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ネコミミ娘に転生したので楽しく気ままに生きたい  作者: 星川 咲季
■第1章 異世界の日常編(3歳)
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第2話 どうやら転生したらしい

 沈んでいた意識がゆっくり浮上し、私はパチリと目を覚ます。


 ん~~、と以前と比べると高く幼い声がでる。

 伸びをしつつ布団をずらし起き上がる。

 ベッドの端まで4つ足で進み、ゆっくりと片足を順に下ろしてベッドから出た。


 手のひらを眺めつつ握ったり開いたりする。ぐーぱーぐーぱー。

 以前のような長さは無い。大人だった手足の大きさとは違う。

 この小さくぷにぷにな手や短い足もようやく自分の手足だと実感してきた。


 私は最近になって急に前世の記憶を認識できるようになった。


 生まれてから今までぼんやりとした意識はあったけど、記憶は小さい頃ほど朧気だ。

 小さい頃の記憶はあってもなんとなく嬉しいだとか不快だとかの感情ばかりだから、ほとんど本能のままに生きてきたんだと思う。


 なぜ前世の記憶を認識できるようになったのかはよく分からない。

 未発達の脳には「前世の記憶」の情報量が膨大過ぎて受け止めきれなかったのだろうか。

 赤ちゃんの脳は常に新しい刺激に対する情報を処理してるとかテレビでやってたし、無意識に成長することだけに情報を絞り、パンクしないようにしてたのかもしれない。

 あるいは、物心がつくまで成長したからなのかもしれない。


 まぁ最初から前世の記憶を認識し自我があったとしても、まともに身動きが取れないうえに、下のお世話をされるとかたまったもんじゃないと思う。

 健全な大人の精神を持つ私に下のお世話をされて喜ぶ趣味は無い。

 自我が戻ったのが最近で本当に良かったかもしれない。


 ある日の朝、目を覚まして自我が戻った時の思い出はひどい。

 この時は前世の記憶が強く前面に出てたせいか、生まれてからの記憶や意識はほとんど無かった。

 会社に遅刻するかと思って大慌てで起き上がったら周りが巨大なものだらけだわ、見覚えのない部屋にいるわで、誘拐されたのかと思ったり、ベッドから転げ落ちたことで手足が縮んだことに気づき、マンガに出てくる名探偵みたいに小さくなる毒薬を飲まされたのかとか訳の分かんないことを思ったりして、ありえないくらいに大パニックになった。

 とてもじゃないけど落ち着いて「知らない天井だ」とか言うセリフは出なかった。


 しかもパニックとなったことで大泣きするとは思わなかった。

 まだまだ成長途中のこの体じゃ感情を抑制するのは難しいのかもしれない。

 精神が肉体に引っ張られたと思いたい。


 後でお母さんから聞かされたんだけど、普段の私はおとなしく静かな子なのに、この時の私は珍しくぎゃん泣きするし、わけのわからないことを言うし、今にも飛び出しそうに暴れるし、もうどうしていいか分からずほとほと困ったそうだ。


 結局力尽きてその日は一日中眠ってたらしい。

 パニックになった後のことは全く覚えてない。でも大人の精神を持った私がぎゃん泣きとか黒歴史候補確定だから覚えてなくていいと思う。っていうか、覚えてなくて本当に良かった。




 とにかく、今の状況を整理すると、私はどうやら前世の記憶を持って転生したとしか思えない。


 前世の両親や親友に会えないのはとてもつらい。


 ……あ、思い出したら涙が出てきた。切ない。


 たぶんみんなすごく悲しんでくれると思うけど、もうこうなってしまっては仕方ない。

 先に旅立った不幸を許してください。孫を見せてあげられなくてごめんなさい。一緒に楽しく遊べなくなってごめんなさい。

 私はいい縁に恵まれたと思います。とても感謝しています。




 …………



 ふぅ、ようやく気持ちに一区切りついた。と思う。


 第二の人生もいい縁に恵まれるといいな。


 でも、もう前世のように何の楽しみもなく機械のように働き、家に帰ったら寝るだけの生活は嫌だ。

 そんなことすれば今度こそ体だけじゃなく心も絶対に死ぬ。


 状況からするとたぶんあの頭痛が原因かな。

 きっとどこかプッツンしちゃったんだろうね。

 これは過労死っぽいよね。

 あはは、自分のことなのにすごい他人事だ。ちょっとやけになっちゃうね、もう。




 第二の人生で私に与えられた名はフランシェスカ。

 今は3歳の女の子だ。

 第二の人生では大人になっても猫のように楽しく気ままに生きたい。

 それにせっかくの異世界だもんね。

 まだ見ぬ世界へ旅行することを目標にしよう。


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