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ネコミミ娘に転生したので楽しく気ままに生きたい  作者: 星川 咲季
■第1章 異世界の日常編(3歳)
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第26話 エプロンドレス

いよいよエプロンドレスをゲットです。


 ワンピースを着終えた私は使った分の水を甕に給水するため井戸と水浴び場を往復する。

 給水が終わったので勝手口からリビングに戻るとお母さんが帰っていた。


 「あらフラン、ただいま。水浴びしてたのね」


 「おかえり、お母さん。お掃除してたら汚れちゃってね」


 勝手口がある台所からリビングはすぐなので高性能なネコミミなら誰がいるのか十分聞こえる。

 お互い居るって分かっていても、声を掛け合うのはお約束だ。コミュニケーション大事。


 「お母さん、エプロンはお昼ごはんが終わった後だよね?」


 「そうよ。うふふ、楽しみで仕方ないのかしら?」


 「うん! もうすっごく楽しみ!」



 お昼ごはんが済んだ。

 リビングのテーブルはきれいに片付け終わった。

 いよいよお古のフリルたっぷりのエプロンを仕立て直しする時間が来た。


 「フランはもうおしゃれに気を使うのね」


 「そうだよ、冒険者のお姉ちゃんが可愛いエプロン付けてたんだもん。私だって付けたい!」


 本来の目的はワンピースにあるしっぽ用の切れ込みから下着のチラ見防止だが、体裁は可愛いエプロンが欲しい、ということでねだっている。

 3歳児ならたぶん不自然じゃない、と思う。


 お母さんはお古のエプロンと裁縫セットを持ってきた。

 この世界の針を初めて見た。

 若干太い感じはするが、思ったほど前世の物と違いはなかった。


 そのまま使いまわすには大きすぎるので、どんな風に加工していくのかなと期待を胸にじーっと様子を見る。

 気づくと自分のしっぽがゆらゆら揺れてた。

 お母さんはお古のエプロンの糸を切り縫い目をほどいて分解したり、大胆にもどんどん裁断して、あっという間にバラバラになった。


 「お母さんバラバラになっちゃったけど大丈夫?」


 「もちろん大丈夫よ。冒険者時代に旅をしててね、街まで遠いときは自分で何とかしなきゃいけないから、よく直していたわ。一から作るのは無理でも、補修とか組み合わせたりとかなら案外何とかなるものよ」


 その後、針に糸を通すと迷いなくチクチク縫い始めた。

 マジで何とかできちゃうんだ。前世の私より若く見えるのに女子力が違い過ぎる。

 ほんとにこのお母さんは何をやらせてもできるんですけど。

 ここまで全く勝てる気がしないと嫉妬すら覚えず、尊敬しかない。


 あんなバラバラだったものが私サイズのエプロンに変わっていく様子が魔法を見てるようだ。

 しかも単なるエプロンじゃなく、エプロンドレスのような形になってきてる。バラバラにした布をこういう感じに使うのかと驚きしかない。

 もちろん事前にしっぽ側を二重構造にしてほしいことは伝えてある。それを含めて小さくリサイズして過不足無く仕立て直すとか神がかってる。


 こうして小一時間ほどたったころ、ついにエプロン、いやエプロンドレスが完成した。


 「ふぅ、完成よ」


 こんな可愛いエプロンドレスはマンガやゲームでしか見たことが無いのに、それが目の前にある。

 感動だ。

 この感動を言葉でどう伝えたらいいのか分かんない。

 気づいたら抱きついていた。


 「やったー! すごーい! とっても可愛い!」


 「気に入ってくれて良かった。頑張ったかいがあったわ」


 「お母さん、ありがとう! 大好き!」


 その日はドレッサーの鏡だけを使わせてもらい、(厳密にはわずかに隙間はあるが)下着がほとんど見えないことを確認したあと、ファッションショーをして過ごした。


 鏡の中の銀髪ネコミミ娘がワンピースの上にエプロンドレスをしてくるくる回ってる。

 ネコミミをぴこぴこ、しっぽをふりふりしてとても可愛い。

 鏡に映るその姿が自分だと思うと笑顔が止まらなかった。



 エプロンドレスができた翌日の日曜も、結局私はドレッサーに張り付いていた。


 特別にネコミミイヤリングを含むいつくかのアクセサリーを借りてファッションショーを楽しみまくってた。

 アクセサリーのサイズが合わなくても問題ない。

 気分が大事なのだ。

 自室にしまってある何着かのワンピースもひっかえとっかえして試してみる。


 お父さんに感想を何度も聞きに行った。

 最初は喜んでくれたけど、最後の方は若干おざなりだった。


 前世じゃこんなに長いこと着飾るのを楽しんだことはなかったと思う。相方がいたら違ったのかもしれないけど。

 でも、自分で言うのもなんだけど、鏡の中に写る銀髪のネコミミ娘が可愛いんだもん。

 仕方ないよね。


 お母さんには食事中くらい落ち着きなさいとか何度か注意された。


 夕食後もドレッサーに行って楽しんでたら笑顔のお母さんが現れた。


 「フラン、私が言ったこと聞いていたかしら?」


 「えっと……なんだっけ?」


 「もう寝る準備をしなさいね?」


 気づくとアクセサリー類がお母さんの手元にあった。

 どうやら強制没収されたらしい。


 「フラン、嬉しいのは分かるけど、人の話はちゃんと聞かないとダメよ?」


 「!? はい! ちゃんと聞くね! やることやるね!」


 笑顔だけどいつぞやに近い凄みと言うか威圧が!

 超怖い。

 ドレッサーのところで怒られたからかトラウマがよみがえりそうになったので、二つ返事ですべきことをしてお布団に向かった。

 お父さん、私を見て笑いをこらえてたのは忘れないぞ。





実はフリフリで可愛いエプロンドレスはマリアンナ(母親)の趣味です。


次回更新は10/28(土) 22:00の予定です。

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