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ネコミミ娘に転生したので楽しく気ままに生きたい  作者: 星川 咲季
■第1章 異世界の日常編(3歳)
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第24話 獣人のエプロンと文字のお勉強

男性獣人のズボンってどうなってるのでしょうか?


10/23 ズボンの記載を一部修正。


 翌日、私はサラさんにせがまれて(?)、いつもの受付の奥のテーブルに来た。


 昨日はミィさんに文字表や図鑑をこっちに持ってきていいか尋ねたが、資料室から持ち出したり貸し出しはダメだった。

 ちょっと駄々をこねたら少し怯んだけど、例え職員の子でも1回許可してしまうと、他の職員だけでなく冒険者まで貸し出ししたいと収拾がつかなくなるからと断られた。

 いつもの眠たそうな目付きが申し訳なさそうにしゅんとなって言われたら、それ以上は何も言えない。ミィさんにはお世話になってるからあまり困らせたくない。



 さて、今日は何をして暇を潰そうかなとしばらく眺めることにする。

 そうそう、休憩時間によくサラさんが来るけどお母さんがあんまり来ないのは理由がある。男性冒険者がお母さんの受付に並ぶ率が異常に高いからだ。だから自然と休憩時間が少なくなってしまう。場合によっては無くなる。

 可愛いし美人だし綺麗だし胸が大きいし、お近づきになりたくなるのは分かる。けど、口説くやつには左手の薬指の指輪を見て人妻だと分かってるんだよねと小一時間問い詰めたい。あんまりお母さんに負担をかけないでほしい。



 のんびりボーッと眺めていると、ふと犬獣人の女性冒険者が目についた。

 目がくりくりして少し幼い感じの少女だが、武具を身に付けている様子から12歳なのだろう。

 そんな冒険者がなぜかエプロンっぽいもの――もうエプロンでいいや――を身につけていた。

 布の服の上に革製の軽装とキュロットスカート、ここにエプロンをつけており不思議と見た目はマッチしている。


 私が気になったのは、服の前だけでなく後ろ側にもエプロンをしていることだ。

 なんで冒険者がエプロンをつけてるのか不思議に思いよくよく観察すると、後ろ側はしっぽの付け根までを覆い被せるものと、しっぽの下にももう一枚のエプロンが見えた。

 これは気になる。

 何か既視感があって、もう少しで何かに気づきそうな、喉まででかかってる感じで気になる。

 ちょっと失礼かもしれないけど、とにかくじーっと観察を続ける。受付のカウンター越しだからか、幸い相手は視線に気づいていない。


 しばらくクエストボードを眺めてる彼女を観察してると、いいものが見つかったのか、彼女はしっぽをブンブン振り始めた。

 あ~あ、あんなにしっぽを振ったら下着が見えちゃうよ、と心配してるところで私の脳裏にズドンと雷が落ちたような衝撃が走った。


 全然見えない。


 大事なことなので言い方を変えてもう一度言おう。


 ミエテナーイ。


 そうか、ああすればいいのか。しっかり隠せてる。この人は天才か。

 お母さんのワンピースみたいに下着が見えないよう、服自体が二重構造になっていない場合は、エプロンで代用できるのか。

 冒険者用の装備となると市販の服に比べて高額なはずだ。

 防具は壊れたり破れたりするのは当たり前なのだから、外付けできれば都合がいい。エプロンなら汚れてもあまり気にしないで済むし、簡単に着脱できるし、安価だし使いまわせる。

 エプロン大勝利!

 これは欲しい。

 今すぐ欲しい。

 服が二重構造になるまでは必須だろう。

 今日はこっちに来て大正解だった。

 帰ったらさっそくおねだりしよう。


 その後、他の獣人も気になり観察を続けた。

 冒険者だけじゃなく依頼人の獣人も同じようにエプロンを着けていた。

 あの犬獣人のお姉さんは天才かと思ったけど、似たようなことをしている人が意外といることに気づいた。今まで観察してたのに全然気付けなかったのがちょっと悔しい。

 それと、大人の女性はもともと二重構造になってる服が大半なのか、エプロンで覆っているのは若いほど多そうだ。

 この国で見かける女性獣人の平均身長は普人族と変わらないが、前世の日本人と比べれば高いように感じるし、そうなると成長期であれば1年で服が着れなくなるなんてざらにありそう。

 だから若い世代の服は二重構造にせず単純な構造のままで単価を抑え、エプロンで代用なんて選択肢が出てきたっておかしくない。


 ちなみに、男性獣人の場合はズボンをはいている。

 そのズボンの後ろ側にはしっぽ穴用の縦の切れ込みがあり、切れ込みの上側であるベルト周りでボタン留めしている。

 ドロワーズと比べて切れ込みはUの文字のように大きめになっており、よくよく見ると隙間から地肌が見える。

 中にはもう開き直ってるのかしっぽ穴用の切れ込みが大きく素でしっぽの付け根部分まで地肌が見えてしまうレベルの人もいる。

 魔物討伐したり護衛したりする冒険者であればマントを羽織ることはよくあるのでチラ見を回避できるが、マントがない場合、パレオとかそういった類いで覆っている人は私が見た限りでは誰一人いなかった。

 豪快すぎる。

 男性たちはこれでいいのか。


 サラさんが休憩時間となり私のところに来た。いつものように撫でられる。

 早速なので話題を振ってみた。


 「サラさん、私思ったんだけど、男性の獣人はズボンにしっぽ穴があるよね。しっぽ穴のすき間から見えちゃうのって恥ずかしくないのかな?」


 「さあ、どうなのかしらね。それにしても、フランちゃんもそういったことが気になるお年頃になったのね。でも、彼らがあれを恥ずかしがってもらっちゃ困るわ」


 「え? な、なんで?」


 「私の目の保よ……こほん、フランちゃんが大人になれば自然と分かるようになるわ。ふふふ……」


 ちょっと待って、いろいろツッコミどころがある。

 受付が終わった獣人男性の背中をよく見てると思ったらそこを見てたの?

 幼児になに言ってるの?

 この人本当に貴族なの?

 ついちらっと見ちゃうっていう気持ちは分かるけど、サラさん自重しないの?

 闇の一端が垣間見えた気がしたんだけど。


 そんな感じで今日はサラさんと会話したり、終始エプロンのような覆うものについて観察していた。


 帰ったらもちろん(くだん)のエプロンが欲しいとおねだりした。

 お母さん用のはそのままでは大きすぎるので、使い古したものを私用に仕立ててくれると約束してくれた。

 超嬉しい。

 お母さんのエプロンはフリルのついた可愛いエプロンなのでどんなのになるのかとても楽しみだ。




 翌日、私は資料室に来た。

 朝のミーティングが終わったあと、お母さんに連れて行ってもらう前にサラさんに駄々をこねられたけど、約束は昨日だけだったので遠慮なく資料室に行った。

 サラさん、3歳児相手に駄々をこねるなし……。


 ミィさんは今日も紫のぱっつん前髪でサイドをヘアピン留め、後ろ髪を左右に分けてお下げの先をリボンで結んでる。紫の目を半分閉じて眠そうな表情もいつも通りだ。この人のこの安定感がなぜか安心する。

 小学生高学年くらいの身長なので前世の感覚もあってかついつい撫でたくなる。

 私の方が背が低いから逆に撫でられる立場だけど。


 3日目となると、お願いする前にミィさんは図鑑と文字表を持ってきてくれた。

 私は笑顔でお礼を言う。


 「ミィさん、ありがとう」


 「……ん……」


 眠そうな表情に変わりはないが、お礼を言われてちょっと照れたのか頬が赤くなってる。

 可愛い人だ。

 ミィさんは資料室のカウンターに戻るかと思ったら、幅広な木製のお皿とまっすぐな棒、それとヘラを持ってきた。お皿にはきめ細かな砂が半分ほどの深さまで入っている。


 「ミィさん、これなあに?」


 「……練習用の筆記用具……」


 今度は文字の書き取りらしい。

 なるほど、いくら紙があるといっても気軽に使い捨てできる程安くはないだろうし、これならいくらでも練習ができる。

 しかし、相変わらずミィさんは3歳児に要求するレベルがおかしい。

 中身が大人な私だからいいものの、普通の幼児じゃ絶対無理だと思う。


 とりあえずこの棒ってペン代わりに使うんだよね?

 ヘラは砂をならすために使うんだよね?

 念のため、ここは使い方を確認しておこう。


 「ミィさん、その棒で書くの?」


 「……そうだった。教える……」


 おい、ミィさん、今の反応、絶対に私のこと幼児ってこと忘れてただろ。

 これがなんなのか知ってる前提で用意してただろ。

 でもミィさんから教えてくれようとする心遣いが嬉しい。

 そ知らぬふりしてこのまま教わった。


 3日目ともなればいくつか間違えたけど、文字と読みはもう大体OKだ。

 なのでこの後は文字表を音読するのと同時に文字の書き取りもする。

 同じ文字を連続して書くと絶対にゲシュタルト崩壊しそうになる。

 しかも飽きる。

 これは前世で英語の単語の書き取りをしてたときに経験済みだ。

 なので3回ほど書いたら次の文字に進む。


 ……


 飽きた。


 やっぱり文字の書き取りが増えても飽きるものは飽きる。

 ちょうど何周か分かんないけど、切りのいいところで2の鐘(9時頃)が鳴った。

 1~2時間は頑張れたかな?

 うん、私えらい。


 私は休憩後、3の鐘(12時頃)までは図鑑の絵を見たり、居眠りしてすごした。

 う~ん、自分の好きなようにして過ごせるっていい。

 まさしく猫のようだ。

 私の人生の目標である楽しく気ままに過ごす計画は順調だ。


 今日もお昼ごはんはミィさんも一緒だ。

 お母さん、ミィさん、私の3人がギルドの裏庭に行くと、サラさんが用意していたのか既にお昼ごはんは4人分が並べられていた。

 サラさんはニヨニヨしながらミィさんを見ていた。

 一方、ミィさんはちらっとサラさんを見たが華麗にスルーしている。


 美味しくお昼ごはんを終えた後、午後も午前と似たようにして過ごした。


 4の鐘(15時頃)が鳴り、お母さんが迎えに来るまでの時間で帰り支度をしていると、ミィさんに声をかけられた。


 「……そのお皿と棒なら持ち出していい……」


 「そうなの? ありがとう。受付の方に行くときは借りに来るね」


 「……問題ない……」


 ミィさんは私のことを勤勉だと思って貸してくれるのかもしれないけど、私はいつもの受付の奥のテーブルで勉強するつもりはあんまり無い。

 だいたい文字表持ち出せないし。

 つまり、お絵描きとかそういったことに使う気満々だ。

 ちょっとお互いの認識に齟齬がある気もするけど、宿題を出されたわけでもないし、好きに使っちゃおう。





やっぱり改めて異世界で獣人の生活を考えると衣服事情は切実だと思います。主に隙間的な意味で。


次回更新は10/24(火) 22:00の予定です。

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