって、妖精でもあるようだ。
「他にも似たような獣人族っているの?」
「いるわよ。妖狐っていう狐の獣人族も魔臓を持っているわね。だから妖狐も獣人族と同時に妖精族でもあるのよ」
「へ~」
確かに妖狐なら狐火とか操ってそうなイメージがある。
分かる気がする。
でも妖精族というよりも、どちらかと言うと妖怪だよね。
猫又とか妖怪もいるのかな?
まあ今はいっか。
「話を戻すわね。その魔臓は体の中で魔素を作るの。魔素っていうのは魔法の素になるって言われてるものよ。人間には魔臓が無いから大気中から体に取り込まないといけないの。魔臓を持たない普通の獣人族は大気中から取り込める量が普人族よりも少ないから魔法はほとんど使えないのよ」
「えーっと、私たちケットシーは、その魔臓って言うのを持ってるから獣人でも魔法が使えるんだね」
「そうよ。魔臓は大気中から取り込むよりたくさん魔素を作ったり蓄えたりしてくれるのよ。それに魔臓を持ってると自然と魔法適性がとても高くなるわ。時々ギルドに来るあの小さな妖精がいっつも空を飛ぶ魔法が使えるくらいにね」
あの小さな妖精ってどう見ても羽ばたいているように見えないのに飛んでたのは魔法で飛んでたのね。
ずっと不思議に思ってたことの一つが解消された。
「そんなわけで、獣人が魔法を使えるとなると、獣人としてとびぬけた魔法の才能があるって思われるのよ」
「そうだったんだ。種族について秘密ってことは、ケットシーだってばれないようにするには魔法はあんまり使わない方がいいの? そもそも、魔法が得意な獣人っていうことじゃダメなの?」
「う~ん、簡単な魔法ならいいけど、強力な魔法はなるべく使わない方がいいわね。それにケットシーは金運が上がるなんて訳の分からない話が昔からあるから、ケットシーだとばれたら悪い人に次々狙われて危険なのよ。だから私たちがケットシーっていうことは絶対に秘密よ」
「そ、そうなんだ。分かった。怖いのは嫌だもん。絶対に秘密にする」
「いい子ね。大人になったら魔法は自然と使えるようになるけど、フランはまだまだ子どもだから使いこなすには訓練が必要よ。でも訓練は体の負担にならないよう、じっくりゆっくりと時間をかけて訓練していきましょう。それが終わったら約束通り魔法を教えてあげるわね」
え、訓練が必要とか聞いてないんだけど。しかも時間がかかるとか。
でも、魔法にはとっても興味がある。
私は魔法を使うべく、お母さんから訓練を受けることにした。
勉強は暇だからって理由が大きかったけど魔法は違う。
日本人ならほとんどの人が魔法大好きだと思う。私も例に漏れない。
銀髪ネコミミ魔法少女とかマンガみたいでいいよね!
……
…………
中身が大人なのにそんなこと思ってて恥ずかしくないの?
とかツッコミはあるだろうけど、小さい頃に一度は憧れたでしょ?
魔法少女に。
うん、確かに言ってて確かにちょっと恥ずかしい。
外見が前世の私だったら恥ずかしさと痛々しさで言ったら悶死する自信がある。
だがしかし!
今はれっきとした銀髪ネコミミ少女だし事実だから許される!
んふふふふーん。
いや、少女どころかようやく幼児から幼女になったかどうかってところくらいだから銀髪ネコミミ魔法幼女か。
語呂的になんか子どもがお遊戯してる感が……。
き、気にしない気にしない。
まあそれはさておき、楽しく気ままに生きることを人生の目的としてる私にとって、前世に無かった魔法が使えたら絶対楽しくなるはず。
積極的に取り組みたい。
「お母さん、早く魔法の訓練やりたいな」
「え? 今から?」
「今から~」
「さっき大変な目に遭ったのに切り替え早いわね……。じゃあ今日は少しだけよ? 治ったと言っても回復魔法は体に負担がかかるんだし、ちゃんとした訓練は明日からよ?」
「分かった!」
「じゃあまずは大切な説明からよ。魔法を使うには基礎として魔力感知と魔力操作のスキルが必要なの。この二つがあって初めて安定して使えるようになるわ」
スキルってまるでゲームみたいな表現だ。
まあファンタジーな世界だからあんまり違和感無いけど。
「魔力感知に魔力操作だね」
「そう。この二つのスキルが未熟だと、最悪、魔法が暴走するわ。暴走したらどうなると思う?」
「えっと、怪我するの?」
「そうよ。怪我じゃすまない時もあるわ。自分が怪我するならともかく、関係ない相手や仲間を殺してしまうかもしれないのよ。私はフランにそんなことになってほしくないの。だから魔力感知と魔力操作のスキルが私の認めるレベルになるまで魔法は禁止だし教えないわ」
「ちょっとでも?」
「ちょっとでも。約束を破ったら当分は教えない。いいわね?」
「はぁーい」
約束破ったらいつになるか分かんないし待ってられない。
勘の鋭いお母さんのことだから、一人でお留守番のとき試しにやってみたらできちゃった、なんてことでも多分バレる。
それに万が一事故があったら大変だ。
基礎技術は一番大事なところだし、どうせ暇だし、地道に頑張ってやろうじゃないの。
しばらく努力回が続きます。
次回更新は11/5(日) 22:00の予定です。




